キャロル・ダウンズは、最初は当然のことだが比較的重要でない地位にいた。
だがやがてデュラントの右腕になるまでその腕を買われ系列の自動車販売会社の社長となった。
ところでこの地位は報酬以上の働きをすることによって得たものである。
彼にどうしてそんなに早く昇進できたのかを尋ねた。
彼はその理由を短い言葉で説明してくれた。
最初デュラント氏の下で働いていたとき、私はあることに気がつきました。
それは、社員全員が退社したあとでも、氏だけが遅くまで残って仕事をしていたことでした。それで私も残って仕事をするようにしたのです。
誰に頼まれたわけでもありませんが、誰かがそこにいてデュラント氏が必要とする手伝いをしなければならないと考えたからです。
というのは、デュラント氏がよく「誰か手紙のファイルをもってきてくれないか」とか、「ちょっと誰か手伝ってくれ」といって、周りを見回している姿を見かけていたからです。いつの間にか私は、その「誰か」の役目を果たしていたわけです。
それでデュラント氏は私を呼ぶ習慣がついてしまったのです。
「私を呼ぶ習慣がついてしまった!」
この言葉を噛みしめていただきたい。この言葉には、深い大きな意味があるからである。
デュラントには、なぜ「ダウンズ」の名を呼ぶ習慣がついてしまったのだろうか。
それは、デュラントが「誰か」を呼ぼうとしたとき、いつもダウンズがいたからである。
しかも、ただいたわけではない。役に立とうという心構えでそこにいたからである。
ダウンズは誰かに命令されて、そこにいたわけではない。また、彼はそうすることによって給料を得ていたわけでもない。
「思考は現実化する」
ウイリアム・クラボ・デュラント(1861年~1947年)
自動車産業創成期にゼネラルモーターズ(GM)を創業した人物
このエピソードで重要なことは、報酬以上の仕事をしない者は、仕事並みの報酬しか得られないということである
これはゆるぎない仕事の法則である。
キャロル・ダウンズは、プラスアルファの魔法を使ったのである。
「私はこの仕事の分の給料はもらっていない。バカバカしい、こんなことをやれるもんか」
こうした事を口にするタイプの人間で成功した人は、一人も見たことはないし、成功することはこれからも皆無だろう。