遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

清水潔『「南京事件」を調査せよ』

2017-05-30 23:41:55 | 読書感想文

 

「南京事件」を調査せよ (文春e-book)
クリエーター情報なし
文藝春秋

2017/5/29

調査報道を得意とするジャーナリストが、最終的には日本テレビで55分の番組を作るべく、ひたすら南京事件について調べた本。

あったなかったで言えば、戦争中に虐殺や虐殺まがいのことがなかったはずはない。議論の余地は規模の問題くらい。

学者の研究とおんなじで、最終的には「どこまで正しくできるか」という話にはなってしまう。

それでも、可能な限り調査した末に到達した正しさのレベルと、ネットで拾った知識と印象だけで作った正しさのレベルはまるで違うということは、肝に銘じておきたい。

著者自身、何度も中国に行ったり、まだご存命の元兵士の日記まであたっている。

あきれるばかりの調査力。南京事件というより調査が好きなんだと思う。

この本には「知ろうとしないことは罪である」という言葉が何度か出てくる。

同じようなことは差別の本読んでいても書いてある。

知らなきゃいけないことがたくさんあるのは大変だけど、ぼんやりしていると声が大きいだけの人の偏った情報が流通しちゃうので、耳が痛いと思いつつ共感した。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

サンキュータツオ『ヘンな論文』

2017-05-28 21:52:30 | 読書感想文

 

ヘンな論文
クリエーター情報なし

KADOKAWA/角川学芸出版

2017/5/28

日本語学の学者であり、漫才コンビ「米粒写経」の芸人でもあるという、どちらのジャンルに立っても異質な存在であるサンキュータツオによる珍論文のレビュー。

事実らしさを確認するために、大の大人が必死で実験や考察を繰り返す。

単に学者であればその異常さに気づかないし、芸人だけではその研究の意義がわからない。

学者芸人という唯一無二の立場から、的確な距離でツッコミを入れながらも、全体的には研究および研究者への愛があふれている。

それは盗用への怒りがつづられているあとがきにもよく表れているし、湯たんぽの章では伊藤紀之先生(「湯たんぽの形態成立とその変化に関する考察」)では、ご本人の信頼も勝ち取っている。

結果、「バカにしてはならない。笑ってもいいけど」というシンプルな境地に至っている。

研究や研究者への愛の量が多すぎて、ちょっと面倒な感じが出ているけど、本望だと思う。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ホナス・キュアロン監督『ノー・エスケープ 自由への国境』

2017-05-26 00:54:39 | 映画を見てきた

彼らの運命はいかに!?映画『ノー・エスケープ 自由への国境』予告編

2017/5/24

・メキシコからアメリカに不法入国する人たちが、それを憎むアメリカ人に次々と射殺されていく話。

・最初の20分くらいは眠たくてしょうがなかったけど、一発目の銃声からはヨーイドンで最後まで緊張感を持って見ることができた。

・だだっ広い荒野なので逃げ場がない。

・計算してやってるんだろうけど、感情移入する間もなく移民の三分の二くらい殺される。

・フライヤーに批判的な文脈でトランプの言葉が引用されている。

・本作で特徴的なのは、人殺し側が、わりと普通のおじさんだということ。

・ライフルを持っているものの、動きは遅め。移動する時もえっちらおっちら動く。

・他のサイトでは退役軍人という風に書いてあったけど、どちらかというと腕の立つ猟師。

・猟師としての技術は高いけど、このタイプの映画にありがちな「気がついたら目の前にいる」ということもない。

・追われる側に「なんて体力だ」と驚かれる程度。

・たぶん、この男のことをまあまあ知っている人でも「酒飲みでがさつで口は悪いけど、そこまで悪い人じゃないよ」くらいの印象しか持たれていないような気がする。

・悪役としてスケールが小さい。単に獣の代わりに人を撃つようになってしまっただけ。

・普通の人が、当たり前のように移民を殺すという構図が本作のキモになっていると思う。

・攻撃側が知識と技術と読みを使って淡々と人間を追い詰めていくところが怖い。

・攻撃を受ける側も、戦闘に長けた技術を持っている人がいないのでなかなか逃げ切れない。もどかしい。

・「おじさん猟師」対「素人」。どちらも超人的な何かが出来るわけじゃないところが、かえって生々しい。

・本来なら、場所もある程度わかっているので、逆に敵テントへ奇襲をかけるべきだと思うけど、そこまでの度胸は誰も持っていない。

・殺されそうになった相手でも、殺すのは砂漠に任せてしまう。

・ワンちゃんが思ってたより怖い。砂漠にいると小さく見えるけど、人間と並ぶとでかい。

・クライマックスがとてもドリフっぽい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

片岡自動車工業『ゼクシーナンシーモーニングララバイ』

2017-05-25 00:31:05 | 観劇三昧

観劇三昧:片岡自動車工業『ゼクシーナンシーモーニングララバイ』

2017/5/24

・のちに結婚する男女、病弱な白沢とナンシーこと中山静香の人生を駆け足で描いた話。

・白沢は一人の役者が演じているが、ナンシーは世代ごとに別の役者が演じる。

・見た感じ全然違う役者さんなのに、ほくろひとつで同じ人に見えるのは舞台マジック。

・大阪の小劇場は観劇三昧で少し見ている程度なのに、知っている役者さんが多い。

・個人的にオールスター感がある。

・少年少女時代のベタないじめだったり、ベタなグレ方だったり、夫側のベタな堕落と立ち直りだったり。

・ベタな展開でも見せ方の手札が多いので飽きない。強引だったり、丁寧だったり、抽象的だったり、具体的だったり。

・「ズキューン」って。

・ケーキのシーンの強引さが好き。

・リーゼントは先っぽから白髪になる。

・演出の手数の多さで、のちに明かされる本作品の構成の秘密を巧みに目くらまししている。

・装置がかっこいい。真ん中の階段の使い方は予想どおりだったけど、それでもかっこいいものはかっこいい。

・お母さんはいくらなんでも仕事が好き過ぎ。

・彼は結局なんの病気だったんだろう。

・ワンピースとかひょうきん族とか直接的な引用ギャグが多い。思い返せば、最初の歌のふりつけもいもきんトリオっぽい。

・世代ごとに出てくるナンシーたち。しっかり分業しているので下手にやると流れ作業に見えてしまうところ、きちんと前のナンシーの情報を引き継いだ上で、新しいナンシー像を更新している。

・駅伝を見ているような感じで、話が進むにつれ、だんだんタスキが重たくなっていく感じ。

・そんな重たいタスキを宮川サキさんが磐石の演技でゴールに運んでいた。

・いろんな事情があるのは想像できるけど、どうせならみんなにウェディングドレス着てほしかった。

・エピローグの打ち上げ感。

・夫婦同時に寿命ってどんだけ仲良し夫婦なんだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

報告「教育文化会館演劇フェスティバル2017 短編演劇祭 公開審査会」

2017-05-22 02:05:35 | 報告!

2017/5/22

去年に引き続き、教文短編演劇祭の台本審査会に審査員として参加させていただきました。

今年は、武田晋さん、小島達子さん、南参さん、イトウワカナさんと自分。

他の方々と比べて実績の乏しい自分ですので、他の方々より時間を使って作品を読み込み、調べること、印象批評にならないように良いところも悪いところもできるだけ具体的にお話しするよう心がけたつもりです。

個人的には「今年は第三回全日本もう帰りたい選手権ないんだな」とさびしがっていたんですが、『アフター10』なる後継作品が出てきたこと、そして去年まで第一回、第二回の「帰りたい選手権」を上演してきた劇団イチニノさんがまったく作風を変えて参加していたことに驚いたり喜んだりしています。

講評後、劇団名が判明した時は素直にびっくりしました。

言い足りない部分もあるので、各作品の講評メモはどこかで公開するかもしれません。

結局、台本では見えない部分もたくさんありますので、本番を楽しみにしたいと思います。

教育文化会館演劇フェスティバル2017 短編演劇祭

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アリスインプロジェクト『みちこのみたせかい』

2017-05-20 22:19:43 | 演劇を見てきた

2017/5/20

・最新医療とAI技術と人体実験の組み合わせで、「みちこ」の認知症の治療、果ては寿命の克服にまで届きそうになる話。(たぶん)

・序盤は話についていくので精一杯。

・どんどん出てくる登場人物(21人)に振り回される。

・会話のテンポはかなり意識して速くしているよう。

・演劇的に「いい会話」はもっとゆっくりだと思うけど、それをやってしまうと序盤が持たなかったのかも。

・実際、集中力を保つのが大変だったし序盤の見せ方はかなり苦労していたと思う。

・構成がはっきりしてからは靄が晴れ、尻上がりに面白くなってくる。それなら、もっと早めに情報出してくれたらよかったのに。

・ただでさえ、VRなのかAIなのかの入れ子構造があったり、生命倫理の問題にも片足入っているし、21人の人間関係も結局覚え切れないので、脳がつらい。

・フライヤーに配役を載せるのは正しい判断。

・ネタバレは悪という考え方もあるけど、本作は展開を知ってる状態で見たほうが面白いと思う。

・「その認知症、治すべきか」を考えるだけで、相当頭を使うし、そういう頭の使い方は楽しい。

・役者さんが華やかすぎて目が回る。

・みちこ役の吉本ほのかさんと孫娘役の久保田れなさんを中心にして、塚本奈緒美さんが場をしっかり支え、廣瀬詩映莉さんが果敢に点を取りにいく。

・演技の出来が演劇の出来に直結するポジションを各々やりきっていた。

・バカが核心を突く瞬間が痛快で廣瀬詩映莉さんの「なおさなくていいよ」(たしか)という一言の熱量がすごい。個人的に本作で一番気持ちが上がった瞬間だった。

・忘れてしまったけど、廣瀬さんはもう一言すごいと思ったセリフあった。逸材感強い。

・他の役者さんも、多少強引でもギャグを入れたりしてて、少しでも盛り上げようとチャレンジしてた。

・こういう現場だったら、さぞ役者さんはレベルアップするんだろうなとしみじみする。

・シーンはそんなに多くなかったけど、歌と踊りがほんとかっこいい。

・目を回しながら、楽しんだ。

《追記》日曜まで。どちらか満席のはずなので要問合せ→『みちこのみたせかい』(チケット&スケジュール)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コトリ会議『小鳥。名前はコネリ。』(大大阪舞台博覧会 vol.2)

2017-05-17 00:35:17 | 観劇三昧:大大阪舞台博覧会 vol.2

観劇三昧:コトリ会議『小鳥。名前はコネリ。』(大大阪舞台博覧会 vol.2)

2017/5/16

入院中の母と娘の会話。13分弱。短い。

話に起伏らしい起伏がほとんどない。

飴を食べること、歌を唄うことなど、他愛ない話をする。

母親の話し方はしっかりしているものの、記憶がしっかりしていないようで、同じ話をしているのに気づかなかったり、しょうもないことで謝ったりする。

これから日がたつにつれ、少しずつより話が噛みあわなくなっていくんだろうなと思うと、滅びの予感ばかりでさびしくなる。

歌の調子が妙に明るいことや「あめちゃん」というかわいらしい大阪らしい呼び方も、かえってさびしさが強調されている。

そういう母と話しながら、娘は何を感じているんだろうということを考えながら見る。

それでぽろっと出た最後の一言を言われて、今度は母親は何を感じるんだろうということも考えて、しみじみした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山田洋次監督『家族はつらいよ2』

2017-05-16 00:50:14 | 映画を見てきた

『家族はつらいよ2』映画オリジナル予告編

(ネタバレを含みます)

2017/5/15

・試写会で見た。前から二列目。

・いきなり橋爪功の顔が大写しで鼻毛をカットしているシーンから始まり、度肝を抜かれる。

・あれくらいキャリアのある役者さんがスクリーンいっぱいにアップになるのはそれだけで迫力がある。

・高齢の父親に運転免許を返納させようと、息子夫婦が一族巻き込んで奮闘するが、父の旧友の急死でうやむやになる話。

・自分の中で、運転免許返納に関する前段と、旧友に再会する後段のエピソードがうまく繋がらない。

・特に運転免許の話は完全に投げっぱなしだった。

・あちこちにぶつけて傷だらけの車がギャグとして出てくるけど、不安すぎて笑いにくい。

・いくら映画でも、認知力の落ちた橋爪功(役)が、余所見運転で事故を起こすところなんて正直見たくない。

・運転中、余所見をするたびに、ぞわぞわしてしまう。そのへんのホラー映画より怖い。

・ご年配の方特有の生死にかかわるブラックユーモアの一環だと思うけど、交通事故の場合は「生きる」「死ぬ」のほかに「殺す」も入ってくるので、ギャグになりにくいと思う。

・家族も口ばっかり乱暴で、誰も真剣に考えているように見えないので、見ていてイライラする。

・説得の材料に「加害者になる(人を殺す)恐れがある」ことを誰も言わなかったのは不自然。

・追突事故を起こしたのに怪我人が出なかったからって許されるもんじゃないと思う。ぬるい。

・有り金を渡させて「できる人」感を出されても困る。

・どうやって返納する展開にしていくんだろうと思っていたら、返納しなかった。びっくり。

・後段の旧友との再会は、素直にいい話。

・前段であんなに主人公のおじいさんを甘やかしていたのに、後段の旧友のおじいさんの描き方には容赦がない。

・70歳過ぎて交通整理しているのはしんどそう。

・自分の周りでやってる交通整理も見ていると高齢の方が多い。現実に即した設定なんだと思う。

・我ながら無料で見せてもらってるのに、いいところと悪いところを指摘する比率がおかしい。

・でも、もうちょっとさすが大御所と思いたかった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コトリ会議『おれの二の腕はどうだ』

2017-05-15 00:07:19 | 観劇三昧

観劇三昧:コトリ会議『おれの二の腕はどうだ』

2017/5/14

腕を撃たれた男、オリンピックを名乗る女、カレーを混ぜる女、ヤク中の女などが、戦争が終わりを知りみんなでカレーを食べる話。

21分の小品。喫茶店のようなお店の一角をつかって上演されている。

一応、極限状態ではあるけど、重症の人よりカレーのほうが大事だったり、各々が言いたいことを叫んでいたり(ほとんど対話らしい対話はしていない)、とにかく混沌とした状況作りが心がけられているようで、解釈のとっかかりが見つからない。

極めて臭い匂いを嗅がされたときのリアクションだけ生々しい。

良くも悪くも情念の赴くままに動いているように見える。こういうノリで戦争を扱ってるのがハラハラする。

狭い演技スペースでもブレーキをかけない、しっかりとしたテンション芝居だった。

あと、カレーに大量に入れたあの白い粉はなんだったんだろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ルーカス兄弟の脱力ライブ』(2017年)

2017-05-11 21:15:24 | NETFLIXで観た・その他

2017/5/11

双子のルーカス兄弟によるスタンダップ・ライブ。

というか、ほとんど漫才。49分。

同じ顔をした二人が、ちょっとうつむき加減で淡々と語る。

案の定、固有名詞がなかなかわからないので、そこまで笑えない。

笑いは構図のズレ。構図とは常識。

向こうの常識がわからないと、ズレもわからない。

ニクソン大統領、麻薬、O・J・シンプソンなど。

危なっかしい話題なのはわかるけど、笑いの文脈できちんと理解できる教養がほしい。

父の罪状と双子の兄弟が同時にクビになるネタは、普通に笑った。

繰り返しのギャグは、よく漫才でも見るので、そんなに理解してなくても「型」として笑ってしまう。

たぶん、向こうのお客さんも呼吸だけで笑ってる雰囲気はある。

あと、英語で伏線のことを「callback」というらしい。

かっこいいので当たり前のような顔をして自分も使ってみたい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする