遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

ドット・ブラウニング監督『怪物圑』(1932年)

2021-04-30 22:15:06 | NETFLIX/PrimeVideo/UNEXT/Apple TVで観た

2021/1/27

ある屋敷で見世物にされている、世にも奇妙な女性の過去をさかのぼる話。

出演者には実際の障害者が多く含まれ、作中で直接的に差別のセリフを浴びせられる。

刺激が強い。当時ですら、監督・キャストのその後のキャリアに悪影響が出るのもわかるくらい。

自分の中にある差別心とも向き合わざるを得ない。

作品に実際の障害者を起用すること自体は何も悪くない。

人が人を異形だと思うのは見慣れていないだけなので、多くの人の目に触れること自体はいいことだと思う。

例えが適切かどうかわからないけど、「五体不満足」の乙武さんが世間に出てきたことで救われた当事者の方も多かったはず。自分も最初は驚いたけど、じきに慣れたし。

それにしても、わざわざ見世物小屋の設定でやらなくてもとは思う。

最後。あの姿に変えるのは、人為的には無理なんじゃないだろうか。

結局、団員たちはそういう超自然的な力を持った恐ろしい存在として描かれている。

因果応報のハッピーエンドでは片付けにくい話だった。

(Prime Video)

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クロエ・ジャオ監督『ノマドランド』

2021-04-28 01:53:24 | 映画を見てきた

2021/4/27

・ノマドの女性ファーンが、同じノマドの人たちとの出会いなどを通じて自らの生き方と向き合う話。

・話の起伏は少ない。ドキュメンタリー映画のように、淡々と彼女の生活を追う。

・アカデミー作品賞の発表直後ということもあってか、わりと客席が埋まっている。

・とても静かな話なので、ほかのお客さんがポップコーンを食べる音すら結構気になる。

・トイレ掃除や排泄シーンもあるので、内容的にも何かを食べながら見るのには向いてない作品だと思う。

・キャンピングカーに乗って各所を転々とする。誰もが一度は憧れそうな自由に見える生活。

・もちろん、素敵なことばかりではない。彼女はとにかくよく働く。経済の制約はついて回る。

・賃金が安そうな工場内の軽作業や清掃が多い。

・無常観の強い作品だけど、どんなに世の中が発展してもトイレ掃除の仕事だけはなくならないと思う。

・肉体労働も多いけど、ファーンを演じるフランシス・マクドーマンドは『スリー・ビルボード』のイメージが強烈なのであんまり大変そうに見えない。強い。

・わりと強面な彼女が微笑むたびにギャップで魅力的に感じてくる。

・魅力が強すぎて、役というより、役者のノマド生活に見える。前にそういう感じのテレビ番組があったのでなおさら。

・なので、アカデミー主演女優賞の演技だと言われるとちょっと変な感じはする。演技の中の「技」という文字がなじまない。

・ノマドでもコミュニケーションは重要。人と人とのつながりからも自由になれるわけではない。

・どこにでも移動できるけど、一晩キャンピングカーを停めていい場所は案外少ない。不自由。

・作中ではノマドの生き方を肯定も否定もしていない。

・ノマドならではの苦労や日常のストレスを描くものの、魅力的な人々や自然との出会いも見せる。

・とはいえ、定住地を持たない生き方がこんなによるべなく感じるものなのか。自分のことのように不安になる。

・見ていると、制約というより、自分をつなぎとめるものが欲しくなってくる。一般的には土地だったり、家族だったりするもの。

・「あなたは何をよりどころに生きて何を残して死んでいくのか」と問いかけられるような話だった。

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内田英治監督『ミッドナイトスワン』

2021-04-22 17:03:45 | 映画を見てきた

2021/4/22

・母から虐待されていた中学生の一果が、親戚のトランス女性である凪沙の所に居候しながら、バレエの才能を開花させていく話。

・一果役には服部樹咲さん。公式HPを見ると、バレエ経験者からのオーディションという話。

・全くの初心者から、若き才能として舞台でパフォーマンスするまで、成長の過程を演じきったのはものすごい。

・「もう一回やって」と言われても同じことはできないはず。映画だから切り取れる身体性。

・常識や客席の喧騒なんかをすっ飛ばして、それでも踊りたい衝動が勝るショークラブの1シーンが強い。

・彼女は別格として、あの会場で一番いい仕事していたのは、たぶん音響オペの人。

・あんなハプニングでもさっと音を入れてくる。あそこに橋本一生くんがいたらやってくれそう。いたのかも。

・反対に、ホールのコンクールで、客席から舞台に人が上がってくるシーンにぎょっとする。会場スタッフは何をやってるんだ。

・トランス女性の凪沙を演じるのは草薙剛さん。

・最初はわりと記号的な女性らしさが目立つけど、後半のある変化から表情だけで雰囲気が伝わるようになる。

・国民的人気者がここまで役に寄せなくてもと思うくらい。だからこそ信頼できるんだけど。

・トランス女性が女性のステレオタイプをなぞってしまうのはジェンダー平等の考え方と相性が悪そう。だからクィア思想になる。新しい言葉が沢山出てきて大変。

・トランスの書き方に批判が出るのもわかる。

・そもそも性的マイノリティ=不幸みたいな見せ方は偏見を助長するものになりかねない。

・1ケースとして見られるかどうかだから、お客さんを信用しているとも言えるし信用しすぎているとも言える。

・終盤のショッキングなシーンも、(そういう事例が現実にあたったとしても)2020年にもなってわざわざ見せなきゃいけないことなのか疑問。

・あそこまでしないと終われない内容とも思えず、それまで最低限の言葉で丁寧に上品に作ってきたドラマの範囲を踏み外してしまったような感じ。

・一果の悪友の子、どういう風になっていくのかと思ったら、最終的に席で声出そうになった。出たかも。

(サツゲキ)

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ニットキャップシアター『踊るワン-パラグラフ』

2021-04-17 02:29:57 | 観劇三昧

観劇三昧:ニットキャップシアター『踊るワン-パラグラフ』

2021/4/16

いわくつきのマンションの一室で、ある噂のもと、不法侵入者が次から次へと入ってくる話。

いて当然の雰囲気を出しながら、いる根拠が何もない人たちが次から次へと入ってきて、管理人を混乱させる。

時間を少しずつスキップさせながら、「何か」が起こるまでのカウントダウンで緊張感を持続させる。

どちらかというと暗く、特殊なシチュエーションなのによく笑える。

「名探偵こなもん」というどうしようもなく観客を不安にさせる存在がいる一方で、予想外の方向からどんどん笑い要素が飛んでくる。

戯曲ワークショップでお世話になった、ごまのはえさんの演者としての迫力も楽しい。

特に「エロなのか」の連呼で笑ったけど、どういうバランスで笑いに繋がっているのか、うまく理解できない。

シリアスと笑いの距離感が絶妙。

先行して見ていたニットキャップシアターの作品が重厚な内容だったので、その振り幅の大きさも楽しむことができた。

 

■公演時期 2010/02/18

■地域 近畿

■キャスト
大木湖南
安田一平
ごまのはえ
門脇俊輔
高原綾子
澤村喜一郎
市川愛里
織田圭祐
藤田かもめ
森下実季

■スタッフ
作・演出:ごまのはえ 
照明:三橋琢

■あらすじ

かつて、ある宗教団体が住んでいたマンションの一室。
教祖の復活をほのめかす一節(パラグラフ)が掲げられる。
教祖が姿を消してからちょうど12年目の今日、人々がその部屋に集まった。
そしてはじまる「奇跡」。
「奇跡」は本物か? それとも誰かが仕組んだものなのか?
様々な疑いが渦巻く中、しだいに熱狂していく人々。
その姿を冷静で滑稽な言葉で紡ぐ、シチュエーション“ミステリー”コメディ。

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「毒毒毒毒毒毒毒毒毒展 痛 もうどくてん2」

2021-04-16 19:55:32 | レポート

2021/4/16

看板を見て嬉しくなって当日券を購入する。

ポルカドットスティングレイという、黒地に白の水玉模様という、おしゃれなエイに出迎えられる。

きれいで平べったいものがぬるぬる動いている。かわいい。

パラポネラは初めて見たけど、蟻は大きいだけでこわい。

前回見たときに、「猛毒と言われても、目に見えるものじゃないから全体的に地味」と感じたのを思い出す。

派手な警戒色や牙、針があればいいんだけど、「食べたら毒」のパターンだと、見た目は地味な爬虫類だったりするので、なかなか楽しむハードルが高い。

運営側もそのへんは意識していると思われ、捕食時の小さな映像が添えられていたり、「スカンクのにおい(を再現したもの)をかいでみよう」という体験スペースもあった。

スカンクは気にはなるけど、どうしても試す気になれず。万一、マスクに匂いついても嫌だし。

後から思い返してちょっとだけ後悔はしている。

※基本写真撮影OKなのもうれしい。

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高坂希太郎監督『若おかみは小学生!』(2018年)

2021-04-06 00:07:41 | NETFLIX/PrimeVideo/UNEXT/Apple TVで観た

2021/4/4

両親を失った小学生の織子が、祖母の旅館で働きながら、心の傷を癒していく話。

タイトルでだいぶ損しているような気がする。

面白い面白くない以前に、小学生を働かせて美談っぽくまとめそうな感じが不安。

ただ、前評判はすこぶる良い。

実際見てみると、「小学生が若女将になる話」というより、「突然両親を失った子供がショックから立ち直っていく話」の比重のほうが大きい。

ふとしたきっかけで、両親がまだ生きているような錯覚を起こしてしまうところや、動揺したときに体が震えだしてしまう様子が見ていてつらい。

絵柄や彼女が旅館になじんでいく展開はわりとあっさりしてるのに、そういうところだけやけに生々しい。よくできているとも言える。

もうちょっと修行パートや真月との衝突が見たかったし、ちょっと駆け足な感じはするけど、必要なイベントを一通り詰め込んで94分にまとめる手際はすごい。

それはそうと、春の屋旅館って、一泊二食付きでいくらくらいするんだろうか。

(U-NEXT)

 

 

 

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ニットキャップシアター『カレーと村民』

2021-04-05 01:06:18 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

2021/4/2

・浜家の当代である太郎が、日露戦争直後の講和条約に納得できない人たちや、クセのある家族に振り回される話。

・日露戦争を歴史ではなく庶民の目線で見返している。

・戦果なんて、損失の量に比例するわけがないんだけど(むしろ反比例しそう)、それで納得できない人が多いのは仕方ない。

・作中最も学があるはずの海外留学経験者、次郎さんが一番胡散臭い存在に見える。素敵な低く通る声で、言うことにもそこそこ説得力があって、質が悪い。

・知識階級への不信感は普遍的なものだと思うけど、一般化しすぎるのも有害なので、彼の一応の恋人アキでバランスをとっている感じ。知識は知識で大事。

・なので、ちゃんと知識階級ではなく、次郎さん個人が胡散臭く見える。

・知識がなければ、正しい判断をすることができない。なので、当時の庶民が愚かではなく、誤魔化して情報を出さないほうが悪い。

・この傾向、おそらくアジア太平洋戦争の終戦まで続くと思う。下手したら今に至るまでそうかもしれない。

・現代で暮らす自分の感覚だと、年老いた奉公人、オマサの言うことには共感できるけど、ほかの登場人物に全く響いていないところが悲しい。

・後半の会話劇をちょっと逸脱するシーンが面白い。なかなかあんな思い切りのいい展開にはできない。

・ネさんは名前から勝手に朝鮮ルーツだと思っていたけど、パンフを見たら全然違った。

・ちょうど、テレビ番組のアイヌ差別表現を見たばっかりだったので、動物例えに少しどきりとする。

・勘違いだったけど、検証は後でもできるので、気づくことが大事なはず。

・猫の話は終盤のある展開にもつながる。おしゃれ。

・薬屋さん、たしかに嘘をつくような感じの人でもなかったけど、ほんとに川の水汲んでたんだろうか。普通の水で実演しても不都合なさそうだけど。

・カレーは作中少しだけ出てくる。他の方の感想で、「カレー」が現代の何に例えられるのかという問題提起があったけど、自分にはうまく思いつかず。

・作者のごまのはえさんとお話する機会があったので、聞けばよかったような、自分で考えたほうがいいような。

・ある日、突然気づくのを待ちたい。

(配信チケット購入)

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メモ 2021年4月~

2021-04-05 01:02:46 | メモ

2021年4月

4/3 岩松了『バーテンダーどこへ行く』

4/4 北村想『専門医』

4/5 寺山修司『毛皮のマリー』

4/6 北村想『雨のバス停留所』

4/7 渡辺えり『花をさがして』

4/8 川村毅『2020年12月』

4/9 樋口ミユ『ここにおる』

4/10 坂手洋二『ランナーもマスクを』

4/11 アサノ倭雅『叫べ、生きる、黒い肌で』

4/12 関根信一『TEA FOR TWO 2人でお茶を』

4/13 関根信一『新・こころ』

4/14 小川未玲『甘いドーナツと人魚』

4/15 佃典彦『きっと』

4/16 二朗松田『HDDD』

4/17 土田英生『地下室からの配信』

4/18 サリngROCK『祝福』

4/19 アントン・チェーホフ『ワーニャ伯父さん』

4/20 ごまのはえ『洞窟ごっこ』

4/21 加藤一浩『たぶん散歩中』

4/22 つかこうへい『熱海殺人事件スペシャル一時間バージョン』

4/23 J.M.シング『渓谷の陰で』

4/24 二朗松田『輝け!レコード大賞』

4/25 ニール・サイモン『ジンジャーブレッド・レディ』

4/26 二朗松田『俺たちに明日はある』

4/27 J.M.シング『海に騎りゆく者たち』

4/28 ニール・サイモン『二番街の囚人』

4/29 ニール・サイモン『サンシャイン・ボーイズ』

4/30 ニール・サイモン『名医先生』

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フランシス・フォード・コッポラ監督『ゴッドファーザー PART II』(1974年)

2021-04-04 00:03:38 | DVD・VHS・動画など

2021/4/2

・マフィアのボスになったマイケルが表裏の仕事と家族との軋轢に苦しむ様子と、彼の父がマフィアのボスになるまでの過程、異なる時間軸の話を交互に見せていく話。

・登場人物が多いし、人間関係も複雑。一見して全然わからず、字幕と吹替えを交互に見ても、なかなか全体像がつかめない。

・前作からそれなりに時間もたっているし、ビデオもそこまで一般的じゃなかっただろうに、当時のお客さんはどこまで理解しながら見てたんだろう。

・前作だと、全部はわからないまでも、わかった気になれる程度にはカタルシスもあった。

・公開当時に同じ映画を何度も見るような人が多かったとは思えないし、本作を一回で理解するのは、攻略本なしでファミコン版の「ドルアーガの塔」をクリアするくらい難しいと思う。

・専門雑誌とかで補足する感じなのかな。

・前作のマイケルはどこまでも有能で、ピンチになっても必ず機転と度胸で切り抜ける。殺す殺されるの多い作品内で彼だけは死にそうにない。

・本作では、彼の有能すぎる部分がかえって足かせになってしまう様子を見ることができる。

・有能ではない人の気持ちが全然わからない。コントロールしているつもりが振り回されている。

・前作のスマートなイメージとは大分違う。

・特に兄のフレドとの対比が残酷。

・妻の気持ちも妹の気持ちもわかっていない。

・ドアを閉めるだけで、あんなに冷酷に見える人、初めて見た。

・前作でもあった終盤の人死ラッシュも、今回は後味の悪さばかり残る。

・彼の父ヴィトーのルーツは、そんな彼の悪戦苦闘ぶりと対比するかのように描かれる。

・人殺しは同じようにあるものの、どことなく牧歌的で、なんならコミカルに感じる。

・若き日のヴィトーを演じているのは、ロバート・デ・ニーロ。見た目はそんなに共通点ないけど、声が似ている。

・マイケルとヴィトーを交互に見せることで、対比や息抜きの効果はあるものの、結果202分もある。

・構成は面白いけど、結局映画二本見てるのとあまり変わらないんじゃないかと、ついつい思ってしまう。

(Prime Video)

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