ピアニスト藤木明美のブログ No.2

異色のピアニスト藤木明美が、音楽を通しての日々を綴ります。

ステファン・コンツ&クリストフ・コンツ

2012-11-18 10:56:26 | 日記
11月16日(金)コンツ兄弟(兄ステファン27歳、弟クリストフ24歳)のバイオリンとチェロのデュオコンサートに行きました。

かなっくホールは音響が悪いので、正直のところ期待していなかったのです。

ところが、一曲目のバッハを弾き始めたとたん、私の心身は急変し身を乗り出していました。

何もかもが崇高な音楽。一音一音が深く語りかけてくる。若い演奏家がこんな芸術もたらすことができる。

その現実が私にとっては信じがたい歓喜でした。

バッハ・インベンション2声は、ピアノを弾く人なら誰もが練習する曲です。私も小学生の頃、繰り返し弾き今でも全曲暗譜しています。

それを、バイオリンとチェロで演奏するのを初めて聞きました。

ピアノでは気づかなかった2声の旋律の掛け合いは、言葉では尽くせない美しい会話なのでした。

今、インベンションを練習してる世界の子供達に聞かせてあげたいと思いました。きっとバッハの世界が一瞬で変わるでしょう。

そして次に演奏した、ラベルの「バイオリンとチェロのためのソナタ」

無調・多調の響きが、幻想的に重厚に、そしてエネルギッシュに息を呑むように繰り広げられ、バッハの崇高さとは違うラベルの世界を完全燃焼してくれました。

休憩後、私は一番前の席に移動してかぶりつきで見ました。少しでも彼らの近くに行きたかったのです。

後半はそれぞれのソロ曲。

プログラムにピアニストの名前がなかったので、誰が弾くのだろう?と思っていたら、

ナント、兄弟通しでお互いに伴奏をするではありませんか!

それが、また素晴らしい伴奏なのです。特に兄のステファンは指揮者のようなピアノで

類まれな才能を裏づけする演奏でした。

中でも兄ステファンが演奏したサン・サーンスの「白鳥」は、まるで神が弾いているようで、
隣の熟年の女性と若い女性は、身体を震わせて泣いていました。私も同じ気持ちでした。


こんな、滅多にない芸術が、かなっくホールでチャリティコンサートとしてなんて、

もったいなさ過ぎて、申し訳ないような気持ちで帰ってきました。