
ベルリンの壁が崩壊した翌日、たまたまレコーディングでベルリンにいたバレンボイムはベルリンフィルを率いて、東ベルリンの人たちのためにコンサートを行った。静かに心にしみいるモーツァルトのソナタ、ベルリンってこんなに熱く燃えるのかと驚いたベートーヴェンの交響曲第7番。感動的なコンサートだった。
翌1990年6月30日バレンボイムはヴァルトビューネ野外劇場でコンサートを行い、それ以来6月の最終日曜日、ベルリン・フィルはここでコンサートを行い、1年を締めくくる。
森に囲まれた夕方。ピクニック気分で寝ころんだり、なんか飲んだりしながら、それぞれの楽しみ方で音楽を聴く。実に見ていてうらやましくも気持ちのいいコンサート。
で、2003年は小澤征爾指揮、マーカス・ロバーツ・トリオによる「ガーシュウィン・ナイト」。こじゃれた感じの「パリのアメリカ人」に始まり、2曲目の「ラプソディ・イン・ブルー」以降はマーカス・ロバーツの圧倒的な存在感がベルリン・フィルを巻き込み、両者が渾然一体、ノリノリに燃える。それを見て聴いているぼくのなんという幸せなこと。マーカス・ロバーツ・トリオとベルリン・フィル、相手に合わせようというより、自分の最善のものを引き出し合おうという感じのする演奏なので、それは非常にスリリングで、喜びに満ちている。演奏している人たちの顔のなんとすてきなこと。そして聴いている人たちのなんと楽しそうなこと。
会場中を幸せな空気が包み込んでいる。ぜひご覧になって、幸せになって下さい。