この本を読んだ。
美術品というものは永遠ではなく、人為や天才などによって傷ついた作品、永遠に失われた作品が世界中にあふれている。
そして最新の技術を駆使して、息を吹き返した作品もある。
そんな様々な運命に翻弄された作品の一部を紹介した本作、非常に分かりやすくあっという間に読めてしまったのだが、一言だけ言いたい。
最後の最後、1997年イタリア中部を襲った地震で被害を受けたAssisi(アッシジ)の話題だった。
本文をそのまま引用する。
”イタリアでは残念ながら文化財が破壊されてしまったら、「青ヘルメット部隊」の出番。彼らは美術についての専門的な訓練を積み災害に巻き込まれた美術品を助け出す専門のレスキュー隊で、イタリアの国家の憲兵の一部署として2016年に結成された。主なミッションは災害やテロにおける文化財の保護と、それらの不法取引の防止だ。こうした取り組みにより、アフターサポートを充実させる努力が実践されている。”
この文章、個人的に納得いかなかった。
イタリアには文化財保護に特化した警察官がいることは、5月に大統領官邸で行われていた彼らの活動に特化した展覧会に行った記事で既に紹介済。(こちら)
ただ彼らが組織されたのは、1969年、今年は丁度50周年。
それなのに、この文章を読んだらまるで2016年に発足したみたい!!(私の読解力が劣っていたらすみません)
あくまでも「青ヘルメット」はComando Carabinieri Tutela Patrimonio Culturale(文化保護特別警察)の中に新設された特別な部署のこと。
と言いながら、実は全然知らなかったので、調べましたよ。
イタリア語では、「caschi blu della cultura」つまり「文化の青いヘルメット」
これのこと。(写真拝借)
2015年ユネスコ第38回総会で、ユネスコ事務局長だったIrina Bokovaの立ち上げたキャンペーン“Unesco’s Global Coalition – Unite4Heritage”において、文化遺産の保護の強化と戦争など各種の脅威から文化遺産を守ることが全てのユネスコ加盟国に呼びかけられた。
それを受けてイタリアでは翌2016年、ユネスコの保護の元に Ministero per i Beni e le Attività Culturali ed il Turismo(文化財・文化活動・観光省)及び Ministero degli Affari Esteri(外務省)Cooperazione Internazionale del Ministero della Difesa(防衛庁の国際協力部門)、Ministero dell’Istruzione, dell’Università e della Ricerca(教育・大学・研究省)の協力で特別な機関を作ることになった。
文化保護特別警察の中でも特に文化遺産と環境の保護救護、返還、保護に特化したエキスパートで構成されたこの特別機関は2015年6月よって作られ、イタリアでは「Caschi Blu della Cultura」(文化の青ヘルメット)と呼ばれている。
最後の最後のわずか2ページで、イタリアの文化財保護について語れと言う方が無理だが、なんとも後味が悪く、正直これなら載せなきゃいいのに、とまで思ってしまった。(他の部分に関しては特に文句なし。)
もう1つ、彼らは「残念ながら文化財が破壊されてしまったら」行動を起こしているだけではない。
アフターケアーだけ、みたいな書き方も納得いかない!!
またイタリアではひとたび地震などの災害がおこれば、彼らのようなエキスパートだけでなく、ボランティアが大活躍。
ボランティアの活躍無しに、イタリアの文化財保護は語れない、と言っても過言ではない。
まぁイタリアの文化財保護の話だけで本1冊になっちゃうから、ここら辺にしときますけど。
参考:第38回ユネスコ総会
https://www.onuitalia.com/2019/03/31/compie-50-anni-il-comando-carabinieri-tutela-patrimonio-culturale/
https://cultureforpeace.blogspot.com/2016/02/caschi-blu-della-cultura-cosa-sono-e.html
20年くらい前ですが、奈良県の室生寺の五重塔も周りにある木々が強風で倒れて大きな被害が出ました。
日本はこれから、台風、強風などの対策が必要ですね。
毎年どこかで「想定外」の大規模な災害が起きているので、やはり対策の見直しが急務ですよね。