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【現代思想とジャーナリスト精神】

情報公開と民主主義の成熟度

情報公開と民主主義の成熟度
         櫻井 智志



 個人的に親しくなくても、その人格に信頼を置いているひと。そのひとが日本共産党市議であり、離党し、共産党の側が適切に対応を慎重に検討していると公開している。ふだんならそれで、通りすぎるのだが、ふだんから実直さを感じていたので、8月からずっと胸のわだかまりが消えていなかった。

共産党のかたがたのブログを読んでみたけれども、公開声明をすべてコピーしたような記事だけで、ひとつも満足になるほどと思った記事はなかった。
近代政党の組織原則や政党規約と明快な対応。日本共産党はそこをわきまえてきた政党であり、その組織原則や民主集中制についても現実の事例と実際が異なっていることはあっても、それなりに保留したり納得したりしてきた。

今回はずっと残るわだかまりを、5ちゃんねるまで広げたが、得るものは全く皆無。そんな中、唯一まともな記事に出会った。


以下に転載



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過去現在未来のメモリーノート 38 歴史の謎 ① 神奈川県川崎市会議員と宗教について  


 8月24日、「市政と市民のくらしを結ぶ 日本共産党川崎市会議員団」のホームページに以下のコメントが出されました。そのまま引用します。

「佐野議員の会派離脱について市議団長がコメント
日本共産党川崎市会議員団は23日、佐野仁昭市議(川崎区)が会派から離脱することを議長に届け出ました。市古映美市議団長(中原区)は届け出後、以下のコメントを発表しました。
あわせて勝又光江議員(麻生区)が同副団長となり、議会運営委員会委員をつとめ、市古映美議員が総務委員会委員を、井口真美議員(多摩区)が都市計画審議会委員をつとめることも届け出ました。

佐野市議が、この間、党との話し合いで表明してきたことを一方的に覆し、いきなり離団届を議会局に提出を強行したことに驚きました。党はくり返し話し合いを求めたにもかかわらず、いっさい応じることがなく、定例市議会直前であることからやむを得ず、会派離脱を届け出たものです。
なお、佐野市議は離党表明をしており、現在党で党規約にもとづいて、慎重に適切に対応を検討しているところです。」

 川崎市の現在のホームページで見ると、「佐野仁昭(さのよしあき)。49歳(平成30年5月11日現在)。(川崎区・無所属)当選回数5回」となっています。
 つまり今年49才、共産党市議としては若いといえます。同時に市議としては当選回数5回でベテランです。



 ところが、その後、6日間、日本共産党川崎市議団ホームページにまったく音沙汰がありません。「しんぶん赤旗」にも記事が発見できません。そこで文献を探すと、「朝日新聞 8月25日(土)」が見つかりました。

 「朝日新聞」の記事は以下のとおりです。

 「佐野氏は「感銘を受けた宗教関係者の本を知人に貸したところ、『布教活動をしている』と事実と違うことを言われ、信頼関係が崩れた」と話す。
 同市議団の説明によると、同氏は、党活動で知り合った知人に宗教関係者の本を渡した。
 苦情も寄せられ、不適切な行為として話し合いをしていた…」
 つまり事実関係については佐野氏と市議団とで、大きな違いはなさそうです。
 佐野「宗教関係者の本を知人に貸した」
 市議団「党活動で知り合った知人に宗教関係者の本を渡した。」
 
 市議団は「苦情も寄せられ」「不適切な行為とし」た。
 なにが不適切だったというのか、「感銘を受けた」ことがか、「宗教関係者の本を知人に貸した」ことなのか、「布教活動をした」とされたことがか。
 市議団が「この間、党との話し合いで表明してきたことを一方的に覆し、いきなり離団届を議会局に提出を強行したことに驚きました。党はくり返し話し合いを求めたにもかかわらず、いっさい応じることがなく」と書いたのは、その「話し合い」の前提・内容の公開がされないと。
 いまのところ、よくわかりません。




 8月29日に「宗教人と日本共産党との懇談会」があり、30日の赤旗が報道しました。以下がその記事です。

「2018年8月30日(木)
宗教者は共同のパートナー 日本共産党と懇談会
豊かな連帯の輪広がる
小池・吉良議員が出席
(写真)宗派を超えた宗教人が参加した日本共産党との懇談会=29日、東京都台東区
 全国と東京の「宗教人・日本共産党を支持する会」が29日、「宗教人と日本共産党との懇談会」を東京都内で開き、70人が参加しました。宗教人の日本共産党への熱い思い、小池晃書記局長、吉良よし子参院議員の共同の呼びかけが響き合い、豊かな連帯の輪が広がりました。
 宗派を超えて3人の宗教人が発言。西武柳沢キリスト教会牧師の星出卓也さんは、天皇の代替わり儀式についての日本共産党の政府への申し入れにふれ「日本共産党だけが『政教分離原則を守れ』と主張したことは心強い。信教の自由、平和のための労苦をみなさんと共にしたい」とのべました。
 天理教布教所長の藤原さよ子さんは、信仰を守り、日本共産党員として生きて3月に亡くなった夫の人生をふりかえり、声を詰まらせながら「私も残る人生を日本共産党員としてまっとうしたい」とのべて、大きな拍手を受けました。
 真言宗智山派僧侶の小嶋弘遵さんは、南北、米朝の首脳会談を歓迎する宗教界の声をあげ「仏教伝来の道、北東アジアを平和の地にするのが日本の仏教徒の使命です」とのべました。
 吉良氏は「信教の自由、平和を守るため先頭に立っている宗教者のみなさんの姿は心強い」と、身近なエピソードを交えてのべました。
 小池氏は「平和を希求し、人間の平等と人権の尊重を目指すという点で、宗教と日本共産党の目的は同じです。政治をかえるために多数者とともに進む道で、宗教者のみなさんはもっとも大事なパートナーのひとつです」とのべ、率直な意見交換を呼びかけました。
 「不殺生、慈悲の心でお釈迦(しゃか)様と日本共産党は同じ。本当の姿をもっと知らせてほしい」(東京の女性)、「苦しんでいる若者の悩みにこたえる取り組みを」(カトリック系短大元教員の男性)、「宗教についての考え方がわかる見解を」(神職の男性)などの声が次々出されました。
 小池氏はていねいに疑問に答えながら「宗教人のみなさんとの真の対話を全国で広げていきたいと思います」とのべました。
 「全国の会」はこれに先立ち、同会場で第21回総会を開き、土井洋彦党宗教委員会責任者があいさつしました。」



 そして、おかしな話だが、「日本共産党中央委員会」の公式ホームページには「川崎市 佐野よしあき市議」の名前が、9月3日夜現在も、そのまま残っている。
 どういうことか、いまここで解釈はしません。


 以上客観報道に限定しました。「1~4」は、すべて公開された事実です。

2018年9月3日夜。雨宮智彦。
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 見事だと思った。
このかたは、事実のリアリズムを知っている。リアリズムが、東欧や旧ソ連の歴史的隘路や、アメリカの建国以来の先住民侵略「開拓史」の残酷さともうひとつのアメリカ民主主義をともに明らかにしてきた。

 主観的であるが、今回市議のかたが、宗教の価値にこころをうたれ、他者に伝えた。それが「布教活動」として違和感を発生させた、と読解した。
 事実は、いまも明快ではないが、この市民科学者と自己紹介に記しているかたから、情報公開と民主主義の力動学について納得のいく共感を得た。

 私は応援団として、副団長が党を離れるのだから、相当な問題をいくつか想像して、悩んだ。 
共産党のかたは党内の問題だから、軽々に外部に持ち出さない、基礎的な組織原則とお考えになったのだろう。

 だが、立憲野党共闘や「市民と野党の共闘」で大きく政党も成長している21世紀だ。
いまだ1910年代のレーニンやロシア革命の卓越した実践「以外」の戦争中の虐殺やスパイ問題の地平とはかなり異なる2018年。
布教活動問題なのかどうかもいまだ明確ではないから、正確には論評できぬ段階にある。

 それでも来年の統一地方選挙を控え、「情報の正確でデマを許さぬ公開と国民民主主義」の視角から、問題の重要性をとらえないと、JCPは参院選と連動する「関ケ原」で大きなデメリットを背負う危険性がある。

 日本共産党から組織原則から離れても、その後も場合によって共同闘争を組めるくらいの柔軟な原則保持でいかないと、他党とせっかく共闘できているのに。党内や党支持者、応援団から疑心暗鬼がつもってこよう。

 それが「自分たちは正しい」という信念にのっとっているのかもしれないけれど、「自分たちだけが正しい」と誤解を招きやすい。

「正しいことを言うときは 声低く語るのがよい」

吉野弘の詩を、佐高信さんも『佐高信の昭和史』2015年単行本を同じ角川から文庫版として(2018年8月25日初版)p243~245で期せずして執筆なされている。


        -了ー




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