ギリシャ神話で数多の愛

両親の麗質を受け継いだ輝くばかりの美貌と無防備な姿にニンフのサルマキスが一目惚れ


諦めて去ったと見せ掛けたサルマキス


不快な想いをさせられ水中に引きずり込まれ、その張本人であるサルマキスに融合され


神話を知らずにいた方が素晴らしい彫像だなァと素直に感動できますが、そのモデルとなった肝心のヘルマフロディトスは八つ当たり




兄妹とは名乗れぬマクシミリアンの愛する妹クラウディアを死に追いやった仇として彼に憎まれたのがシュリルの受難の、真の愛と幸福の始まり でした。そして肖像画か彫像のように「生きて」いなかった、それまでの自分に対する訣別でもあったのです。マクシミリアンは妹を薄幸な女性だと思い込んでいましたが、クラウディアの実態を何処までマクシミリアンは把握していたのでしょうね?
クラウディアの自殺の原因は無謀な旅行を行い、夜盗集団に凌辱されて犯人達の誰かの子種を宿してしまい、夫のシュリルではなくて主君のグスタフⅣ世により離縁され尼僧院へ送られようとしたからなのか、本当に自殺したのかさえ怪しい。
アメリス王家の道具として利用された薄幸な、政略結婚でも命懸けで愛したのに踏み躙られ不幸なまま命を絶った哀れな、とマクシミリアンが言う“クラウディア”は実在しなかったかもしれない。明白なのは、1人で旅行に行けば良かったのに侍女を連れていた為に、彼女達まで道連れに凌辱されてしまったのは、紛れもなくクラウディアの罪
です。
マクシミリアンは憎しみのフィルター越し に見た虚像のシュリルを実像だと思い込み、これでもかこれでもかとシュリルの心を…躰を蹂躙しました。その美貌を際立たせる豪奢な衣装を纏っていたのは主君グスタフⅣ世に命じられて仕方なくだったのに、マクシミリアンは冷酷で派手好きで心が醜いと思い込み、シュリルの嗜好だと決め付けていました。しかし、そんな悪行の報いか? “目を醒ませ!”との何かの導きなのか?エレオノールの領民には慕われながらも、父には両性具有の体ゆえに殺されかけるまでに忌み嫌われ、その父に溺愛され洗脳された弟には理由もなく憎まれ、使用人達には疎まれ、心の牢獄に閉じ込められた無垢なシュリルの凍てついた哀しみに触れたマクシミリアンは知らずに深みに嵌まってしまい、シュリルを愛してしまいます。
残念なのは 、シュリルが“不完全な両性具有”だという事です。山藍先生によれば、子宮がないから受胎できない
両性具有だとか。官能小説の範疇から、はみ出る事になるからなのか、子供が生まれない設定にするなんて哀しいです。しかしながら、ラモン獣将軍(本当は「戦将軍」だけれど、ケダモノだから
「将軍」と付けるだけマシな扱いをしているつもり )は数え切れないくらい花唇を男根で貫き、挙げ句はシュリルの体は好き勝手できても心は自由に出来ない…その心からマクシミリアンを消せないと思い知り結婚しようとするなんて!体を奪えば心も従うと思い込み、「手に入れようとするのは征服欲」なのに、それを尽くしていると錯覚したケダモノの子種を宿す、不幸な受胎をせずに済むとは言えるでしょう。何しろ、最も妊娠の確立が高いのは、凌辱(レイプ)です。襲われた衝撃、恐怖と性的刺激が、皮肉にも妊娠に直結してしまうとか。
それでも、私が心の中でシュリルを受胎可能な両性具有にと思い描くのは構わないでしょう。お互いを愛で満たし、次世代へと繋ぐ性行為の結果として子供を産む、その方が私はシュリル&マクシミリアンをより一層の至福に得て、素敵だと思います。中世ヨーロッパを基にした架空の国々である3国(その内、ガルシア公国は名前だけ)が舞台ですから、「生産性を伴わない性愛だけの行為を蔑むなんてナンセンス! 」というモノも罷り通るのかもしれませんね。しかし、シュリル&マクシミリアンは、エレオノール&ローランドの領民だけではなくて、領民や市民、その他の誰かの為に生きている訳ではないし、繁栄や豊穣の証を示す為に生まれてきたわけでないから。
ルーベンス に奥方様と呼ばれて欲しいと、子宮がない両性具有だと分かっても、シュリルには立ち会いがマクシミリアンを育てた執事のルーベンスしかいなくても、マクシミリアンと結婚し沢山の子供の母親になって欲しいと、いろんな小説や漫画、アニメなどを見ながら、文才はないので妄想を掻き立て心の中で描き続けています
画像は、マクシミリアンが冷酷で派手好きで心が醜いと、看做していた彼の心の中で描かれたシュリルの虚像にピッタリ!なダンテ・ゲイブリル・ロセッティの『モンナ・ヴァンナ』です。
角川書店の文庫として復活した『アレキサンドライト』で感じた疑問が幾つもありますが、その1つはシュリルの処女妻にして、旅行先で暴漢に凌辱されて、その中の誰かの子を身籠り、シュリルの主君であるエスドニアの国王グスタフⅣ世に離縁されたクラウディア です。
如何に政略結婚とはいえ、愛妾を次々に娶り庶子を増産する夫であるアメリス国王の不実に激怒した王妃が、自分も宰相を愛人とし“そっちがその気なら、私だって楽しんじゃえ!” と奔放な人生を選び、マクシミリアンとその妹にしてシュリルの正室クラウディアは兄妹として生を受けました。
初老の執事ルーベンスに育てられたマクシミリアンは妹の事を知っていましたが、クラウディアは彼という兄を知らずに国王に可愛がられたとはいえ実はアメリス王家の血を引かぬ第4王女として育ちましたが、果たしてクラウディアはマクシミリアンが思うような哀れな女性だったのでしょうか?確かに夫であるシュリルに省みられず、暴漢に凌辱され自殺しましたが、兄妹という血の繋がり故の虚像を作り、その実像とは異なる心の中に創り上げた虚像の妹を見ていたのではないかと思うのです。
シュリルが彼女を愛していれば、こういう理由があって抱けないと告げていれば、本当にクラウディアは自殺するような事にはならなかったのでしょうか?マクシミリアンが唾棄し嫌悪する王族や貴族階級の輩の中で育ったクラウディアが、彼らの同類ではないと断言できない筈です。夫王が死んでも憎み続けているレティシア王妃やマクシミリアン達の母であるアメリス国の王妃のような女性 になっていないという保証は何処にもないのですから。
画像は山藍先生のオフィシャル・サイト【山藍紫姫子の世界】の「イベントレポート/アレキサンドライトパーティ」に掲載されていた、白夜書房&白夜書房の耽美系が分離したコアマガジンの時に表紙&挿絵を担当した漫画家の舞方ミラさん(白夜書房刊時の旧名:岸田黎子)によるシュリルのイメージ・イラストです。『山藍紫姫子 両性具有の世界』にも、ピンナップとしてあります。
私の、おススメの耽美・官能小説は山藍紫姫子(やまあい・しきこ)先生の作品です。全ての作品が好きというワケではありませんが、素晴らしい作品がたくさんあります。私のイチオシは、この『アレキサンドライト』(画像は角川書店の文庫版、白夜書房より刊行された単行本での舞方ミラさんに代わり絵は小島文美さん)です 2番目は、『アレキサンドライト』に巡り逢う前に一番好きだった『長恨歌[上・下]』です。
文庫版の『アレキサンドライト』の欠点は素敵な表紙イラストだけれど、シュリル曰く“褐色の男”ラモンを思わせる、シュリルの頬を愛撫する濃すぎる色の手ですね。
詳しくは山藍先生のオフィシャル・サイト【山藍紫姫子の世界】&ブログ「山藍紫姫子の世界」、 そして説明や山藍先生のコメント、購入した人達のコメントなど、とても参考になる「Amazonn.Co.Jp」を、良かったらご覧下さい しかし、山藍先生の作品達は購入が困難な、諦めざるを得ないモノも少なからずあります。
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