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日本の憲法 Vol.42 「環境権」は憲法に明文化されるべき時がきている。(大阪国際空港公害訴訟)

2017年10月22日 | Weblog


環境権とは、1960年代に始まる高度経済成長の時代に発生した大気汚染、水質汚染、騒音等の公害問題を契機に、「良い環境を享受し、且つこれを支配する権利」或いは「健康で快適な環境の保全を求める権利」として主張された権利である。
世界的に見ても、地球の温暖化、オゾン層の破壊、森林問題、酸性雨、動植物の絶滅問題等々、様々な環境問題が起きている。そのような中で、昨今、「環境権」を憲法に盛り込もうとする議論が公明党を中心に起きている。この「環境権」が明文化することによって原発問題も大きく進展するものと考える。
ドイツでは、1994年憲法改正をして国家の環境権保護義務を規定している。これは、「将来の世代にために」とする国家目標の形でおいている規定である。また、イタリア、スイス、スペインの国々も憲法に環境保護に関する「国家目標」を書き込んでいる。

我が国では、大阪国際空港公害訴訟において環境権に大きく前進した判決がある。
この裁判は、大阪伊丹空港の騒音に苦しんでいた地域住民が、夜間の離着陸の差止と損害賠償を求めて起こした訴訟である。

2審の大阪高裁では、地域住民の訴えを全面的に認め次のように判示した。(大阪高判昭和50年11月27日判時797号36号)
「人は、平穏裡に健康で快適な生活を享受する利益を有し、それを最大限に保障することは国是であって、少なくとも憲法13条、25条がその指針を示すものと解される。かかる人格的利益の保障された人の地位は、排他的な権利としての人格権として構成されるに値するというべきところ、原告らの主張する人格権も右の趣旨と解されるのであって、本件差止請求の根拠となりうる」とした。

最高裁では、概ね2審の判決を支持して今まで被った地域住民の損害賠償は認めたが、夜間の離着陸については、国営空港の離着陸の差止を求める訴訟は、私法による行政権の介入になるので一民間訴訟の形式で争うことは認められないとして差止請求を却下した。(最大判昭和56年12月16日民集35巻10号1369頁)
しかし、この訴訟を通して、国と住民側の和解が成立して夜9時以降の離着陸をしないようになりました。