遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

OrgofA『異邦人の庭』

2022-01-31 13:59:59 | 演劇を見てきた

2022/1/28

・短編作品『1、2、3』、1時間強の『異邦人の庭』、そして出演俳優によるアフタートーク。

・休憩時間もあわせて全部で2時間ちょっと。

・短編のほうは山木将一さんと櫻井保一君(面識の有無による敬称の混乱)。

・『異邦人の庭』の舞台装置ありきの話。他二作の短編も同じ装置を使っているっぽい。

・さすがに透明アクリル板しばりの作品が一度に四作品も上演される状況は珍しそう。

・山木さんの会話劇は初めて見たけど、いかにも曲者占い師という感じで、飄々とした語り口が心地よい。

・櫻井くんは踏み込むたびにあしらわれる役回り。

・最初にめちゃめちゃ怒ってるわりに、小さなスケールの話。あの状況であそこまで怒れるのすごい。

・終盤の怒りや取り繕う感じが抜けて、二人が年相応のたたずまいに変化していく様子が見どころだった。

・『異邦人の庭』は二回目。配役も同じ。飛世紗耶香さんと明逸人さん。

・初回ならではの面白さもあるけど、話の展開をあんまり気にせずに観られるのも楽しい。

・死刑の執行日をある程度自分で決められるという架空の制度が話のポイントになっている。

・どちらかというと、死刑執行を後押しするような制度なのであんまりよくないんじゃないかと、作中世界の住人になったつもりで考えてしまう。

・二回目の面会の詞葉の様子が好き。情緒があがったりさがったり、全体で「今日は体調悪い日なのかな」という感じになる。春もそれを受けて気遣う様子を見せる。

・絶えず張り詰めた時間が続く。二回目の序盤でちょこっと緩むけど、それが最初で最後。

・戯曲読むと「緩むポイントかな」と思うところもあるけど、意図的にスルーしているようにも見える。

・立ち上がるだけで、緊張感が出る場の仕掛け。

・死に対して真摯に向き合おうとしてそうなるんだと思うけど、もう少し緩めても大丈夫そうなので、都合付けば別配役バージョンも見たかった。

・今回は100mの走り方で何メートルまで進めるか試しているような見せ方。無酸素運動みたいな作品だった。

(1/26 19時の回)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

松本花奈監督『明け方の若者たち』

2022-01-13 00:22:01 | 映画を見てきた

2022/1/12

・就活が終わって付き合い始めた男女が、恋愛と自由を謳歌する話。

・監督は1998年生まれ。登場人物も若い。まさに人生の明け方の若者たちによる話。

・就職が決まった人たちの飲み会から始まる。勝ち組を宣言して盛り上がる大学生たち。

・実際には就職が決まったことより、卒論や就活のことを気にしなくていい時間を獲得したことが大きい。

・夢と現実を描いているけど、経済的に何の苦労もないところからスタートできる選択肢のある人たちの話。

・ただ、根拠のない万能感や、恋愛まわりの話とか、全然彼らと違う人生を過ごしている自分でも身に覚えがないこともない。仮にうまくいっていたほうの自分とも言える。単純な話、うらやましい。

・連中が大きなことを言ってる場所が、どう見ても学生向けの安い飲み屋というのも親近感が沸くんだと思う。

・二人は順調に仲を深めていく。しかし、二人がいちゃいちゃすればするほど、終わりの予感が強くなる。

・窓の外からセックスシーンを撮ると、誰かに覗かれているように見える。

・『6年愛』や『花束みたいな恋をした』と同じ感覚で見ていたら、うまく変化していた。景色が過去にさかのぼって刷新されていく感じ。

・それ以外は、どこにでもあるような若者の恋愛を始まりから描いていてシンプルな構成。

・最初のうちは、こんなに人生の一番いい時期を描いて、このあと落ちていくだけなのに、どうやってまとめるんだろうと思いながら見る。

・年齢を重ねるほど、人生で一番幸せだと思える可能性は減っていくものだけど、そのぶん思い出は増える。

・だから人間年をとっても絶望せずに生きていけるのかと、自分よりはるかに若い人たちに教えてもらった感じ。

・スマホをどこかに忘れてもニヤリとできてしまうんだもの。

・二人を演じていたのは北村匠海さんと黒島結菜さん。いちゃいちゃしているのがとても楽しそう。

・もう一人の重要な役、二人の友人役の井上祐貴さん。よくラブコメに出てくる「とても高校生に見えない頼りがいのある高校生」っぽくてよかった。

・後半、ヒロインが変わってたと思う。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロブ・マーシャル監督『シカゴ』

2022-01-12 22:26:32 | 映画を見てきた

2022/1/12

浮気相手を射殺した女性ダンサーが凄腕弁護士を雇ってもらって無罪を目指す話。

映画館で観るのは初めて。家と違って音量を気にしなくてよい。

死刑囚となりながらも野心を失わないヒロインのロキシー・ハート。背筋美しい。

ちょっとスカーレット・オハラを思い出す。

看守も弁護士も検察もマスコミも、正義とは程遠い人たちだから許される人物設定。

唯一の良心であるロキシーの夫はとにかく鈍臭い男として描かれる。気の毒。

町山智浩さんの解説によると作品全体がロキシーの脳内ボードビルショーになっているとのことだけど、全く彼女の目に入っていない夫のパートがあるのはちょっと変かも。

そのへん、あざとくなるから意図的に曖昧にしてるのかも。

もう一人、気の毒だったのが、ハンガリーの女性死刑囚。

ほぼロキシーの危機感を煽るためだけの存在。わりと露骨な差別を扱っている。後味悪い。

それでもやっぱり歌とダンスは最高で何度でも見たい作品だった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中江和仁監督『劇場版 きのう何食べた?』

2022-01-03 22:53:08 | 映画を見てきた

2022/1/1

・同棲中のゲイの二人が、実家との関係やちょっとした隠し事でできた心の距離を埋めていく話。

・今出ているぶんの原作とドラマは一通り見ている。

・一日一回の上映とは言え、正月なうえに公開からしばらくたっているのに、客席が結構埋まっている。

・頻繁に笑いも起きる。自分も結構笑った。

・日常系の話なので、映画用にどうやって盛り上げるのか気になっていたけど、そういう感じはなかった。

・映画なら映画らしく、みたいな気負いがない。強いて言えば京都旅行と花見の絵面がきれいだったくらい。

・シロさんとケンジの二人を中心にただただ会話が心地よい。それで勝負できる。強い。

・冒頭のシーン。「理想のかっこいい彼氏」像が求められる演技で、もともとかっこいい西島秀俊さんが手加減なしにその役割を全うしている。

・かなりステレオタイプのいい男でもギャグにならない。笑いは起きるけど、ケンジとの関係性を基盤にしているのでそれほどあざとくない。ケンジ目線ならむしろ自然。

・実際、それで不安になるのは案外生々しい話。

・ちょっとした気持ちのズレを、二人が話し合いで修復していく。その言葉のキャッチボールがきめ細かい。

・劇中でも似たようなことが言われていたけど、二人は結婚という制度で縛られていないぶん、ほんの少しのきっかけで崩れてしまう弱い関係性。

・だからこそ人並み以上に関係性の保全に気を使う。

・異性愛者はそのへん雑でいいという話でもなくて、同性でも異性でも大切なパートナーなら常に相手に対して敏感であったほうがいいよねという話。

・もっと言えば、仕事でも友達でも人間関係全般に通じる話でもあるので、誰にとっても他人事ではない。

・大切な話をするときに、さりげなさを装って二人分コーヒーを入れる。相手も察してテーブルに着く。この言外の間合いの取り方。

・原作で軽いギャグとして処理されていたところもしっかりめに深堀りしていたりする。

・ケンジが旅館の座椅子につまずいたり、厚揚げの下ごしらえのシーンは普通にアクシデントだと思うけど、台本という命綱がない瞬間も二人の演技が全然崩れない。

・なんなら、ケンジとシロさんのオフショットを見ているようなお得感がある。

・ドラマシリーズの積み重ねもあって、ここまで関係性に特化した映像作品は少ないんじゃないかと思う。

(札幌シネマフロンティア)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

佐藤順一・鎌谷悠監督『魔女見習いをさがして』(2020年)

2022-01-01 21:05:15 | NETFLIX/PrimeVideo/UNEXT/Apple TVで観た

2022/1/1

・『おジャ魔女どれみ』好きの三人の女性が偶然出会い、お互い励まし合ったりケンカしたりしながら、それぞれの人生の壁を乗り越えようとする話。

・『おジャ魔女どれみ』は未見。存在は知っているし大人でも結構好きな人がいるらしい、くらいの知識。

・小さな女の子向けのアニメなので、いわゆる「教育にいい」話なんだろうとは思う。なので、本作に感化された子どもは成長の過程で必ずどこかで現実にぶつかる。

・そして、理想と現実のはざまで迷ってしまう。おそらく理想を捨てて生きていく人たちもいる。

・そのあたりのキワでもがく人たちの話、でいいと思う。

・誰だって理想や夢をあきらめたことはあるだろうから、おジャ魔女を知らなくても楽しめる。

・特に三人は女性なので、能力はあるのに職場で小バカにされたり、ヒモ男性に金を無心されたり、社会的に軽んじられがちな様子も描かれている。

・三人は立場も性格も年齢も違う。それでもおジャ魔女が好きという一点で強固につながっている。

・仮に作品自体が理想にあふれた絵空事だとしても(子供向けアニメなのでそれでいいけど)、三人がおジャ魔女をきっかけに、親友と生きる活力を得たのはたしかなこと。

・アニメでも映画でも演劇でも何でもいいけど、フィクションにはそういう奇跡も起こす力があるんだという希望を語った話でもある。

・…という感じの内容の作品だということが、冒頭10分くらいで何となくわかる。見せ方がとてもうまい。

・絵柄は、女児向けというにはリアル寄りだけど、それでも頻繁に極端なディフォルメが入っていてかわいい。単純で線自体に表情がある感じ。

・ダメ男に一撃かますところはホント気持ちいい。

・男性を一面的ではなく、ダメ男はダメ男、ちゃんとしてる人はちゃんとしている、裏表ある人もいると、バランスの難しいところも、きちんと描けていると思う。

・恋愛描写が、単なる憧れではなく、比較的手の届く日常の延長線上にあるのも好み。

・大人の女性を描いた話としてはそれでもまだまだ甘口だと思うけど、大人である作り手たちが年端もいかない女の子に夢と理想を押し付けたまま知らんぷりしない、誠実な企画だった。

(U-NEXT)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする