遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

「第6回学生演劇祭」

2021-03-31 23:05:00 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

2021/3/26

・おおよそ30〜40分くらいの短編9作品を配信で一気に見る。

・劇団宴夢『ルーモ1.255』。序盤の数字だけのセリフ覚えるの大変そう。間違えても気づけそうにないけど。冒頭の「ディスタンスしている、あなたと私」が今年の演劇祭全体を象徴するセリフになっている。

・劇団Noble『灯火は遥か』。断片的な言葉と動きを不規則に並べていく見せ方。うさぎストライプの作品群を思い出す。基本全景映像なので、とにかく2人の配置と向きで作れるバリエーションを探る、基礎研究のような作品になっていた。

・ゆとりユーティリティ『満塁デストロイ』。観念的な作品が続いたので、こういう作品があるとホッとする。微笑ましく楽しむ。他者との距離感でいうと本作品が一番反対側に振れていた。逆ディスタンス。

・ふしこ『木青屋服呉』。タイトル好き。自分に貼られたレッテルを裾の埃を払うように扱っている。肩の力が抜けている。それを一昔前風の環境で見せるバランスも好き。

・おちゃめインパクト『キャベツ』。もともと透明な仕切りは、ディスタンスを取るための工夫なんだろうけど、あらぬ方向に進化していて楽しい。タイマーも効果的。諦める話を前向きに書くのは難しい。20年くらい後には彼女たちの間でこの時のことが笑い話になっていてほしい。

・ポケット企画『ここにいて、』。己の虚無を他者を使って表現する。ドーナツの本質は穴みたいな人の話。言葉を発し続けることで、言葉にできないことを表現しようとしてる。のかも。

・東北連合『深夜、パーソナリティーが消えた』。陽キャと隠キャは対にはなるけど、対等ではないという話。自作のラジオなんて根暗に見えるけど、ポッドキャスト全盛の時代なので、もう一押しで全然別の世界に飛んでいきそうではある。

・ごじゃりまる。『こうふく♡みたらしだんご』。むかし戯曲のWSで似たようなテイストの「みたらしだんご先輩」という短編を書いたので親近感が湧く。ポップに見せてるけど、完全にカルトにハマった信者をどうやって救うかみたいな話だった。それはともかく、あんなに女性ばっかりの大手企業があったら案外先進的なんじゃないかと思ったりもした。

・あたらよ『会話劇』。会話と玩具を結びつける発想がおもしろい。細かく見ていくと変なところもありそうだけど、組み合わせの妙で最後まで押し切られた。ジェンガやドミノをライブでやるのはハラハラしてしまう。

・投票はおちゃめインパクトと、あたらよに入れたけど、ライブで見たら極端に印象が変わりそうな作品が多かった。



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May『黄金バット』(大大阪舞台博覧会 vol.2)

2021-03-24 11:30:20 | 観劇三昧:大大阪舞台博覧会 vol.2

■観劇三昧:May『黄金バット』

2021/3/23

父親が娘に、幼い頃の恩人である二人の密入国おじさんの思い出を語る話。

個人的に1960年代というと現代感強いけど、戦争との近さが全然違う。

題材が題材だけに素直にあらすじを追うだけでも緊張感を持って見られるし、黄金バットに象徴される光と影の対比をどんどん重ねていく表現も巧み。

自身が抱える影に抵抗するため、余計に明るくふるまう人たち。

もしかしたら、当時の社会情勢とも重なるのかも。

短い時間の中に情報量が詰め込まれていて、面白さの層が厚い。

最初に見てから時間が経ったので何度か見返しているけど、苦にならない。

境遇が違いすぎて、登場人物たちに共感できるかと言われるとかなり難しいけど、理解できないままでも、自分の中にとどめておきたい作品だった。

あと、「6才」と書いてある説明的なランドセルかわいい。

特に短編だと、説明しない上品さよりもスピード感が大切になることよくある。


■詳細(観劇三昧HP)

公演時期:2016/02/13
地域:近畿
キャスト:『大大阪舞台博覧会 vol.2』参加作品
スタッフ 作・演出:金哲義

あらすじ

『大大阪舞台博覧会 vol.2』参加作品

「大阪にはどんな劇団があるの?」
「どのパフォーマーが面白い?」
大阪市が主催する「アーティストを発掘・育成・サポートしていくのはファンである観客である」 というコンセプトに基づいた舞台公演企画。
応募総数57組から選ばれた、関西を代表する若手・ベテラン24組の短編舞台作品を一挙公開!

▼団体紹介
1993年結成。大阪を拠点に、東京・韓国でも作品を上演。本公演は35回を数える。
演劇の他、ライブハウスでのパフォーマンスやマダン劇、学校公演等の活動も行う。
脚本・演出を座長である金哲義が手がけ、人間の立ち位置を問う作品を作り続ける。
現在、団員は中学生1名を含む8名。
まだまだ新たな表現とフィールドを求めて活動中の「オトナゲナイ」集団である。

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「INDEPENDENT:SPR20」(延期開催)

2021-03-23 00:20:39 | 演劇を見てきた

2021/3/22

・30分弱の一人芝居6作品を一日で見る。

・大阪選抜組の信頼感もさることながら、地元勢も楽しみな人選。客席も埋まっていて期待値が高い。

『アンチゴーヌの娘』 出演 光燿萌希×脚本演出 橋口幸絵

演者と演出の個性がそれぞれに強い。決して混ざり合わない部分と、女性としての連帯を感じさせる題材選択の振り幅。強引に空気変えてくる。最初の演目で客席から「がんばれ」と声援が飛ぶのすごい。

『ぎゃくへんしんマンスパイダー』出演 井上嵩之 ×脚本演出 前田透

 一昨年のTGRで見た井上くんの超絶一人語りをそのまま一人芝居に展開したような迫力で30分走り抜いていた。語り口のテンポがよすぎると眠くなってしまう悪癖が発動してしまい、とても恥ずかしい気持ちになる。

『Phish Hevean』出演 有元はるか×脚本 二朗松田×演出 南参

前半の細かいくすぐりの積み重ねが利いているし、曲が鳴ってから慌てて歌い始めるタイミングが常にギリギリを攻めている。セリフと動きの精度がものすごく高い。その精度があるからこそ、後半の大仕掛けが映える。歌詞もうちょっと聞きたかったかも。シーラカンスで「なるほど!」って膝を打つ感覚が楽しい。

『かさぶた』出演 ひらりそあ ×脚本演出 竹内圭一

井上ひさしの「化粧」を引き算して再構成している感じ。そのシンプルさに凄みを感じる。前説で感染症に触れていたけど現代の話なんだろうか。ひらりそあさんの語りの心地よさと終盤から幕引きまでの切れ味が見どころ。

『遊泳』出演 千田サトミ × 脚本演出 渡辺たけし

参加者の中では、どちらかというと年長組だと思うけど、一番やんちゃな作品だった。「ぬいぐるみさんとの暮らし方」を彷彿とさせる。あれは内臓(小腸?)という解釈でいいんだろうか。ぬいぐるみは自分もいつか一人芝居で使ってみたい。

『ミミクリ』出演 近藤ヒデシ × 脚本演出 戒田竜治

学生の頃、故事成語が好きだったので、記憶力の引き出しを開け閉めしながら忙しく楽しむ。物まねの人選的に、大阪ならもっとウケるんだと思う。野田秀樹と中島らもで大笑いした。中国の古代史という遠いところから、一気に個人の願望に収束させるまとめ方がきれい。

有元さんもそうだけど、大阪組のお二人は物理的に大きく見える。一人芝居の場数の違いなのかも。

開催延期の「延期」部分の回収ができた公演を見られたのは初めてかも。とても有難い気持ちになった。

(2021/3/20 15時と18時の回)

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トム・ムーア監督『ブレンダンとケルズの秘密』(2017年)

2021-03-13 23:53:35 | NETFLIX/PrimeVideo/UNEXT/Apple TVで観た

2021/3/13

修道院で暮らす少年ブレンダンが、高名な職人エイダンや、森の精霊アシュリンらの助けを得ながら、装飾写本を作る話。

のちの『ウルフウォーカー』との類似点が多い。

アシュリンはそのものだし、敵対する者を直線、後押しする者を曲線で表現されているのも似ている。

バイキングはほとんど四角で、闇の主も定規を引いたような直線で表現される。

職人対闇の主の異種格闘技戦は、リアリティなんて面白さとは関係ないとばかりに、ひたすらデザインとしてかっこよく仕上っている。

ちょっとロビン殺法思い出した。

画面を分割して時間経過を表現したり、師匠とのお別れを間接的に描く海辺のシーンもスマート。

長生きなバンガボンはおそらく精霊化している。

装飾写本の独特の文様は、ケルト三部作の他の作品にも見られ、シリーズの統一感を生み出している。

画像検索してみると、ほんとに目がつぶれそうになるくらい細かかった。

(PrimeVideo)

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トム・ムーア監督『 ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』(2016年)

2021-03-10 00:23:55 | NETFLIX/PrimeVideo/UNEXT/Apple TVで観た

2021/3/8

人間の男の子ベンが、大好きな母親を失う原因になった妹シアーシャへのわだかまりを克服する話。

シアーシャはセルキーという妖精。アザラシに変身することができる。

作中では妖精の中でもヒエラルキーが高そうな感じ。検索すると実際にある伝承らしい。

人物絵はシンプルでコミカル。

おばあちゃんの顔が、太陽の塔みたい。

シアーシャの顔の変化も、シンプルな線だからこそショックが大きい。

大型犬のクーは変なディフォルメされてて、足がヒレのように見える。題材が題材だけに何かの前振りかと思った。

ベンがシアーシャにつらく当たるのは子供だから仕方ないと思えるけど、お父さんはもっとしっかりしないとダメだと思う。

大団円っぽくなるのも人間にとって都合よすぎる感じがして、それでも懐いてしまうシアーシャがちょっと不憫だった。

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NTL『戦火の馬』

2021-03-08 22:45:49 | 映画を見てきた

2021/3/8

戦争で離れ離れになってしまったアルバート青年と元狩猟馬のジョーイが、紆余曲折を経て再開を果たす話。

題材が題材だし、NTLだし、当然期待値を上げて見るわけだけど、その上げ切ったハードルを軽々と越えてくるくらい馬が馬だった。

パペットを三人がかりで操作している。時には優雅で、時には猛々しい馬の動きを完全に再現していた。

不機嫌になると前足をビターンとするのも楽しいし、なんか食べているときには咀嚼音も出る。

よく見るとちゃんと呼吸もしている。

鴻上尚史さんの『ロンドンデイズ』に演劇学校で動物の真似をする授業があったけど、そういう技術の共有みたいなものが影響してたりするんだろうか。

休憩明けにメイキング映像で、妙に自虐的な原作者と、ちょっと申し訳なさそうに「馬の一人称はない」と言ってしまう演出さんの掛け合いが面白かった。

あと、完全に寝起きモードで見てしまったので、集中力が続かないところがあって悲しい。

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鈴木大介『されど愛しきお妻様 「大人の発達障害」の妻と「脳が壊れた」僕の18年間』

2021-03-08 21:53:12 | 読書感想文

 

2021/3/8

ルポライターの筆者が、自ら高次脳障害になってしまったことをきっかけに、発達障害の妻との関係を改善させていく本。

社会的弱者を対象にしたルポを書いている筆者だけど、脳梗塞で倒れ、自分自身が社会的弱者になってしまう。その生々しい様子は名著『脳が壊れた』などで読むことができる。

内容的に重なる部分は多いものの、本書では妻との関係に重点を置いている。

いくらルポが本職で治りかけとはいえ、高次脳でよくここまで客観的で精密でユーモアのある文章が書けるなとあらためて驚いてしまう。

もちろん、それは筆者の相方である妻の力が大きいのは明らかで、その独特すぎるキャラクターは、弱っている理屈屋夫の思い込みをどんどん溶かしていく。

わざと大げさに書いているのかもしれないけど、それでも反省に次ぐ反省の繰り返しは、読んでいてちょっと痛々しさを感じる。

「ようやくあたしの気持ちがわかったか」という名言に再会する。

不自由さが障害になるのは環境との兼ね合いという考え方も心にとどめておきたい。

 

 

 

コメント (2)
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花田菜々子『 出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』

2021-03-06 03:30:12 | 読書感想文

 

2021/3/5

最寄りの本屋で衝動買いして、その日に最後まで読み終わった本。読ませる力が強い。

内容については、タイトルと、能町みね子さんの帯文「凡人(と思っている人)全員が刺激される自己啓発本」に集約されている。

本書は、筆者が人生に疲れて宿無し生活を送っているところから始まる。

本に関する本なのは間違いないけど、本のことというより、自分の人生と向き合う話として読める。

今は減っていると思うけど、深夜までやってるファミレスがあって本当によかった。

ヴィレッジヴァンガードの店長というだけあって、人生に疲れた常識人に見えた冒頭部分と、全然そんなことなかったという最初のつかみ部分(プロフィール欄のくだり)のギャップが、叙述トリックのようだった。

本というメディアそのものの推し活と言えるかも。

自分も本を勧められてみたいけど、そんな人いっぱいいるだろうなと一歩引いてしまうのがまさにダメなんだろうと思ったりする。

※自分が購入したのは文庫ではなくハードカバーのほう。

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空宙空地『その鱗、夜にこぼれて』

2021-03-05 01:56:00 | 演劇を見てきた

2021/3/4

・ひなびたスーパーに集まる人々の、それぞれの人生の断片を重ね合わせて幸せについて思いやる話。

・最初に「おばさん」が思わず万引きしてしまう事件から始まるものの、過去の空宙空地の長編と比べても軸となる存在や出来事がなく、市井の人々のそれぞれの人生をフラットに描こうとしている感じ。

・なので、物語を見るというよりも、何枚ものレイヤーを重ねた一枚絵を鑑賞しているような気持ちになる。もしくは洛中洛外図。

・毎回思うけど、舞台俳優としての華と生活感が両立しているおぐりまさこさんは本当にすごい。

・平凡な人々の表現をつきつめると、平凡な人間のステレオタイプができあがってしまうのでバランスが難しい。

・既婚未婚と子供あるなしで、少なくとも4パターンくらいには感想の傾向が分かれるような気がする。

・自分は未婚子供なし男性なので、一番自分と近いのがスーパーの店長さんだったりする。

・実際のところ、彼の家族についての言及があったかは思い出せないけど、せめて人から嫌われないように生きていきたい。

・一度見ている役者さんが多いことを差し引いても、あれだけ目まぐるしく一人何役もやっているにもかかわらず、誰が誰だかわからなくなることがほとんどない。

・膨大な人間関係をきれいに捌ききっていたと思う。

・ゲストは明逸人さん。ゲスト出演である以上、完全に馴染んでいても馴染んでなくてもよろしくない難しいポジション。あのやる気のない警察官が微妙に嫌な実在感で絶妙だった。

・フラットな絵画と違うのは、それぞれの登場人物の時間の経過も描いていること。

・コストコ、スイスロール、胡蝶蘭などなど、他愛のないキーワードをその補助線にしている。

・特にスイスロールは巧い。あんなに、年齢を重ねるとともに価値が変わっていくものもないもの。

・人生のすべてを描くことはできないけど、ポイントになるシーンを切り出すことで立体的に見せることはできる。

・たくさんの人のたくさんの人生が重なっていくことで、具象から抽象画っぽくも見えてくる。

・人々の現在過去未来が鱗のように集まって、きれいな構造色ができたようなお話だった。

(2021/3/3 19時30分の回)

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