エリック・ホッファー 著、田中淳 訳、みすず書房 1971年刊『波止場日記 ----- 労働と思索 -----(Working and Thinking on the Waterfront)』再読。
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エリック・ホッファー(Eric Hoffer, 1902 - 1983)
『1902年にニューヨークに生まれ、鉱山夫、農業労働者、港湾労働者として大衆とともに社会の基底をわたってきた。15才までほとんど盲目に近く、視力をとりもどしたときは、むさぼるように読書に耽った。1936年、偶然手にしたモンテーニュの『エセー』に魅せられ、自らの思考を文章にしたいと思った。哲学者の名をかちえたのは、大衆運動をウィットと警句で捉えた世界的ベストセラー『トゥルー・ビリーヴァー』The True Believer (1951) によってである。彼は以後もサンフランシスコ湾沖仲仕として労働にはげみ、余暇のすべてを読書と思索にささげた。
本書は、1958年6月から59年5月にかけての日記であり、沖仲仕生活をヴィヴィドに描いている。冷徹なアフォリズムをふんだんに編みこんだ、人間と世界への洞察はおどろくべく新鮮である(本書カバーより)』
【本書からの抜き書き】
『そして、熱い紅茶を飲み、フルーツを少し食べ、特に筆が2、3行進めば、多かれ少なかれ、いらいらした気分は消えてしまう。(7月8日 28頁)』
『昨夜の睡眠8時間、温かくておいしい今日の昼食。昨日(日曜日)はレストランが休みだったので、昼食にサンドウィッチ二つとパイを一切れ食べただけだった。(7月14日 31頁)』
『午後七時半。メカニックス図書館に数時間いた。戻ってみると、部屋が楽しそうに見えたので、「ハロー」と四方の壁に声をかけた。これからウィンナーソーセージ入り豆スープをあたためて食べ、熱いお茶を飲み、ヴァン・デル・ポストのカラハリ砂漠とブッシュマンについての本を読むつもりである。(10月24日 66頁)』
『丸一日で半ダースの文章もしゃべらなかったのに、はてしない対話に没頭していたかのような感じがする。私にとっては、人々にかこまれていて、しかも人々の間に埋没していないのが最適の環境である。(10月24日 66頁)』
『世間は私に対して何ら尽くす義務はない、という確信からかすかな喜びを得ている。私が満足するのに必要なものはごくわずかである。一日二回のおいしい食事、タバコ、私の関心を引く本、少々の著述を毎日。これが、私にとっては生活のすべてである。(10月28日 70頁)』
『目下、外は雨降り。クラッカー、ワニナシ、まぐろ、ビール一カンの軽い夕食をとったところ。これから熱いシャワーを浴び、腰をおろしてヴァン・デル・ポストの小説を読む。ここ数年で、初めて手にする小説である。(11月13日 88頁)』
『一日二食でやっている。九時から十一時までの間に朝食、六時から七時までの間に夕食。間食はしない。よく眠れ、気分がよく、いつまでもこうやっていけそうな気がする。・・・この論文(注 : 「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」に送る人間の兄弟愛についての論文)の完成が証明しているのは、しがみついていればものごとを発展させうること・・・これが著作の秘密。しがみついているための時間が必要である。(12月27日 124頁)』
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自分のライフスタイルに影響し、重要な意味を持つことになる本 ----- それが何なのか人生の若いうちに解っていたら、生涯に必要な本はそう多くはならないであろう。例えば五冊とか、六冊とか...。十冊まではいらない。
【The Starbugs - Mr. Tambourine Man】
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