文化遺産としての赤塚不二夫論 今明かされる赤塚ワールドの全貌

赤塚不二夫を文化遺産として遺すべく、赤塚ワールド全般について論及したブログです。主著「赤塚不二夫大先生を読む」ほか多数。

『花の菊千代』のセルフパロディー『ネコの大家(おおニャ)さん』

2021-12-22 00:22:25 | 第8章

このように、創作への意欲が減退していった赤塚だったが、新作の連載漫画執筆も複数本始めてはいた。

1993年からは、「デラックスボンボン」にて、『ネコの大家(おおニャ)さん』(93年2月号~94年3月号)の連載がスタート。

大富豪の老女に溺愛され、莫大な遺産を相続した猫のスパゲティは、その金を豪華マンションの建設に注ぎ込み、世界初、猫の大家さんとなる。

大々的に入居者を募集したことにより、入居希望者が殺到するが、いずれも劣らず、他の住民の迷惑を省みない変わり種ばかりで、オープン早々からスパゲティを困惑させる。

おまけに、遺産を取られて逆恨みする老女の息子・ハンバーグに雇われた殺し屋が、スパゲティの命を狙ってきたりと、スパゲティに安息の日はまだまだ訪れない。

マンション内に地下鉄を開通させ、住民をパニックに陥れたかと思えば、Jリーグ人気に便乗し、ネコによるサッカーチームを結成し、ハンバーグ率いるホームレスチームと対戦したりと、エピソードに依りては、スパゲティの意気揚々たる活躍ぶりに、一先ずはアイデアの新奇性を見て取ることも出来るが、作品全体の設定としては、これより遡ること十二年前、「コロコロコミック」に連載した『花の菊千代』にイージーなアレンジを加えただけの印象は否めない。

また、主役であるスパゲティのキャラクターデザインに限っていえば、コンテンポラリーを保ち得た華やかさを纏ってはいるものの、そのドラマトゥルギーにおいては、『花の菊千代』ほどのテンポの良さやシャープな切れ味を感じさせるまでには至らず、副次的価値を超えるバリューはない。

 


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