エンジョイ・ライフ 『人生楽ありゃ、苦もあるさ!』

「なすべきことをなせ、何があろうとも・・・・・」(トルストイ)

日本の憲法 Vol.29 人権制限の合憲性を判断する方法

2017年10月08日 | Weblog


1、比較衡量論:これは、人権を制限する利益とそれを制限せずに維持する利益とを比較して、前者の価値が高いと判断される場合には権利制限を合憲とする違憲審査の方法である。
この比較衡量論を採用した判例に、全逓東京中郵事件(最大判昭和41年10月26日刑集20巻8号901頁)がある。
最高裁はこの判決で「労働基本権を尊重確保する必要と国民生活全体の利益を推進増進する必要とを比較衡量」して、その制限は「合理性の認められる必要最小限のものに」限られると判示した。
最高裁は、多くの判決でこの手法を用いている。
しかし、この問題点として、①比較の基準が不明確で、比較対象の選択が恣意的になる恐れがある。②多くの場合、国家的利益と個々の国民の利益とが比較されることから、秤はどうしても前者に傾く。

2、「二重の基準」論:この理論は、精神的自由が立憲民主政の政治過程にとって不可欠な権利であることを主たる理由として、経済的自由に比べて「優越的な地位」を占めるとし、精神的自由を制約する法律の違憲審査基準は、経済的自由の制限立法について用いられる「合理性の基準」ではなく、より厳格な審査基準が用いられるべきであるとする理論である。
学説は、一般に「二重の基準」論を支持している。
この二重の基準論の表現を用いた最高裁の判例に、薬事法事件(最大判昭和50年4月30日民集29巻4号572頁)がある。
この判決で「職業の自由は、それ以外の憲法の保障する自由、殊にいわゆる精神的自由に比較して公権力による規制の要請が強い」と判示している。
しかし憲法施行後、現在まで最高裁が精神的自由を規制する法律を違憲と判断したことはない。