公職選挙法で逮捕勾留されていた原告X氏は、勾留期間中、喫煙を禁止されたことから精神的肉体的な苦痛を受けたとして、国に対して損害賠償を求めた裁判。
1審、控訴審ともに原告側敗訴。
よって原告X氏は憲法13条に違反しているとして上告をした。
憲法第13条【個人の尊重・幸福追求権・公共の福祉】
「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
判決:上告棄却(原告の敗訴確定) 最大判昭和45年9月24日民集24巻10号1410頁
最高裁は判決文の中で、
「被拘禁者の身体の自由を拘束するだけでなく、右の目的に照らし、必要な限度において、被拘禁者のその他の自由に対し、合理的制限を加えることもやむをえないところである。」
「煙草は生活必需品とまでは断じがたく、ある程度普及率の高い嗜好品にすぎず、喫煙の禁止は、煙草の愛好者に対しては相当の精神的苦痛を感ぜしめるとしても、それが人体に直接障害を与えるものではないのであり、かかる観点よりすれば、喫煙の自由は、憲法13条の保障する基本的人権の一に含まれるとしても、あらゆる時、所において保障されなければならないものではない。」
☆煙草の愛好者がもっとも多かった時代でも、このように喫煙禁止規定は合憲とされた。現在では、世界的に健康被害を及ぼす最たる原因の一つに煙草が挙げられているので、喫煙が禁止される「あらゆる時、所」が拡大されている。