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日本の憲法 Vol.32 公務員の政治活動【有罪か無罪かの分れ目】Ⅱ

2017年10月11日 | Weblog


国家公務員法違反事件①
【事件】
被告人は、事件当時、厚生労働省大臣官房統計情報部社会統計課長補佐として勤務する国家公務員であった。日本共産党を支持する目的で、集合住宅の郵便受け32か所に同党の機関紙を投函配布したために国家公務員法及び人事院規則違反で起訴された事件である。

国家公務員法違反事件②
【事件】
被告人は、事件当時、社会保険庁東京社会保険事務所目黒社会保険事務所に年金審査官として勤務していた国家公務員であった。日本共産党を支持する目的で、同党の機関紙や同党を支持する政治的目的を有する文書等を配布したため国家公務員法及び人事院規則違反で起訴された事件である。

両事件とも上告され、平成24年12月7日に最高裁判所第2小法廷で判決が言い渡された。
①刑集第66巻12号1722頁
②刑集第66巻12号1337頁

判決文の中で共通して示されている箇所
「公務員として禁止の対象とされるものは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為に限られ、このようなおそれが認められない政治的行為や本規則が規定する行為類型以外の政治的行為が禁止されるものではないから、その制限は必要やむを得ない限度にとどまり、前記の目的を達成するために必要かつ合理的な範囲のものというべきである。」
「公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものかどうかについて、前記諸般の事情を総合して判断する。」

①の被告人は、部下を直接指揮できる立場にあり、また課内の総合調整役である管理職員等に当たる。このような地位及び職務の内容や権限を持っていた被告人が政党の機関紙の配布をする行為は、勤務外であっても国民全体の奉仕者として政治的中立な姿勢でない。所属する行政組織の職務の遂行の政治的中立性が損なわれるおそれが実質的に生じるものである。よって、本件配布行為は、本件罰則規定の構成要件に該当する。と判示して有罪となった。

②の被告人は、管理職的地位にはなく、その職務の内容や権限もほとんどなく裁量の余地のないものであった。このような公務員によって職務とは全く無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり、公務員による行為と認識し得る態様で行われたものでもないから、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえない。そうすると、本件配布行為は本件罰則規定の構成要件に該当しない。と判示して無罪となった。

☆この最高裁判決から、公務員の政治活動に対する憲法の解釈が、同じ公務員の政治活動、選挙支援活動であっても、それが政治的中立性を損なう行動かどうか、そして、その判断基準としては、公務員としての地位、職務の内容や権限をはじめ多くの事情等を総合判断して決まるようになったといえる。