1917 ロシア革命
遺伝学の教科書で、Ⅹ連鎖劣性遺伝の家系図としてよく登場するのが、イギリス王室のビクトリア女王に始まる血友病Aの遺伝で、この家系につながるロシア皇室のアレクセイ皇太子が罹患し、これがロシア革命の引き金となったと言われています。
Ⅹ連鎖性劣性遺伝子について「遺伝医学への招待」(南江堂)から抜粋すると、男性の性染色体Ⅹ染色体およびY染色体上にある遺伝子は、優性・劣性の如何に関わらず、すべて形質を発現する、一方でヘテロ接合女性 (変異アレルのⅩaと野生型アレルのⅩ)は発病しない、ただし、この概念は原則であって、Ⅹ染色体の不活性化(2つのⅩ染色体はどちらかのⅩ上の遺伝子は不活性化する)によりこの通りにならないことがある。一般的に変異アレル(Ⅹa)は女性保因者を通じて何世代も保存される、とあります。
わかりやすく具体的に言えば、保因者の女性の子供は女子なら2分の1の確率で保因者になり、男子なら2分の1の確率で罹患者になる、ということです。罹患者でない男子ならば変異アレルがないということで、その子孫には遺伝しません。
1894年にロシア皇帝として跡を継いだニコライ2世は、その妃でビクトリア女王の孫にあたるアレクサンドラ皇后が血友病Aの保因者であったためようやく生まれた男子のアレクセイ皇太子は運悪く血友病Aの罹患者でした。ニコライ2世はよき家庭人ではあったが歴代の皇帝ような資質に欠けていたとされています。アレクセイ皇太子の病気が皇帝一家を蝕んでいた様子は祈祷師の「怪僧ラスプーチン」のエピソードなどからもうかがえます。
日露戦争では日本に敗れ、この戦争中に起こったロシア第一次革命で絶対君主制から立憲君主制へ移行することを余儀なくされました。しかし立憲政治は名ばかりで実態が伴わず、貴族や地主らによる保守政治がなお続き、その後の首相に就任したストルイピンの反動政治によってロマノフ朝から知識人や国民を離反させ、反体制グループが台頭する原因となったようです。1914年から第一次世界大戦に参加し国民生活はますます困窮。1917年、ロシア革命で君主制そのものが打倒されてロマノフ朝は崩壊、1918年7月18日未明、レーニンの命を受けた革命軍により、ニコライ2世と家族全員は銃殺されロマノフ王朝の終焉となりました。
尚、補足ですが、ビクトリア女王の長男のエドワード7世は幸運にも罹患者でなかった(つまり変異アレルが遺伝しなかった)ため、その子孫である現在の英国王室の家系には血友病A保因者はどなたもおられないのです。
イギリス王室とロシアのロマノフ王朝の運命は1つの変異アレルの遺伝の有無で明暗が分かれたともいえます。
コメント
kamakuraboyさん、こんばんは
血友病は出血しやすかったり止血が難しい病気で、関節症も併発するようですね。
血友病罹患者のロマノフ王朝と罹患していないイギリス王室、それは歴史の綾とでもいうべきでしょうか。
これは遺伝子がかかわる王朝存亡の例ですね。
2019/1/8(火) 午後 9:14 泉城
> 泉城さん
こんばんは。コメントをありがとうございます。ビクトリア女王は血友病の保因者でドイツの王族アルバート公と結婚して、男4人女5人の子供がいたそうです。英王室にとって幸いだったのは子供のうち長男のエドワード7世には遺伝しなかったことですね。
ビクトリア女王の四男のレオポルドは血友病を発症し31歳で死亡していますし、女の子たちは長女のビクトリア、次女のアリス、五女のベアトリスがそれぞれ血友病の保因者だったために、ドイツやスぺインの王室などにも血友病遺伝子をばらまいてそれぞれ王朝が滅亡(スペインは後で復活)しています。
ロマノフ王朝ニコライ2世皇后はビクトリア女王の次女アリス(ドイツのヘッセン大公と婚姻)の四女だったためやはり保因者でした。
遺伝学の教科書で「X連鎖劣性遺伝病」の好例として家系図つきで例に出されることが多いようです。歴史に遺伝病が直接関わった例でもありますね。
2019/1/8(火) 午後 11:03 kamakuraboy
> 泉城さん
少し詳しくみると、ビクトリア女王の長女ビクトリア(ヴィッキー)は保因者で、ドイツ皇帝フリードリッヒ三世と結婚し、男の子3人のうち一人が血友病を発病。長男は遺伝しなかったためフリードリッヒの死後ヴィルヘルム二世としてプロイセン国王およびドイツ皇帝に即位。第一次大戦を起こしてドイツ王朝は滅亡。
ビクトリア女王の末娘のベアトリスの長女ヴィクトリア・ユージェニー(プリンセス・エナ)はスペイン王アルフォンソ13世に嫁ぎ、生まれた長男と末息子は血友病に罹患していました。スペイン王家は1931年にスペイン第2共和国の成立を宣言し二度目の滅亡。1975年にフランコが死去し二度目の王制復古(スペインは1874年1月に王制が廃止されて共和政(第一共和政)が短期間敷かれていたが、1874年に最初の王制復古が行なわれている)という歴史のようです。
つまり、ロマノフ王朝を入れて3つの王家の滅亡に関わったようです。
2019/1/8(火) 午後 11:29 kamakuraboy
> kamakuraboyさん
こうしてみると遺伝が王家の滅亡に大きくかかわる場合があるのですね。
悲しいドラマですね。
2019/1/8(火) 午後 11:45 泉城
血友病に罹患した本人やその周りの人にとっては、たんに王侯貴族の悲劇というドラマの言葉では片付けられない苦難があったことでしょう。
先にkamakuraboyさんは、対馬藩主宗家38代当主・宗武志に嫁いだ大韓帝国高宗の王女・徳恵が精神病になってしまったことについて書かれていましたね。これは遺伝ではありませんが。政略結婚によって徳恵が精神に支障をきたしたのは必然的であったように思われ、徳恵の身になって考えると、あらためてとても悲しく思います。
2019/1/9(水) 午前 0:07 泉城
> 泉城さん
確かに「悲しいドラマ」でもあるわけですが、「X連鎖劣性遺伝病」は女性本人が罹患者でなくても保因者として次代に遺伝子を残すので、ビクトリア女王のように政治的な強者本人が保因者で自らの娘達をヨーロッパの有力な王家に嫁がせるなどすれば、保因者や罹患者が拡散する運命だったようですね。
それから、なぜそれが可能だったかについて考えてみると、彼女より前の世代には何故か家系図の中に罹患者も保因者もいなかったので本人も全く自覚しておられなかったし、それぞれの保因者の王女たちも自分が保因者だとは知らなかったからこそともいえますね。
2019/1/9(水) 午前 0:39 kamakuraboy
> 泉城さん
政略結婚の例としては女性が梨本方子様のような素晴らしい方で嫁ぎ先の国で様々な福祉活動に尽力し「国母」と慕われるような成功例もあるので一概に悲劇的だとは決めつけられないと思います。徳恵さんの例は双方に悲劇的でしたけれど。
2019/1/9(水) 午前 0:41 kamakuraboy
> kamakuraboyさん
大韓帝国高宗の皇子に嫁いだ梨本方子様は、まだ14歳で外国人と婚約したことを知り、18歳で政略結婚しながらも、激動の時代の中で社会に貢献しながら力強く生きられたと思います。並大抵の人生ではないです。
芯が強い女性だったのですね。
2019/1/9(水) 午前 0:55 泉城
> 泉城さん
調べてみますと、梨本方子様の場合は、ご成婚時、相手の李垠皇子が日本に留学しておられて、結婚生活も日本だったということで、実際に韓国に渡られたのは1963年だったそうですので、事情がだいぶ異なるようです。韓国に渡られてからは昌徳宮に住まわれ、1970年に李垠殿下と死別した後も韓国に残られて福祉活動に尽力なさって、89年に亡くなられたときには韓国で準国葬として執り行われたそうです。
2019/1/9(水) 午前 1:49 kamakuraboy
> kamakuraboyさん
こんにちは
徳恵王女は12歳で来日し19歳で結婚する前にはすでに発症していたようです。政略結婚とはいうものの対馬宗主とは深い愛があったようなので結婚していなければさらに悲惨だったでしょう。
一時は方子様と同じ館にいたこともあったようですので、方子様の夫である李垠皇子が兄にあたり心強く感じられたのではないでしょうか。
それでも病気には勝てません。これも遺伝がかかわっているかもしれませんね。
2019/1/9(水) 午後 1:04 泉城
> 泉城さん
実はそのようですね。それを言ってしまうと、絶望の国「ヘル朝鮮」ということになってしまうのですが。朝鮮の人々の精神疾患の多さと特殊性は米国の疾病分類「DSM-Ⅳ分類」の中にもその名の通り「火病」‘Hwabyung’と定義されており、「火病」は朝鮮人特有の精神疾患として分類。おそらくその延長線上にある「自己破壊、自己放棄」のような形での自殺率の高さは日常耳にする韓国芸能人の自殺の多さからもうかがい知れるところではあります。実は欧米に比べれば自殺は日本人にも結構多いのですが・・
2019/1/9(水) 午後 1:22 kamakuraboy
> 泉城さん
徳恵さんの結婚相手の方は日韓の架け橋となるよう対馬藩主の家系の宗武志(そうたけゆき)という方が選ばれたようですが、発症した後も徳恵さんを終生大事に思われていたようですね。徳恵さんは「悲劇のプリンセス」として韓国で映画のヒロインになっていましたが、何が悲劇なのかという本質の部分で欺瞞があるように感じました。
2019/1/9(水) 午後 1:36 kamakuraboy
> kamakuraboyさん
韓国の映画は必ず自国に都合のいい描き方しかしませんね。欺瞞がパターン化されています。
あのジャッキー・チェンの映画でさえもそれに似た形で描かれているものがあり、おやっと思ったことがあります。
2019/1/9(水) 午後 1:51 泉城
> 泉城さん
私もそう思います。一部の良識ある韓国の方々は、日韓間の歴史的な真実や、自分が正直に思っていることを口にすれば、周囲から土下座させられるような空気があるそうですから、まともな言論の自由はおろか「親日」であると思われることへの恐れまであるようですね。
2019/1/9(水) 午後 6:48 kamakuraboy
2018年1月23日ヤフーブログに投稿した記事より