遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

マキノ正博監督『鴛鴦歌合戦』(1939年)

2020-09-29 00:23:00 | NETFLIX/PrimeVideo/UNEXT/Apple TVで観た

2020/9/27

浪人と傘屋の娘が、恋敵や骨董品道楽の父親、殿様に翻弄されながら仲良くなる話。

登場人物がほぼ演じる役者由来の名前。

肩の力が抜けた陽気な話で、80年前の作品なのに敷居が低い。

登場人物が次々と愛くるしい。

人柄が見えるだけでなんか笑ってしまう。

ヒロインのお春が不自然さ混みでかわいい。

「ちぇー」の言い方や、ぐずぐずに泣いているところとか。

志村喬は見た目より声先行で気付いた。若い。

コメディ調の演技も新鮮なんだけど、場面場面で求められる演技の方向がコロコロ変わるので、製作サイドから相当信頼されてるように思える。

殿様が底抜けに軽い。「僕はオシャレな殿さまー」とか唄っている。

嘘をついた気まずさを身を捩じらせて表現するお富の付き人もかわいい。

記号的な演技はバカにされがちだけど、メリハリが効いていて見やすい。使いようだった。

(Amazon Prime)

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ニットキャップシアター『チェーホフも鳥の名前』

2020-09-27 23:34:26 | 観劇三昧

観劇三昧:ニットキャップシアター『チェーホフも鳥の名前』

2020/9/23

・サハリン島の小さな街で暮らす人々が外交や戦争に翻弄されながら生きていく話。

・ほぼ100年を2時間53分かけて描く。時間の感覚がよくわからなくなるスケール。

・北海道に住んでいるものの、サハリンについてはあんまり考えたことがなかった。

・作品紹介のHPを見ると、宗谷岬からサハリン島まで43km。一番身近な外国と言えるけど、樺太とも呼ばれていたし、外国っぽさが弱い。ずっと曖昧なまま認識していた。

・ロシアと日本に挟まれ、少数民族もいて、資源も豊富なこの島は、ただの東の果てでも北の果てでもない。

・民族の汽水域みたいな場所だから、たしかに俯瞰して描くだけで面白くなりそう。

・とは言え、先行作品もそんなに多くないだろうし、資料探しだけでも大変。

・企画を立てるだけでも覚悟がいるし、ごまかしのきかない長尺の作品を作って、上演まで辿り着いていることがすごい。

・個人的には、立案から脚本完成まで、どのくらいの時間でできたのか気になる。

・本作に出てくる人々の多くは、個人個人でつながっているけど、全体の流れを認識しているわけではない。

・個々だと記憶から消えてしまうような小さな営みを、作品にまとめることで残す。

・物語を作る意義ってこういうことなのかなと思ったりする。

・そもそもチェーホフがそういう話が多いイメージ。

・そうやって作られた作品は、さらに他の作品とも繋がっていく。

・たぶん、札幌座『フレップの花、咲く頃に』とも繋がっているはず。観てない。失敗した。

・最終的にはほぼ現代まで至るので、歴史から、自分達のすぐ身近なところまで、地続きになっていることを感じさせてくれる。

・曖昧だった場所の輪郭も少しクリアになる。

・最初は周囲をシラけさせていた言葉が、年月を重ねていくうちにどんどん貫禄を付けていく様子がたのしい。

・そう考えるとあの二人は確かに特別だったのかも。

 

《詳細》(観劇三昧HP)

■公演時期:2019/09/01

■地域 近畿

■キャスト
門脇俊輔
高原綾子
澤村喜一郎
仲谷萌
池川タカキヨ
千田訓子
西村貴治
山岡美穂
黒木夏海
尾鳥英二

■スタッフ
作・演:ごまのはえ
パーカッション:田辺響
舞台監督:河村都(CQ)
舞台美術:西田聖
照明:葛西健一
音響:三橋琢
映像:堀川高志(kutowans studio)
映像操作:飯阪宗麻(NOLCA SOLCA Film)
写真協力:後藤悠樹/衣装:清川敦子(atm)
小道具:仲谷萌
演出助手:小山裕暉(テノヒラサイズ)
韓国語監修:徐義才
ニヴフ語指導:白石英才(札幌学院大学)
岩手弁指導:劇団らあす(花巻市)
絵:竹内まりの
宣伝美術:山口良太(slowcamp)
記録写真:井上大志
制作:高原綾子・門脇俊輔・澤村喜一郎
当日運営:池田みのり・新原伶(劇団なかゆび)
制作協力:三坂恵美(観劇三昧)
協力:株式会社リコモーション、山口浩章
資料協力:一般社団法人全国樺太連盟、NPO法人日本サハリン協会
企画・製作:ニットキャップシアター
主催:ニットキャップシアター、一般社団法人毛帽子事務所
提携:伊丹市立演劇ホール
助成:芸術文化振興基金、京都芸術センター制作支援事業

■あらすじ

日本とロシアに挟まれた島、サハリン島。
この島に「チェーホフ」と名付けられた街があるのをご存知でしょうか。
ロシア人、日本人、朝鮮人、「ニヴフ」や「アイヌ」などの北方民族――
この街に暮らした様々な人々が、ときに国家間の思惑によって翻弄されながらも生活する様子を、
アントン・チェーホフや宮沢賢治ら、かつてこの島を訪れた作家達の眼差しとともに辿ります。

おかげさまで劇団旗揚げ20周年!
ニットキャップシアターの『街の記憶』プロジェクト最新作。
街と人々の暮らしを描く、約100年のクロニクル。

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梨うまい『悔しみノート』

2020-09-11 21:24:00 | 読書感想文

2020/9/11

ラジオ番組「ジェーン・スー 生活は踊る」のリスナーが、見た映画やテレビドラマなどの感想を情念深く書き綴ったノート。

お悩み相談コーナーのアドバイスを愚直に実行して、書籍化まで辿り着いている。立派。

芸大卒で同じような情念を抱えて一般職についている人もたくさんいるだろうから、立派であるとともに、とても幸運だと思う。

文句を言いつつ、すごくちゃんと見てるので、嫌味がなく案外読みやすい文章。

それなりに共感しながら読んでたものの、著者はまだ二十代中盤。

芸大出てからの演劇活動がうまくいかなかったみたいだけど、それこそ演劇との関わり方なんてこれからいくらでもある。

自分の歳から見ると、彼女が抱えている生きにくさすら妬ましい。

だいぶん年上の自分から言えるのは、40になったら楽になるかどうかは人によるということ。

楽になってない人は沈黙しているだけだから気を付けてほしい。大きなお世話だけど。

あと、教えてもらった『ムラサキ』は面白かった。









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埼玉県立川越高等学校『いてふノ精蟲』

2020-09-03 22:25:00 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

埼玉県立川越高等学校『いてふノ精蟲』


2020/8/28

東京帝大に画工として赴任した平瀬が、世界ではじめてイチョウの精子を発見する話。

実在の研究者を扱い、登場実物は大学の研究者ばかり。

いわゆる「高校生らしさ」のない作品。

逆に言えば、高校生であることの強みに頼らず、完成度の高い作品を作ったということ。

立体感のある舞台装置、とりあえず観ている人の感情に働きかけるツカミ部分、話の分割によるテンポアップ、わかりやすい人物造形、観客が見やすくなりそうなことは大体取り込んでいる。

平瀬、池野、牧野の主要三人も、日頃の訓練をうかがわせる、地に足のついた演技で魅力がある。

大学の研究と言っても、その瞬間を逃さないために、木の上で寝起きしたり、研究室を銀杏臭まみれにしたり、その過程は大変泥臭い。地味で地道な調査を積み重ねていく。

不遇だった偉大な功労者を、冗長な笑いや奇抜なことなしに、地道な積み重ねを以て讃える話が、きちんと評価されていることに感動する。審査員はいい仕事をしている。

(WEB SOUBUN)
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