イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

湯の峰温泉ー熊野めぐり

2019年09月09日 16時34分21秒 | 日本・史跡

台風直撃を受け、自宅周辺は特に大きな被害は出ませんでしたが、国道16号線上の信号機が数か所が停電して、朝大渋滞していました。

さて、「熊野めぐり」を始める前に、1日目のお宿の話。
そこは日本最古の温泉「湯の峰温泉」のはずれにある、「湯の峰荘」という宿でした。


昔ながらの純和風のお宿です。
食事は地のものばかりでとても美味しかったです。

しかし宿の一番の売りは、なんと言っても温泉!
こちらの宿の温泉は、日本で2番目に古い(ん?一番ではないのか?)温泉とお風呂場の説明書きにありました。
ここ数年で行った温泉でも、ここほど硫黄臭が強く、湯ノ花が浮いている温泉はなかったですね。
源泉90度ということで、私好みのかなり熱めのお湯です。
この温泉水は肌にも良いらしく空のペットボトルを持っていけば頂くことも出来るそうです。(売店で空ペットボトルも売られています。)
だから、化粧水なども有りませんでした。
飲料にもいいそうで、お料理はなにかと温泉水を使ったものが多かったし、冷蔵庫の中にも温泉水が冷えていました。
お客さんも少ないのか、ほぼ貸し切り状態で、ゆっくりできたし、お肌すべすべで本当に気持ちが良かったです。
露天風呂も広々でした。

ただ唯一の難点はエレベーターがないことですね。
足が悪い母には少々厳しかった…
まぁ、古い旅館なので仕方がないことなのでしょうが、改善されると良いですね。

他にも「星が見えるテラス」、なんてものが有って(単なる屋上ですが)、天気の良い夜は降るほどの星が見られるようですが、私たちが泊まった時は、晴れてはいたのですが、どうも雲がかかっていたのか、夏なのでガスっていたのかそれほどの星を見ることは出来ませんでした。
思いのほか外国人(西洋人)が多く宿泊していたのには驚きでした。皆さん古道を歩くようで、朝早く出発していました。

開湯1800年⁉
日本最古の温泉、湯の峰温泉の温泉街はこちら



良い意味で鄙びた温泉街で、乙ですね。
温泉汲み取りも可能です。空のタンクも販売しているようでした。(10リットル100円)

湯筒があり、ここで卵や野菜などを茹でることができます。


釘が出ているので、そこに落ちないように縛り付けます。地元の方がやり方を教えてくれました。
源泉はおよそ90度、卵は10分程で茹で上がります。


ちょっと早めに上げてしまい、半熟でしたが美味しかったです。
生卵は


湯筒から見えるこちらのお店で売られています。「たばこ」ではなく「たまご」です。(笑)


さつま芋も売られていたのですが、そちらは茹で上がるのに1時間ほどかかるというので断念しました。
「つぼ湯」のそばの茶屋でも卵は売られていましたが、こちらのお店の方が若干安かったです。(大きさは比べていませんが)

この湯の峰温泉は、昔熊野本宮大社に参詣する前に、温泉の湯で潔斎、身を清める、湯垢離(ゆごり)場として知られていました。
また、一日に七回色を変える七色の薬湯として、難病とくに皮膚病に効用があり、熊野の神様のご加護と合わせて、医療では治癒できない病人をも治癒すると言われ、最後の望みを託した病人たちが多く訪れていたそうです。

湯の峰温泉が薬湯として有名になったのは、小栗判官と照手姫の物語によるものです。
関西の方では「小栗街道」としても知られる熊野古道、その途中には小栗判官と照手姫の熊野への道中にちなんだ伝説や遺跡が多く残っているそうですが、実は伝説上の人物。ただ、中世以降伝承されてきた説教節の代表作で、浄瑠璃や歌舞伎の題材などにも用いられている。

鞍馬の毘沙門天の申し子として生を受けた二条大納言兼家の嫡子小栗判官は、文武兼備の美青年に成長する。
ある日、鞍馬からの帰り道、深泥ヶ池(菩薩池?)の大蛇が化けた美人の誘惑に負け、契りを結び、子までなしてしまう。
子が生まれることを恐れ、隠れようとした龍女と喧嘩になったため、7日間暴風雨が続き、小栗は罰として都から常陸の国へ流されてしまう。
しかしそんなことでは全然懲りない小栗は、武蔵と相模の国と豪商、横山氏のその美貌で名高い愛娘、照手姫(てるてひめ)と親の許しも得ず恋仲になる。
怒った横山は、小栗を毒殺し、上野原に埋めてします。
片や照手姫はかわいさ余って憎さ100倍、家から追い出し、相模川に流してしまう。
幸い命は取り留めた照手姫ではあったが、最終的に人買いによって美濃の青墓宿に売られ遊女宿の水仕女としてこき使われる。

一方、死んで地獄へ落とされた小栗の方は、閻魔大王の裁きを受けるものの「熊野の湯に入れば元の姿に戻ることができる」との藤沢の遊行上人宛の手紙とともに生き返り、娑婆に戻ってくる。
しかし、生き返った小栗の顔はくずれ、目や耳は閉ざされ、口は利けず、歩くこともできなかった。
墓から蘇った、餓鬼阿弥(餓鬼のようにやせおとろえ、耳鼻も欠け落ちて生気のない者。)のような姿を見たある上人は、閻魔大王の手紙を読み、小栗を車に乗せると胸の木札に「この者を引きひいたは千僧供養、ふた引きひいたは万僧供養」と書いた。
先祖の追善供養と自らの来世の幸せを願う多くの人に引かれた車は、東海道を西へ運ばれ、とうとう美濃の青墓に到着。
そこで引き手がいなくなった車は、餓鬼阿弥が小栗であると知らず照手姫によって5日間かけて関寺(大津)まで引かれる。
仕事に戻らなくてはいけない照手姫は車をそこに残し、その後は山伏たちのおかげでなんとか無事熊野に到着する。

効能豊かな薬湯に浸かった小栗は7日目には目が開き、14日で耳が聞こえ、21日で口が利けるようになる。
そして49日目には元の偉丈夫に戻ることができた。
改心した小栗は、熊野信仰の修行に入る。
するとそこに山人に化身した権現が現れ、開運の金剛杖が与えらる
その後、京に戻った小栗は、天皇より「死からの帰還は珍事である」と称えられ、常陸・駿河・美濃の国を賜ることに。
また、青墓に車を引いてくれた水仕女を訪ね、実は彼女が照手姫であることを知り、再会を喜びあい、一緒になる。
その後小栗は横山を滅ぼし、常陸の国に大きな屋敷を構え、83歳まで生きる。
その死後は一度死んで蘇生する英雄として美濃墨俣の正八幡(八幡神社)に祀られ、照手姫も結びの神として祀られた。
小栗判官関連の遺跡は、この辺りに他にもあるそうです。

しかし、なぜこの小栗判官の伝説が中世より広く伝播したのか、と言いますと、そこには一遍上人が大きく関わっています。
一遍上人…どなた様でしたかね?
一遍上人=踊り念仏でしたっけ?
こういう記憶の仕方が、良くないんですよねぇ…日本の学校教育の弊害です。
一遍上人は時宗の開祖。時宗とは、鎌倉仏教の1つで「南無阿弥陀仏」と念目を唱えることで極楽に行ける…でしたっけ?
あれ?
時宗の総本山、神奈川県藤沢市の清浄光寺(通称遊行寺)って蘇った小栗判官に木札を付けた上人のお寺ではないですか!?
一遍上人は湯の峰温泉の広告塔だったのか?
一遍上人と熊野の関係は非常に深いそうで、この先もご登場願う予定なので、ここではこれくらいで。(参考
参考:熊野古道を歩く、山と渓谷社、Wikipedia


世界遺産にもなっている「つぼ湯」
実はここがライ病(ハンセン病)の治療に効くと考えられていたのは、餓鬼阿弥のような小栗判官を治癒したことに由来し、時宗の僧たちは、社会の底辺で虐げられている庶民や、年病に苦しむ人々を、熊野信仰によって救済しようと考えていたようです。
温泉の近くの自然岩には、「南無阿弥陀仏」と一遍が爪で書いたと言われる石が残っています。(碑は上人の没後76年、1365年に仏心という念仏聖が建立したもの。)

世界遺産で入れる温泉はここだけ!

料金は公衆浴場受付でお支払い。
他にも

温泉発見者の慰霊碑

お寺があります。


温泉が最初に噴出した場所にお寺が立っているそうです。
東光寺、こちらは時宗ではなく、天台宗のお寺です。
本堂しかない小さなお寺ですが、非常に由緒あります。
こちらの本尊、薬師如来は熊野七薬師のお一人で、湯胸薬師と呼ばれています。
湯の峰温泉という名前は、ここに由来しているそうです。

このお寺のご本尊の薬師如来は湯口の湯の花が化石化したもので、高さ約3メートル。
その薬師如来の丁度旨にあたる部分からお湯が出ていたことから、湯胸薬師と呼ばれているそうです。
ご本尊は秘仏で、唯一拝見できるのは、毎年1月8日、湯峰八日薬師祭の本尊薬師如来開扉法要の時だけだそうです。
御朱印頂きました。

 



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2 コメント

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もう一度 (fontana)
2019-09-18 16:55:44
カンサンさん
こちらからは不便な為、今回はホントにメインだけになってしまい、帰って来てから、車で通った串本に長沢芦雪と応挙の作品が有ったことを知り、地団駄踏みました。是非もう一度行きたいです。

カンサンさんは佐渡裕指揮のコンサートに行かれたんですね。今一番聞いてみたい日本人指揮者です。
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紀伊半島 (カンサン)
2019-09-17 20:46:21
fontanaさんへ、紀伊半島、熊野へ行ってらっしゃったんですね。私も数年前に熊野三山に行きました。大阪から近いので、熊野三山以外にも、白浜、谷瀬の吊り橋や高野山、小辺路を歩いて伯母子岳登山や、串本、トルコの軍艦が座礁したのを住民が助けた、ということで、トルコが親日の国になったという歴史がある海岸などに行ったことがあります。湯の峰温泉は通っただけで入っていませんが--。
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