イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

長崎県美術館

2018年07月07日 10時20分29秒 | 日本の美術館

長崎の一番良かったこと、それは運転する人たちのマナー。
土地土地で運転マナーが異なることは納得できるけど、昨年四国に行った時はひどかった。
関西の人は運転が荒いとは聞いてはいたけど、信号が青に変わるか変わらないかのタイミングで発進したり、急かしたり。
何もしてないのに、クラクションは鳴らすわ、追い越しも激しいわ。
大阪に2年間転勤していた友人曰く「黄色は行け」だと。
関東人には恐ろしくついて行けません。
自分自身そんなに運転は下手な方ではないとは思っているのですが、やはり年々しんどくなっています。
加えて昨今のあおり運転での事故の報道など…
でもやはり足の悪い年寄りも一緒だし、不便な場所へ行くためには車が一番。

で、長崎はどうだったか?というと、これが非常に快適でした。みんなマナーがとても良い。ほとんどの人が法定速度をちょっとオーバーするくらい、よく守っていました。
道路が広くて、横浜にはめったにない4車線とか、ドキドキしてしまいますが、全く問題なし。
駐車料金も安いし、ホントにほっとしました。

さて、浦上天主堂を後にして、本当は「日本26聖人殉教聖地」に行こうかと思っていたのですが、時間がおせおせになってしまい、そちらは翌日行くことにして、先に長崎県美術館に向かいました。
とてもタイミングよく、6月26日の朝日新聞にこちらの美術館のことが出ていて、興味を持ちました。

また昨年長野に行った時、父が行きたいと言っていたのですが、時間の関係で行けなかった「無言館」の特別展をやっているということだったので、今回は、ということになりました。

「戦没画学生慰霊美術館 無言館 祈りの絵」
長野県上田市郊外にある無言館には、日中・太平洋戦争中に志半ばで命を奪われた画学生たちの絵画が展示されていて、そのうちの140点が今回長崎県美術館に貸し出され、展示されています。(7月8日まで)
http://www.nagasaki-museum.jp/exhibition/archives/1005
10代、20代の才能のある若者たちが戦争でその才能を開花させることなく散っていった。
「無言館」とは、そういった若者の作品が何も語らないのではなく、「無言館」の館長がそれらの作品を見た時、作品から語られるメッセージを感じ無言になってしまったことから名付けられた、と会場の出口で流れていたビデオで語られていました。
作品には悲惨な戦争画はなく、戦争の雰囲気など感じさせない、ある意味幸せな作品ばかりで、それがかえって心に響いてきました。

長崎県美術館は新国立競技場の隈研吾の建築でスペイン美術・長崎ゆかりの近代美術の収蔵、長崎水辺の森公園に隣接した場所に2005年開館しました。収蔵数は約7,000点だそうです。



入口

これはチケットを売り場を上から撮影した図。
天井が非常に高く明るいです。
入口入ってすぐの場所にあるミュージアムショップでは日本で唯一プラド美術館のオリジナルグッズが購入できます。
また地元を代表する磁器・波佐見焼で作られたオリジナル食器など、長崎県美術館にしかないアイテムが揃っていました。



運河に囲まれていて非常に涼しそう…実際は蒸し暑くて汗ダラダラでしたが。

屋上にも上がれます。しかし暑いので誰もいません。それなのに警備員さんは巡回してます。お疲れ様です。

景色はこんな感じでした。遠くに女神大橋?すごい名前ですね。

ジャパネットがオフィシャルパートナーなんですね。地元ですもんね。
駐車場はないようですが、提携しているところがすぐそばにあり、チケット売り場で割引してもらえました。
1時間50円…破格の安さです。素晴らしい!!

あと、ここの美術館はカフェもうりのようですね。
夜はこの辺り、ライトアップされて素晴らしい夜景を見られるみたいです。

さて、私が一番興味があるのはコレクションの柱の1つでもあるスペイン美術です。
第2次世界大戦中外交官(実はスパイ)としてスペインに駐在していた須磨彌吉郎が収集した作品です。
1940年から51年のまでの6年間に集められたスペインを中心とする西洋美術コレクションで(若干中国や日本関係のものも含む)カタログによると、1760点(一括記載もあるので実際は1780点余)も有ったそうです。
更にスペイン以前の勤務地で収めた作品も有ったので、総数は2000点近くに上ると考えられています。
戦後A級戦犯に指定された須磨は1946年に帰国、戦犯容疑が晴れたあと約10年に渡るスペイン政府との交渉の末、収集品の一部が返還され「須磨コレクション」と呼ばれた。須磨の手に戻らなかった作品の中には現在スペイン有数の美術館に所蔵されている作品もあるそうです。
この「須磨コレクション」のうち501点が長崎県美術館に所蔵・展示されています。

中でも須磨が最も愛したのはソラーナ(José Gutiérrez Solana)
スペイン美術はセリエAの超有名人くらいしか分からないので、「誰?」という感じですが、須磨は彼の作品に一目ぼれ、10点以上を保有していたそうです。

「軽業師たち」という作品。(作品の詳細は美術館のサイトで)
ゴヤの通称「黒い絵」に通じるようなちょっと不気味な作品です。
この作品はソラーナが蝋人形館に行き、そこで見た人形をモデルに描かれたらしいです。だからなんとなく血が通った人間に見えない…

”彼が好んで取り上げたのは、キリストの受難や「死の舞踏」のような伝統的な主題、あるいは貧困、売春、アルコール中毒、闘牛、カーニヴァルといった同時代の風俗的な主題である。そうした主題を、黒と褐色を基調とした暗鬱な色彩、荒々しいタッチ、厚く盛り上げた絵の具で描き出した彼の作品には、死のイメージと祝祭の雰囲気、不気味さと滑稽さが同居している。”(長崎県美術館、所蔵品検索より)


600年に渡るスペイン美術の変遷が見られる「須磨コレクション」に加え、ピカソやミロ、ダリ、ゴヤの「ロス・カプリチョス」の初版本などが展示されています。
うちの両親はなぜかこの偉大なピカソの作品を見落としていましたので、作品を最後までしっかり見て下さいね。
これはピカソが1941年に描いた作品です。
第2次世界大戦中真っただ中の時代に、ひっくり返った鳩。鳩は平和の象徴ですからやはり反戦のメッセージや戦争の虚しさを訴えた作品なのではないでしょうか?

長崎県美術館
http://www.nagasaki-museum.jp/

 



最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
長崎県美術館 (山科)
2018-07-07 17:48:23
長崎県美術館は、関心のある企画展のときいって、ついでに常設を観るというところでしょうか。
県所有の古美術なんかもここに移管されてるみたいで、南画とか明治大正の洋画とかもあります。
  須磨コレクションを寄贈されたときは、絵画のミスアトリビューションが多く、芸術新潮あたりからさんざん馬鹿にされたものですが、みなおしてみるとみどころのあるものも結構ありますね。スナイデルス風の大きな静物画もあります。

 版画ではゴヤのものを体系的にあつめているようです。
特にボルドー時代の 「妄シリーズ」をみたときはかなり良かった、と思いました。

返信する
そうなんですね。 (fontana)
2018-07-08 16:07:33
山科様
コメントありがとうございます。
そちらは大雨の被害はなかったでしょうか?

そうなんですね。オランダからもたらされたものなども持っているのでしょうか?
あの広さなので、ゴヤも数点見せてくれれば良かったのに、などと勝手なことを思ってしまいました。
返信する

コメントを投稿