敵の戦術を知る
ジョセフ・G・リチャードソン
筆者はアメリカ合衆国アリゾナ州在住です。
敵の戦術を知っておくことは,イエス・キリストの弟子が主の力と強さにあずかり,行く手に待ち受けている戦いでサタンとサタンに従う者たちを打ち破るための助けになります。
写真/Getty Images
わたしが軍隊にいたときに最初に学んだことの一つは,効果的に戦うために敵について知ることの大切さでした。戦いで敵に出会ったときに裏をかいて打ち破るための計画を立てられるよう,わたしは敵の戦術と戦略の研究に時間を費やしました。
霊的な敵であるサタンとサタンに従う者たちは目に見えないため,彼らがわたしたちを監視し,誘惑しようとしていることを,わたしたちは忘れてしまいがちです。大管長会のジョージ・Q・キャノン管長(1827-1901年)は次のように警告しています。「わたしはこのような結論に達しました。もしわたしたちの目が開かれて周囲の霊の世界が見えたなら,……わたしたちはこれほど無防備かつ不注意にはならず,自分が神の御霊や力を受けているかどうかにこれほど無関心ではいないでしょう。むしろ絶えず目を覚まして,聖なる御霊と聖なる天使たちがわたしたちの周りにいて,わたしたちを強めてあらゆる悪の影響に打ち勝てるようにしてくださいと天の御父に祈り求めるでしょう。」
悪魔の力と能力について理解することは,悪魔と悪魔に従う者たちがわたしたちに与えようとしている潜在的な被害や破壊を認識する助けになります。わたしたちは絶えず気を配り,防御面と攻撃面の戦術を立てることで,誘惑と挑発に屈することを避けなければいけません。
(途中 省略)
1.敵は最も強い相手への攻撃に重点を置く
大管長会のジョージ・A・スミス管長(1817-1875年)はこのことについて説明する際,次のような中国の寓話を語りました。
「一人の旅人が田園地帯を抜けて,繁栄を極めた大きな都にやって来ました。彼はその都を眺めて案内人に言いました。『ここの住民は義にかなった人々に違いない。これほど大きな都だというのに,小さな悪魔が一人しか見当たらない。』
案内人は答えて言いました。『それは間違いです。この都は完全に邪悪,腐敗,退廃,みだらな行いに包まれております。ですから,すべての住民を従わせるのにたった一人の悪魔がいれば,それで十分なのです。』
しばらく行くとでこぼこ道に差しかかりました。見ると,一人の老人が荒々しい形相をした7人の巨大な悪魔に取り巻かれながら,丘の斜面を上ろうとしていました。そこで旅人は言いました。
『何てことだ。あの老人はひどい悪人に違いない。あんなにたくさんの悪魔に取り囲まれているなんて。』
すると案内人が言いました。『国中で義人はあの老人だけなのです。何とかあの老人を正しい道からそらせようと,最も力の強い悪魔が7人で躍起になっているのですが,それができないのです。』」
教会員を道から外れさせることに成功したなら,サタンは神と一度も聖約を交わしたことのない人を道から外れさせるよりも大きな勝利を手にします。七十人名誉会員であるラリー・R・ローレンス長老は次のように教えています。「悪魔はすべての人を標的にしていますが,特に,永遠の幸福を得る見込みの非常に高い人々をねらいます。昇栄への道を歩む人をねたんでいることは明らかです。」
教会の指導者がサタンに負かされるなら,敵はよりいっそう決定的な戦いに勝利します。スペンサー・W・キンボール大管長(1895-1985年)は次のように記しています。「サタンはあらゆる人をねらいますが,特に影響力の強い指導的な立場にある人を熱心に誘惑します。とりわけ,サタンにとって最大の敵になりそうな人々や,多くの人にサタンのとりこにならないよう説くことのできる高い地位にある人々をねらうのです。」
サタンは自分の軍勢を最も強い敵に差し向けると知っておくことは,生涯にわたる戦いに対処する備えをする助けとなります。霊的な敵に対する守りを絶えず固めようという気持ちを奮い立たせてくれます。
また,このことを知っておくことは,友人や家族に福音を分かち合うときの助けにもなります。十二使徒定員会のロナルド・A・ラズバンド長老は次のように述べています。
「わたしたちは人の救いのためにサタンと戦っている最中なのです。戦線はすでにわたしたちの前世から引かれていました。サタンと天の御父の子供たちの3分の1が,御父の昇栄の約束に背を向けました。その時以来,敵の軍勢は御父の計画を選ぶ忠実な者たちに戦いを挑み続けています。」
だれもがサタンに対する自分自身の戦いを経験することになるということを知り,福音を分かち合うとき,わたしたちはそうした戦いを認識し,どのような信条を持つ人たちとも協力してサタンと戦うことに向け,よりよく備えることができます。
2.サタンとその悪の軍勢は霊的に重要な出来事を阻止しようと試みる
聖文に出てくる次のような例について考えてください:
サタンはアダムとエバに大きな圧力をかけ,エデンの園の禁断の実を食べさせました。そうすることで救いの計画がそれ以上進む前に,それを打ち砕くことができると信じていたのです(モーセ4:6-12参照)。
モーセが顔と顔を合わせて神にまみえた直後,「サタンは大声で叫び,地上でわめきたてて」,自分を拝むようモーセに「命じ」ました(モーセ1:19)。
キリストが40日にわたって断食し,天の御父と親しく交わられた後,サタンはキリストを誘惑してその力を誤って使わせようとしました(マタイ4:2-11;ルカ4:1-13参照)。
ジョセフ・スミスは闇に圧倒されましたが,その直後に天の御父とイエス・キリストがジョセフに御姿を現され,地上における福音の回復が始まりました(ジョセフ・スミス—歴史1:15-17参照)。
ほかにも多くの人たちが,聖文の至る箇所で,またいつの時代も,天の御父の計画における自分たちの役割を止めさせようとする抵抗しがたい悪の圧力を受けてきました。
サタンやサタンに従う者たちは,神聖な出来事やその出来事の結果を阻止するために支配権を獲得することに力を注ぎます。そのことを,わたしたちは人生において認識しておくべきです。わたしたちの中でどれだけの人が,人生における霊的な出来事の直前に,誘惑に陥ったり,個人的な試練を経験したり,障害に直面したりしてきたことでしょう。新しい召しを受けたり,神殿に参入する準備をしたり,そのほかの何らかの霊的な出来事に関わったりすることが,すんなり進むことはめったにありません。
ブリガム・ヤング大管長(1801-1877年)はかつて次のように言いました。「祝福されて示現や啓示,大いなる現れを受けたときは注意してください。そのとき,悪魔はあなたの近くにいます。そしてあなたは自分が受けた示現,啓示,現れに見合うだけの誘惑を受けることになるでしょう。」
(以下省略。
末日聖徒イエス・キリスト教会機関誌リアホナ2021年9月号から抜粋ご紹介しました。
赤字・青字は追加しています。)
お読みいただいてありがとうございます。
サタンに負けないように、今日も頑張りましょう。