結果的には「面白かった」という感想。
ただ子供向けの作品と言えるかどうかはよくわからないとも思った。
子供を主人公にすれば子供向けになるというわけではない。この映画には「子供の能力の限界」がわりと正確に描かれているので、子供目線では感情移入しにくいような気がする。大人目線で見れば「子供っぽくてかわいい」になるとは思う。男の子はあくまで「いい子」であって、本当に子供が感情移入するような主人公としては難しいかもしれない。パズーやキキのほうが子供には感情移入しやすいはず。
また、いたるところで違和感が残る。
ポニョの姿がシュールすぎること、妹が多すぎる、ポニョの母親が海と一体化しているわりになんだかケバい、形式的過ぎるラスト、明らかに心配な二人のその後、母親のリサのほうが魅力的に見える、世界の何が危機だったのか、などなど。
説明が足りないのは、そういう見せ方もあるので別にかまわないが、それにしてもあちこちに変な「ざらつき」がある。
どうもファンタジー世界と現実世界の繋がり方がうまくいっていないような気がする。
ポニョの父親が魔法使いでそれっぽい姿なのだが、名前が「フジモト」って普通の日本人風の名前じゃダメだと思う。あとでネットを見ると「海底2万マイル」乗組員の中に同じ名前の人間がいるそうだが、そんなこと見ている間はわからない。知識として知っていたとしても、なぜSFの世界の住人である彼が魔法使いになってしまったのか、よくわからない。
「トトロ」や「千と千尋」では、ファンタジー世界への入り口をわかりやすく見せていたが、「ポニョ」にはその入り口がほとんど描かれていない。日常の中にいきなりファンタジーが出てくると、映画のジャンルとしては「シュール」になる。
そういうジャンルの芝居として面白かった。中途半端に「魔法」なんていう理屈付けはしないほうがよかったんじゃないだろうか。宮崎駿が「子供向け」を公言していたり、あの破壊的なテーマ曲も全部伏線で、子供の映画と思わせておいて実はそんな芝居だったと考えたほうが楽しく見られる。
あれだけいる妹のうち成人になるのは何割なのかとか考えるだけでぞくぞくするもの。