文化遺産としての赤塚不二夫論 今明かされる赤塚ワールドの全貌

赤塚不二夫を文化遺産として遺すべく、赤塚ワールド全般について論及したブログです。主著「赤塚不二夫大先生を読む」ほか多数。

空前のベストセラーバリアフリー絵本『よ~いどん!』と漫画家生活最後の作品『ニャロメをさがせ!』

2021-12-22 17:06:03 | 第8章

『よ~いどん!』は、視覚障害者と晴眼者が一緒に楽しめ、お互いがコミュニケーションが取り合える漫画を描きたいという一心から、点字コーディネータの協力を仰ぎ、実現化した渾身の一冊だ。

ニャロメ、チビ太、イヤミ、ダヨーン、デカパン、ケムンパス、べし、ウナギイヌといったお馴染みの赤塚キャラ達が、隆起印刷により縁取りされており、指で辿りながら、キャラクターのデザインを理解し、点字による説明で物語を追って楽しむというコンセプトによって作られた。

B5版のプラスチック素材にタッチプリントされた本書は、絵と触図、文字と点字が至るページでミックスされ、描かれているが、途中、晴眼者がハンディキャップを背負った立場にある彼らから点字を教えてもらうことを主眼としたページも挟み込まれており、遊び心の中にも、赤塚らしい配慮が行き届いている点も見逃せない。

この本は、点字本としては異例とも言える一五〇〇〇部を売り上げる空前のヒットセラーを記録したが、赤塚は、定価を少しでもリーズナブルに抑え、提供したいという願いから、印税を辞退する。

そして、その一部は全国の盲学校に寄贈され、良質の教育ツールとして、今尚活用されているというから驚きだ。

『よ~いどん!』が刊行された二年後の2002年、「赤塚不二夫のさわる絵本」第二弾『ニャロメをさがせ!』がリリースされる。

主人公・ニャロメの仲間への思い遣りを綴った人情譚で、意外な展開を迎えながら辿り着くその粋なラストシーンには、ホロリとさせられると同時に、膝を打つこと請け合いだ。


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