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ああ爆弾

2007年11月21日 14時58分37秒 | 映画
 快作、怪作。
 とにかく不思議な映画。得も言われぬ魅力か魔力か引きつけられる人にはたまらないが、そうじゃない人には思いつきを並べた悪ふざけのような映画だと思う。
 3年ぶりに出所した親分(伊藤雄之助)。
 ところが愛人は奪われ、組は乗っ取られ、妻(越路吹雪)はナンミョーに走ってる。
 刑務所で知り合った爆弾マニア(砂塚秀夫)に爆弾を作ってもらい、乗っ取った男(中谷一郎)に復讐する。
 まあ、いわば普通のストーリーなのだが、そんなものはたいしたことではない。

 刑務所の中、明日出所だというところから狂言の所作で始まる。刑法120条を謡い、舞う。なんだこりゃ。ウエストサイド物語が公開され、日本でもミュージカルがブームになったらしいが、岡本喜八のミュージカルは一筋縄ではいかない。
 伊藤雄之助はもともと歌舞伎の出身なので、所作は見事。細かなところで体を使ったギャグが笑える(妻のナンミョーに合わせて、くいっくいっと布団から起きあがるところなど)。ゴリゴリのあくの強さが好き嫌いを分けるだろう。
 謡で始まった映画はやがてジャズやチャールストンまで加わり、にぎやかに、そしてほぼ唐突に「閉店しようとしたら10円合わなくて困ってしまった銀行レビュー」が幕を開ける。
 爆弾をしかけ終えると、「安宅」の謡が。勧進帳も安宅も、これ好きなんだよなあ。

「笈をおっとり肩にうちかけ、虎の尾を踏み、毒蛇の口をのがれたる心地して、陸奥の国へぞくだりける」

 でもしかけた爆弾は回り回って自分の家に持ち込まれる。なかなかうまくいかないのだ。
 そして2発目の爆弾も失敗。
 終わってみたらなんのことはない。全部吹き飛んじゃった大団円。
 なんなのこれは、この映画は。

 個性派俳優が揃って真面目に馬鹿をやってる。砂塚秀夫なんて、「かーにかに」ってかにかまぼこの印象しかなかったし、中谷一郎もぼくの中では弥七だ。しかし、そういう彼らの演技がまたいいのだ、もちろん伊藤雄之助は出色。
コメント
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