イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

私の知らない世界 №3 画材屋 Zecchi

2009年01月21日 00時30分44秒 | イタリアで発見・発掘
どんなに有名な店でも、自分の生活に全く縁もゆかりも無い店、そんな店の1つがここ、Zecchiだった。もちろん有名というのもその筋の人にとって、であって一般的に有名な店では決してない。(と思う)まぁ知る人ぞ、知る。
まぁそんな中でも、ここはあの映画"情熱と冷静のあいだ"にも登場、修復家役の、竹野内豊が自転車で、画材を買いに行くのがこの店(何故か、先日ここを訪れた友人が、彼の写真を見せられた・・・とか)あ~懐かしい、あの映画。あの映画のせ(いやいやお陰)で、日本人で修復の勉強をしにFirenzeに来る人が、格段に増えた、というもの有名な話・・・

さてさて、美術史は勉強していても、実際Materia(材料)の方に接する機会は皆無。友人に買い物を頼まれた時も、喜んで引き受けたというわけです
しかし・・・Sono ignorante.(無知です)聞いたことの有るものばかりだけど、実際どんなものかは???というものばかりだったので、すごく楽しみでした。

ここからが今日の買い物。頼んだ友人に確認してもらう意味で、ここに載せました。
まずこれこれ。Lapislazzuri(ラピスラズリ)

リストの中で一番気になったのがこれ!
鉱石のラピスラズリを砕いたもので、非常に高価。中世からフレスコ画などの青い部分、聖母マリアのマントなどにはこれが使われていた・・・というのは有名な話。
へ~ほ~、これがねぇ

そしてcarminio estratto

ここら辺からはもう???
彼女のリストの説明を引用させていただきます
「コチニールという南米産の甲虫から取れる色素。」
そして大変興味深かったのが、これが戦国武将の陣羽織にも使われていた色、という記述と、「Zuppa Ingleseの赤いソースはこのコチニールで色付けした、Santa Maria Novellaの薬酒、アルケルメスだそうです」という話

気になることは調べないとねぇ・・・
行き当たってのがこれ
「カンパリソーダの赤色の原料は何でしょう?
カイガラムシ科エンジムシ
別名ーコチニール 
学名ーCoccus cacti LINNE」
つまりあのカンパリの赤もこれ。
他にも医薬品、口紅、お菓子、ガム、アイスクリーム、ヨーグルト、飲料水、かまぼこ、ハム、ソーセージなどの着色に、布地・糸などの染色にも使われています。更にシャネルの口紅も・・・

そして陣羽織の謎は

「16世紀に渡日した南蛮人は、コチニールで染色したウール生地を信長、秀吉に献上したのです。コチニールの赤色は猩々(ショウジョウ)の血液で、矢玉を避ける能力が有ると考えられ、武将らに猩々緋としてもてはやされたという」ことです。
こちらのブログに詳しいことが載っていますが、ちょっと怖い・・・
よ~く見たらラベルに「insetto」(虫)って書いてある・・・

そしてLacca rubia

ルビーの赤?と思った私は、おばかさんですかねぇ
rubiaは西洋茜のことなんだそうですね。
なになに「根の色が赤く、主に絹や麻を染めるのに使われる」「現在は多くは、化学合成されたものが使われていて、天然ものを売っているのは本当に珍しいです。良い匂いがするらしいので、楽しみです」・・・嗅いでみよう

確かに、いいにおい
あれ?でもこの匂い、どこかで嗅いだことがある気がする・・・なんかすごく懐かしい匂い

そしてここからは樹脂
樹脂は前回の彫金編で話したかどうかは忘れましたが、私は前回まで勝手にliquido(液体)だと思っていたのですが、固形なんですよねぇ
Copale manila in grani filippine
???何かフィリピンのものだってことは分かりますが???

飴みたい、なんかおいしそう・・・ちがうちがう
なになに、「からまつとかの樹脂が琥珀色になる一歩手前の化石樹脂」だそうです。

そして日本で一番メジャーな樹脂。
Damaer-Batavia in grani Indonesia


そしてこれは今までのものに比べると、格段に値が張る
Mastice di Chio in lacrime Grecia

キオス島のマスチック樹脂、
でも名前の中に↑ギリシャの涙(しずく)ってあるけど
このロマンチックな名前の由来は???と思って調べたけど・・・
来週のギリシャ美術の試験のために、机の周りに散らばっている資料からChio島の位置は確認しました

リストの説明には「歯科治療にも使われる、ガムとして食べれば構内の殺菌にも、腸内の悪い菌をやっつけるのにも有効で、歯磨き粉としても売られている。
昔からワニスには欠かせない樹脂だそうです。ギリシャ人がトルコに支配されていた時、キオスでは育つこの木を、対岸のトルコに持ち帰ったところが育たず、その樹脂の為に、オスマントルコはキオスでのキリスト教を特別に許した、と"世界ふしぎ発見"で言っていました」、とのこと。

この話しを聞いて、実物を見れば、"ギリシャの涙”という名前の由来が、分かる気がしました

このほかにもMichelangeloやRaffaelloが使っていたのと同じ仕様の紙、なども買いましたよ

いやはや、なんとも面白い買い物が出来ました
喜んでくれるかなぁ・・・って自分が楽しんでたりして


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3 コメント

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ありがとうございます! (宮田)
2009-01-21 15:36:58
本当にありがとうございます。お買い物をお願いした宮田です。
フィレンツェ大で美術史を勉強なさってるんですか、すばらしいですね!記事を楽しみに読ませていただきます。

日本ではこれらの画材は流通していなかったり、高額だったりするので、お買い物して頂いて本当にありがたいです。ご足労頂いてありがとうございます。

サンダラックはキャンセルして、マスチックを大事に大事に使おうと思います。

木炭の件、ウィンザー&ニュートンのVINE、細いものと普通のもの、一箱ずつお願いします。

欧米の木炭画の技法を試してみたいのですが、日本では全く流通が無く、紙のほうも、なかなか手に入らないのです。

材料の流通の歴史から美術史を見るのも楽しいものですよね。

本物の茜レーキの匂いがどんなものか本当に楽しみです!
ありがとうございました、木炭のほうもよろしくお願いいたします!
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いえいえ (fontana)
2009-01-21 17:59:53
こんにちは、お元気ですか?
多分私のことは覚えていないでしょうけど、よくT先生の授業で見かけていました。ご無沙汰しています。

こちらこそ、こんな機会でもないと、実際に材料に触れることはないので、大変興味深かったです。これらの材料がどんな作品になるのか、是非報告してくださいね

あとの商品も了解しました。楽しみにしていてくださいね!そうそう、茜レーキの匂いはすごく良かったですよ~
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失礼しました (宮田)
2009-01-22 01:24:05
ペルージャにあのころいらっしゃった方なんですか!
お顔を拝見したらどなたか思い出せるかも存じませんが、お話もしてないのに私のようなあまり特徴の無い人間を覚えてらっしゃるとは、記憶力がよろしいんですねぇ!
心底羨ましいです。
名前と顔を十回くらい見ないと一致しない私です。

お買い物引き受けてくださってありがとうございます!
がんばって良い絵をコツコツ描きますね!
心から楽しみにしています。
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