その物件は、国道134号線を挟んで海に面した、三階建ての古い石造りのアパートメントだった。
仲介業者によると以前は戦前から歴史を重ねたリゾートホテルだったという。言われてみれば、往時を偲ぶ造作が玄関ホールや廊下を初めとして建物の随所に見られた。
ぼくが兎に角気に入ったのは、部屋でも靴を脱がずに済む、その洋式の造作だった。だから、他の条件や環境に頓着なく、月の家賃を確認しただけで契約を済ませたのも、あながち衝動的なことではなかった。
【Percy Faith Orchestra - Theme From "A Summer Place"】