遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

市川光太郎「ジュゴンの上手なつかまえ方――海の歌姫を追いかけて」

2014-09-30 21:04:24 | 読書感想文
ジュゴンの上手なつかまえ方――海の歌姫を追いかけて (岩波科学ライブラリー)
クリエーター情報なし
岩波書店


2014/9/30

いわゆる大人の絵本的なものではなく、ジュゴンの研究者が、タイトルどおりジュゴンを捕獲する方法を書いている。
そのジュゴンの研究者が紹介するジュゴンの捕縛方法が、大人が数人がかりで海に飛び込み、ジュゴンの体にのっかるという「ロデオ法」だというのが、想像の上を行く。
また、ジュゴンが人魚のモデルになったという話は(事実かどうかはともかく)有名な話だが、東アフリカのザンジバルというところではジュゴンを捕縛したあと、村に輸送して帰るまでに「決して獣姦してはならない」という決まりがあったそうだ。
油断ならない。
著者の市川光太郎氏は、主にジュゴンの鳴き声の研究をされているとのこと。
専門的な話はあまり多くなく、代わりに著者の人となりや生活を知ることができる。
学者の常人ならざる生活も垣間見ることができて、そちらも興味深い。
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春日太一「時代劇は死なず!―京都太秦の「職人」たち」

2014-09-27 17:46:55 | 読書感想文
時代劇は死なず!―京都太秦の「職人」たち (集英社新書)
春日 太一
集英社


2014/9/27

時代劇を提供する媒体が映画からテレビに移行する過程が、東映、大映、松竹など各社ごとに書かれている。
著者が、ツイッターで「自分の名刺代わりの本」と書いているだけあって、時代劇黄金期(1950年代)の後半から現代までの推移を網羅的に扱っている。
銭形平次や必殺仕事人のような今では超メジャーとしか言いようのない作品が、当時はカウンターとして登場してきたというところがおもしろい。
以下、銭形のプロデューサー高橋久仁男の言葉。
「監督の仕事が完成ならプロデューサーは管制。監督が感情ならプロデューサーは勘定。監督は<まだないか>の『欠』を求めるが、プロデューサーは<これでいい>の『決』を求める。これがプロデューサーの仕事」
よく出来ている。
だから、企画と製作を一人がやると大変なんだよなと考え込んでしまう。
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テオ・アンゲロプロス監督「霧の中の風景」(1988年)

2014-09-26 23:07:12 | DVD・VHS・動画など
霧の中の風景 [DVD]
クリエーター情報なし
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)


2014/9/26

ギリシアに住む幼い姉弟が父親を探しにドイツへ向かう話。
子供が親を探しに旅をするという話ならディズニーでいくらでもやってそう。
それをヨーロッパ映画の巨匠が監督するとここまで雰囲気が変わってしまうんだと驚く。
なかなか行きたいところに行けない話という意味ではカフカっぽくもある。
退屈でないとは思わないけどつまらなくもない。
子供のかわいらしさはもちろん、どこを切り取っても絵画のような美しい構図。
必ず画面のどっかにグリーンを配置しているのも、徹底している。
こういう配色の技術は演劇にも活かせるもんだろうか。
コメディとは相性悪そうだけど。
画面の外から現れるモノたちの奇抜さが、現代美術っぽく、静かなのに刺激が強い。
ちゃんと日常では見られない高尚なものを見たような気分になった。

※DVDボックスのを見た。付属の解説はあとから読むのがオススメ。
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春日太一「天才 勝新太郎」

2014-09-24 01:27:38 | 読書感想文
天才 勝新太郎 (文春新書)
クリエーター情報なし
文藝春秋


2014/9/23

勝新太郎のほぼ全キャリアがほぼ時系列で書かれている。
著者は1977年生まれ。若い。
とても勝新太郎の死後から取材を始めているとは思えないくらい、当時の緊張感や時代感、なにより勝新太郎の人となりが伝わってくる。
どんだけ取材すればここまで書けるんだろうと考え込んでしまう。
臨場感のある描写で一気に読み終えてしまう。
もともと題材の強烈なキャラクターがあったにしろ、すごい筆力。
「偶然生まれるものが完全なものだ」という思想を具現化する天才ぶり。
そして、それを徹底しようとするあまり破滅していくさま。
勝プロダクション常務の真田氏の献身ぶりが健気過ぎて、過去の話なのに精神的に大丈夫なんだろうかと心配してしまう。
とりあえず「死刑台のエレベーター」「座頭市物語」「新座頭市物語 折れた杖」「顔役」は見なければと思った。
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小林正樹監督「切腹」(1962年)

2014-09-22 21:01:54 | DVD・VHS・動画など
あの頃映画 「切腹」 [DVD]
クリエーター情報なし
松竹


2014/9/22

落ちぶれた武士が、切腹前に自分の身の上を語る話。
彼が切腹するために井伊家に現れるところから、彼が果てるまでを描いた単純な筋立て。
それでも、じわりじわり状況が変化していく様子に緊張感があり、130分以上あるのに中だるみしない。
序盤の見せ場がひどくて「うわー」と声が出そうになる。
その切腹する武士を演じるのが仲代達矢。
なかなか感情を見せない語りに凄み。
とても当時30歳になったかなってないかの貫禄ではない。
「切腹」が当時の社会問題になっているという着眼点がおもしろい。
武士が持つ美学のようなものを、すごく距離を置いて眺めているような描き方。
その結果、登場人物がファンタジーの住人ではなく、今の自分と地続きに共感できるような気がしてきてしまった。

※見たのはVHS。テープがかなりダメージを追っていて、特にアクションシーンはまともに見られませんでした…。それでもおもしろかった。
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キム・ギドク監督「嘆きのピエタ」(2012年)

2014-09-21 22:48:10 | DVD・VHS・動画など
嘆きのピエタ [DVD]
クリエーター情報なし
キングレコード


2014/9/20

血も涙もない借金取立ての男と、彼の母親を名乗る女の行く末を描いた話。
見ているあいだは退屈で、結構苦痛。
かなり意識が飛んでしまったので、結構いいシーン見逃してしまってるような気がする。
ただ、全部見終わってから思い返すと「ああ、あのときのあいつの描写がかわいかったな」とか「ああ、よく考えたら構図はおもしろかったな」とか、とにかく後で「ああ、なるほど」と思うことが多い。
特に最初の被害者が、なんかもうどうしようもないダメなヤツで、よくよく思い返してみると笑えてしまう。ダメかわいい。
借金の取り立て方が負債者を障害者にして保険金をせしめるということ、負債者を障害者にする方法が、生々しくてよい。
でも、あんなにちょうどよく障害者になれるものなのかしら。
舞台となる町工場っぽい風景も味がある。
今後、キムギドク作品は、体調のいいときに見たい。
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渡辺明「頭脳勝負-将棋の世界」

2014-09-20 21:25:31 | 読書感想文
頭脳勝負―将棋の世界 (ちくま新書)
渡辺 明
筑摩書房


2014/9/20

いやな予感があったのに、iPhoneのアプリで将棋を始めてしまった。
案の定、半分中毒状態になって関連の本まで読み出してしまう。
将棋の渡辺といえば、「渡辺竜王」という言葉だけで覚えていたので、1984年生まれだと知って驚く。写真もあるけど、撮影時点で二十代には見えない。迫力ありすぎ。
そもそも「竜王」という肩書きが持てる業界ってナニゴトだろうと思う。
著者自身による佐藤康光との対戦レポートがおもしろい。
技術的な話はかなり控えめで、「あの時、どう思ったのか。感じたのか」という話が中心なので、自分のようなニワカでも楽しめる。
そして、ほんとに「ハチワンダイバー」や「三月のライオン」に出てくるような駆け引きがあるのだと驚くことができる。
棋譜も載っていたので、ドシロウトの自分がためしに並べてみようという気にもなった。
ただし、iPhoneのアプリだとホント並べにくい。
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TVhレジェンドシリーズ「松元ヒロ ソロライブ」

2014-09-16 23:11:17 | 演劇を見てきた
2014/9/16

元ザ・ニュースペーパーの松元ヒロさんによるソロライブ。
前知識はこれだけ。
登場した松元ヒロさんは、結構なご年配(あとで62歳と判明)、猫背、柔和な表情。
そして、デカい。
実際の身長はよくわからないけど、舞台人特有の遠くから見ても大きく見える現象。
1時間45分を3つのパートに分けて喋りっぱなし。
内容は、時事ネタを中心にした「テレビではやりにくい笑い」つまり「舞台でしか出来ない笑い」。
各パート間も、ちょっと水を飲んで汗を拭くだけでほとんど休憩なし。
しかも早口なので情報量が多い。
計ったように、一定感覚で笑いが起きるので中だるみもしない。
マルセ太郎を追っかけてニュースペーパーをやめたという話がかっこいい。
役者に段位はないけれど、「段が2つ違うともう生物が違う」という状態。
ちょっとしたテラフォーマーだった。
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劇団アトリエ「学生ダイアリー’14」

2014-09-15 22:01:14 | 演劇を見てきた
2014/9/15

開場中に、演出の小佐部さんと制作の加納さんが作品について語っていた。
おもしろい試み。度胸がすごい。
大学のとあるサークル内での込み入った人間関係を描いた話。
舞台美術。壁に文章を書くアイディアがかっこいい。
SNSの前情報で「救いのない話」らしいとあったので、どんだけ救いがないんだろうと思いながら見る。
北朝鮮やpm2.5、戦争の話題が出てくる。
世界の悪化と、サークル活動でヒロインが混乱していく様子が二重写しになっている。
いわゆるセカイ系の一種と言えそう。
もうちょっとゲスい話なのかと思ったけど、そこまで生々しくはなかった。
お酒のコール部分だけ生々しかった。あれは怖い。そして懐かしい。
最後は死ぬにしろ、世界が終わるにしろ、生き続けなくていいんなら、登場人物にとっては結構優しいお話だと思った。
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ニール・ブロムカンプ監督「エリジウム」(2013年)

2014-09-15 01:20:47 | DVD・VHS・動画など
エリジウム [DVD]
クリエーター情報なし
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


2014/9/14

今から100年後、富裕層だけが住むことを許される宇宙都市「エリジウム」に、荒廃した地球に住む貧困層の人たちが乗り込んでいく話。
裕福かどうかで待遇がまったく異なる世界観は、今の世の中と地続き。
格差社会の行き着く先という感じで我が身をなぞらえずにはいられない。
兵器もちょうど100年後のテクノロジーはこのくらいという感じがする。
ロボットかっこいい。
ただ、どんな怪我や病気でも治るという医療カプセルの存在が、ざっくりしすぎ。
ドラゴンボールの仙豆より雑かも。
世界観がわかった時点で、展開も大体予想がつく範囲。
2時間弱の話なのに長く感じてしまった。
手術のシーンが面白かった。
機械を埋め込まれている部分が血でにじんでる。いやーな感じがいい。
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