日本テレビ系列の人気番組「おはよう!こどもショー」のマスコットキャラクターをフィーチャリングした『ニャンニャンニャンダ』(「冒険王」75年1月号~76年10月号)は、ぬいぐるみのように愛くるしくプリティーな猫のニャンダとそのガールフレンドのミミちゃんが、まるでナイトメアをさ迷っているかのような眩暈感を喚起した、ストレンジなメルヘン世界で繰り広げるシュールな日常と冒険に、ちょっぴり毒を忍ばせて描いたシリーズで、カオスとファンシーという不整合な概念が一つに凝縮された、笑撃度の高い隠れた名作の一本だ。
亡くなった愛猫・ニャンダに瓜二つの人形をこしらえたおじいさんは、ニャンダが恋しくなり、この人形がピノキオのように神様から命を授からないかと、星に祈りを捧げようとするものの、生憎空は雨模様だった。
仕方なく、酔狂交じりに、皿の上の梅干しに願いを掛けるが、何とその丑三つ時に、ウミボスこと梅干しの神様が降臨。独りぼっちのおじいさんを可哀想に思ったウミボスは、失敗を重ねながらも、ニャンダを模った人形に生命を宿してあげる。
その後、ウミボスは、ニャンダのガールフレンドにと作られたミミちゃんや、酔っ払ってトーテムポールにまで生命を与えるなど、ユーモアに満ちた種々雑多なフリークス達が入れ代わり立ち代わり登場し、そのシチュエーションは、濃厚なファンタジー色に彩られつつも、何処か不安定で曖昧な、あらゆる夢想が未分化に異種混合された祝祭的空間へと盛り上げられてゆく。
どこまでも伸びやかで自由な、愉快な異世界の住民たるニャンダの意気軒昂なその姿は、華のあるファニーフェイスも含め、頬ずりしたくなるほどチャーミングな魅力に溢れており、オンタイムで接した、特に未就学の児童にしたら、友達になってみたいと思わずにいられない、滑稽さと愛嬌たっぷりの幼児性を浮かび上がらせた特筆すべきキャラクターだったと言えよう。
そもそも、この作品の主人公・ニャンダは、「おはよう!こどもショー」の着ぐるみ人形のデザインのオファーを受けた赤塚によって創作されたキャラクターで、番組内での人気に目を付けた「冒険王」の記者の熱烈なプッシュにより、コミカライズが実現した。(番組内での登場は、1972年から77年までで、ニャンダの声をお笑いタレントの海野かつをが務めた。)
昭和40年代に入り、原作漫画のテレビアニメ化のブレイクや、それに付随する玩具や文房具等、マーチャンダイジングによるメーカー各社とのタイアップの成功などから、キャラクターメーカーとしても、そのスペックを知らしめた赤塚のもとに、様々な企業から、商品のイメージキャラクターのデザインの依頼が舞い込むようになり、このニャンダと同様、幾つかのキャラクターメイクを担当することになる。
『おそ松くん』のアニメ化以来、赤塚アニメの人気キャラクターを宣伝塔とする商品展開を繰り広げていたコビト製菓(旧名・東京渡辺製菓)には、「コビトくん」なる、チビ太とたまねぎたまちゃんのフュージョンキャラを提供し、ニャロメをイメージキャラに擁したヤマハエレクトーンには、面長なポーカーフェイスが印象的なゴリラのオリジナルキャラ(名称不明)をプロデュースした。
ヤマハエレクトーンのアドバーティスメントとなったこのゴリラのキャラクターは、その後、同社のノベルティグッズとして、ソフトビニール人形となり、その愛らしい風貌から、赤塚ファンのみならず、絶版玩具市場においても、マニア垂涎のマストアイテムとなった。
なお、ニャンダもまた、この時、ソフトビニール人形や手踊り人形、タブレット菓子、絵本、レコードなど複数の商品展開があり、現在、これらのグッズにおいても、その稀少性から、ネットオークション等で高値の取り引きがなされている。
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