きみの靴の中の砂

白石うーめん





 蔵王連峰は主峰に熊野岳を頂き、山形県と宮城県にまたがって君臨する大山地である。主に山形県側の観光開発が進んでいて、特にスキーをやる人達にとっては、蔵王といえば山形蔵王を指すようだ。その反対側の宮城蔵王は、東北本線白石駅が玄関口 ------ 新幹線なら白石市郊外の白石蔵王駅となる。

 白石は小さいながらも古い城下町で、名産がある。

 温麺 ------ これは『うーめん』と発音する。
 分かり易く言えば、素麺よりも幾分太い、冷や麦の乾麺を半分に折ったものと考えてもらって差し支えない。細くて短い饂飩と説明するよりは実物を的確に頭に描けるだろう。

 さて、温麺の来歴だが、もはや地元では有名な語り草で、昔、城下に胃の悪い父親を持つ孝行息子がいて、父の胃の容態を案じていた彼は、旅の僧侶 ------ 今となっては謎の僧侶だが ------ から、消化に良いよう、素麺のように油は使わず、出来るだけ細くて短く、消化の良い饂飩を作って父に食べさせてみてはどうかとアドバイスをもらったのが始まりといわれている。

 ところで、その謎の僧侶だが、話向きからすると隣国中国から日本に饂飩を伝えたといわれている空海・弘法大師のホームグランド讃岐から旅して来た人かもしれない。日本全国どこにでもある弘法大師伝説のように、その僧侶を御大師様本人に仕立て上げなかったところに信憑性がある。
 また、この親孝行話を伝え聞いた白石のお殿様が、東北人ならではの温かい心遣いから発したこの麺を自ら『温麺』と名付けたとか...。

 『白石うーめん』は人の心の温かさをも表している麺だから、そのイメージどおり何も温かくして食べなくてはいけないということはない。夏は冷たく、冬は温かくして食べていいのだが、やはり土地柄、雪の降る寒い日に炬燵に入り、手近な具材を入れた出汁でその熱々を食べたい。

                    

 さて、その『うーめん』------ かつてJR東日本のCMでも採り上げられていて、温麺ファンとしては、当時嬉しかった思い出がある。




【JR東日本 大人の休日倶楽部-2集】

 

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