レオノーラ アンナ・シャファジンスカヤ
ドン・アルヴァーロ ロバート・ディーン・スミス
ドン・カルロ クリストファー・ロバートソン
プレツィオジッラ 坂本朱
グアルディアーノ神父 ユルキ・コルホーネン
プラ・メリトーネ 晴 雅彦
カラトラーヴァ公爵 妻屋 秀和
東京交響楽団
指揮 井上道義
「こっそり手紙を見てしまおう、どうせ誰も見ていない……いや、自分が見ている!」
格好よさげなセリフなのだが、なんとなく一人で遠くまで行ってしまう演技の片桐仁を思い出してしまった新国立劇場。ご無沙汰してます。
「シリアナ」の感想を書くでももなく、唐突にオペラ。今日は新国立劇場にヴェルディの「運命の力」を見に行ってきました。
ちょっとした失敗が重大な結果を招き、流転する運命、しかも、その背後には秘密にしていた王家の血が………。
オペラはどちらかというと単純なストーリー(王子が王様の嫁さんに恋して破綻した、とか、芸術家を目指す若い奴らが右往左往、とか)をもとに、素敵な音楽を奏でていた方がむいていると思う。「運命の力」のような壮大なストーリーだと、音楽がそれを追いかけているだけでハアハア言っちゃうこともあるし、追いつかずにどうしてそんな話になったのか、解説書を読めばわかるものの、オペラを聴いただけではわからない場合がある。
このオペラが同じヴェルディにしても「椿姫」や「オテロ」、「ファルスタッフ」その他に比べ上演回数が少ないのも、そこらへんに起因しているのではないだろうか。
どうして第4幕でアルヴァーロはラファエル神父になっているんだ?
イタリアオペラに似合わない壮大なストーリーのせいか、音楽もイタリアオペラっぽくないし、また歌も重厚で強くドラマティークな歌唱を求められているのかもしれない。その点では今日主役級を歌った3人、レオノーラ、アルヴァーロ、ドン・カルロは見事だろう。同じ3人でヴァーグナーもいけそうだ。もっとも今回のがヴェルディっぽくないのと同様、ヴァーグナーっぽくない演奏になってしまうかもしれないが。
いや、別段文句を言っているわけではない。指揮も重々しいがドラマティークだったし、木管の健闘が素晴らしかったオーケストラも評価に値する。演出も最初わくわくするような期待がもてたし(だんだん、言わずもがなの尻つぼみになっていったような気がするが)、舞台設定をスペイン市民戦争にもってきたのも斬新だった(その意義がほとんどなかったのが残念だが)。
狂言回し風のメリトーネはやりすぎ、プレツィオジッラはノリが悪すぎ。
おかしいなあ、個別に考えると主役級3人とオーケストラ以外はだめな気がしてくる………。あ、でも、主役級3人がOK、オーケストラもOKとしたら、イタリアオペラとして、まず及第ではなかろうか。
あ、そう考えるとすごく、イタリアオペラっぽい演奏である。