2021/2/19
・原発事故の近隣の村。住民たちがバラバラになっていくなか、小学五年生の空が「映画」を撮ろうとする話。
・空の役は町田誠也さん。実年齢からは遠く離れた少年役を、小学五年生の未熟さを逸脱することなく、とにかく明るく演じる。
・町田さんの出演作は何度か見ているけど、ここまで作品全体の軸になる役は珍しいかも。モノローグも多い。
・厳しい状況でも、少年の目線なら明るく描ける。映画の『ジョジョ・ラビット』を連想する。
・あと、シリア空爆のドキュメンタリー映画というと、たまたま、難民映画祭で見た『目を閉じれば、いつもそこに』を思い出す。
・監督の藤井沙織さんも女性なので本作のモデルかと思ったりもしたけど、必ずしも女性が演じなくてもよい役かも。山木真綾さんの最初のモノローグよかった。
・日本とシリアくらい離れていても、故郷を離れざるを得ない人々という点で地続きの問題とも言える。
・ただ、戦争はもちろん、津波や感染症と比べても、放射能の危険性は実感しにくい。今のコロナ禍と重ねる見方もあるけど、別次元の難しさという感じがする。
・演出の戸塚直人さんがあいさつ文で触れていたけど、現実に起きた悲劇に対して、「当事者か否か」で線引きするのはあまり有効ではないと思う。
・結局、当事者かどうかはグラデーションだから、線引きしようとするとどこまでも分裂してしまう。
・当事者か否かの二項対立ではなく、人の数だけ立場があって、座標のどのへんにいるかのほうが考えやすい。
・最終的には当事者かどうかではなく、題材に対して誠実かどうかが問われる。
・自分自身も肝に銘じておきたい。
・当事者かどうか線を引く引かないの話は、いろんな分野で応用が利きそうで、何か考えるときの補助線にできる話だった。
・あと、車椅子の役者さんがいると、作品上の意味を考えがちだけど、作品に馴染んでいれば車椅子でも車椅子でなくても大きな問題はないことがわかった。勉強になる。
・ちなみに、座・れらの発行の演劇誌「風」に、福島県から避難された方のお話が載っていて読み応えあった。こういうお話は時間が経つほど得難くなっていくので、文章に残すことはとても重要だと思う。
(2021年2月18日19:15の回)