「来年の夏は青磁の平鉢にでも住まわせてあげましょうよ、この子たち...」と、濡れ縁に置いた硝子の金魚鉢から目を離すことなくイチ子さんが言う。 もとより夫婦だけの家だから、総菜を盛る磁器の小鉢はあっても、金魚鉢にするほどの、例えば尺だとか尺五寸の平鉢などあろうはずもない。次の夏が来るまでに、どこからか探してこようというのだろう。 陽射しばかりが強い、静かな夏の午後である。 Stephen Bishop / On And On