≪手を動かさねばっ!≫

日常で手を使うことや思ったこと。染織やお菓子作りがメインでしたが、病を得て休んでいます。最近は音楽ネタが多し。

スタジオピオティータへ<共鳴する宇宙>を聴きに行った。

2025-01-06 19:53:30 | 音楽

昨年末に聴きに行った。
<共鳴する宇宙>というタイトルからではどんな演奏なのか想像できない。
ちらしによると、作曲家 夏田昌和氏、チェンバロ 桒形亜樹子氏、ピアノ 大須賀かおり氏 による演奏会だ。
チェンバロとピアノが一緒に演奏されるなんて聞いたことない。びっくりだ!

会場にはピアノとチェンバロがぎゅっと並べてある。
スタジオピオティータのHP によると、「1931年製のNYスタインウェイB型ピアノ(1994年リビルド)と、1989年に堀栄蔵氏が製作したタスカンモデルの二段鍵盤チェンバロ(ダブルトランスポーズ)」だそうだ。
今までわたしが観に行ったときは、チェンバロは部屋の反対側に置いてあった。部屋の両端にピアノとチェンバロがあったのだ。
今回、チェンバロをピアノ側に移動させたんだな。


最初にスタジオピオティータの西澤世子氏のあいさつがあった。
このスタジオのチェンバロとピアノは約8年間、一度も一緒に音を鳴らしたことがなかったそうだ。3年くらいまえから寂しいなあと思うようになったらしい。それで共演するこの企画をたてたのだそうだ。
スタジオピオティータが夏田昌和氏に委嘱した作品が初演されるというのが今回の目玉だ。

まずチェンバロとピアノでフランソワ・クープラン「ショワジーのミュゼット」(クラヴサン曲集第3巻第15オルドルより)が演奏された。
これは面白い!
ピアノとチェンバロの音色のコントラストがくっきりありつつも混ざりあったりして、複雑な奥行きがある。

次は桒形氏が フランソワ・クープラン「双子、アトランタ」(クラヴサン曲集第2巻第12オルドルより)について話してから、チェンバロで演奏した。
疾走するアタランテの話が興味深かった。ギリシャ神話に出てくる女狩人だ。大和和紀『あい色神話』を思い出すわたし、古い . ... 。
そして、夏田氏が氏の作品「夏思いの午後と気晴らしの体操」について話してから、桒形氏がチェンバロで演奏した。

演者が大須賀氏にかわり、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト「「ああ、お母さん、あなたに申しましょう」による12の変奏曲」(きらきら星変奏曲)と氏の関わりについて話して、ピアノで演奏した。
そして、夏田氏が氏の作品「ザ・デイ・アフター・イエスタデイ」について話してから、大須賀氏がピアノで演奏した。夏田氏が、がんばってください、と声を掛けたのが印象に残ったが、肘で弾いた箇所があったりして、そのことだったのだろうかと思った。

まず古い時代の曲をチェンバロとピアノで演奏したあと、古い時代の作品と現代の夏田氏の作品をチェンバロとピアノそれぞれで演奏したわけだ。
新旧、ずいぶん違うような気がするし、でも実は夏田氏は古いものをちゃんと継承している。

そして、最後に目玉の夏田氏のチェンバロとピアノのための作品の初演だ。
夏田昌和「チェンバロとピアノのための組曲」チェンバロとピアノ
I Allegro ritmico(快速なテンポで、リズミカルに)
II Andante sostenuto(緩やかに進むテンポで、音をよく保ちながら)
III Alegretto scherzando(やや快速なテンポで、諧謔的に)
IV Moderato con moto(中庸なテンポで、動きをもって)
ピアノのフレーズをチェンバロが追いかけたり、逆のパターンも少しあったりした。ピアノが低音で和音を弾いて上の方でチェンバロが動くのがわたしは一番グッときた。
この組曲は、また機会があったら聴きたいな。

チェンバロとピアノが一緒に演奏されていると、違いがよく分かるなあ、と思った。
ピアノは腕の重さを指に乗せるけど、チェンバロは乗せない。チェンバロは弾いているときに上体が動かないというのがよく分かった。

アンコールは、夏田氏が大須賀氏と一緒にピアノを、桒形氏がチェンバロを弾いてモーツァルトの作品を演奏した。
不勉強なので、曲名は分からない。


ちらしとプログラム。





 
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チェンバロがグレードアップした。

2025-01-03 21:25:22 | 音楽

2022年2月に アトラスチェンバロを手に入れて からわたしの音楽生活が変わった。
自宅のリビングに置いてあって、蓋を開ければすぐ弾けるというのはいいよ。
それから松本に行って、色々教わった。
そうなると、うーん、アトラスチェンバロだと不満があるんだよなあ。

と思っていたところ、春山チェンバロの出物があったので、手に入れた。アトラスのよりずいぶん大きい。
バーズアイメープルの突板(つきいた)がきれいな楽器だ。色が明るくなったせいか、大きくなったわりに圧迫感は増えなかった。
ローズも飾りが全然なくて、素っ気ない。でも、べったり塗ってあって木目の見えない外側より、こういう方がわたしは好きだ。

ところで写真右下、チェンバロ下にある小さい鍵盤楽器は、かつて作った ポルタティーフオルガン

2段鍵盤、8ft ×2、4ft、F1~G6 👍  このスペックが嬉しい。
ナチュラルキーはローズウッドです。



ローズのアップ。HARUYAMA ロゴがこちらにも入っている。



👇️バーズアイメープルの突板、きれいでしょ。
輪郭に平行なラインはチーク。見る角度で濃く見えたり薄く見えたりするリボン杢がデザインを締めている。
夫に軽く磨いて塗り直してもらいました。木工家、ありがたし。
しかし経年で突板の弱点が表れた。突板は丸太を桂剥きして薄い板にするのだが、細かい割れが出来てしまう。
チョコレートのかたまりをスプーンでこそいで クルクルと丸まったコポーを作ると、ヒビがいっぱい入っている。あんな感じ。え、分かりにくい?
まあそんな感じのヒビが見える。新しい頃は目立たなかったんだろうなあ。ヒビも味、ということにしよう。



ジャックレールと譜面台を外したところ。



👇️アップ。
上から 下鍵盤の8ft、4ft、上鍵盤の8ft、4ftの弦のチューニングピン。
ジャックのささっているレジスターはアルミ製。ジャックの頭がストローみたいなのが変わっている。
なんかメカメカしくってカッコいい。
まあね、この見た目でも分かるが、ヒストリカルなチェンバロではない。アルミや合成樹脂は昔はなかったよねえ。



ジャックを取り出したところ。
右から 下鍵盤の8ft、4ft、上鍵盤の8ft のジャック。華奢で軽い。
下のフォーク状のパーツは木製だが、なんの木なのか夫に聞いても分からない。すごく目の詰んだ木だそうで、スネークウッド?とか言っている。



ジャックの頭部のアップ。
弦を撥くプレクトラムとダンパーの距離が近くて、プレクトラムを削るときに下に入れるヴォイシングブロックが入らない。代わりに薄い板状のものを挟みこむが、保持しにくい。これはちょっと困る。

こういうジャックについて『チェンバロ クラヴィコード 関係用語集』に記述があった。
134p. 「1950年代、Neupert(ノイペルト)製にはのOKジャックという名称の「本体が円筒」のジャックが使われていた。」
OKジャックなんですって。


『チェンバロ クラヴィコード 関係用語集』
図版が多い。



キーを押したときに戻ろうとする力が弱い、という点は、アトラスチェンバロに比べるとヒストリカル寄りな弾き具合だと思う。
このチェンバロでフィッツウィリアム・バージナル・ブックの曲など弾いている。

でもフィッツウィリアム・バージナル・ブックからではなくて、有名なメヌエットを わたしがこのチェンバロで弾いた動画のリンクを貼る。
かつてはJ.S.バッハ作といわれたけれど、現在はChristian Petzold作だと判明した、Suite de Clavecinという組曲に含まれているメヌエットです。




 
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桒形亜樹子 フランソワ・クープラン 第3オルドル全曲演奏、ゲスト井上玲 リサイタル に行った。

2024-12-28 14:50:57 | 音楽

2カ月以上まえのネタです、すみません。
桒形亜樹子(くわがたあきこ)氏によるフランソワ・クープラン『クラヴサン曲集』全曲演奏シリーズ第3弾 を聴きにスタジオ・ピオティータへ行った。
第3オルドルは短めなので、リコーダーの井上玲氏をゲストに他の曲の演奏もある、というのが楽しみだ。

会場に入ったら、椅子の上にリコーダーが3本置いてあった。

桒形氏と井上氏が会場にあらわれる。
2人でフランソワ・クープラン『クラヴサン曲集』第3巻14オルドルの内の「恋の夜鳴鶯」を演奏した。
ナイチンゲールの鳴き声を模しているそうで、それはチェンバロよりリコーダーで演奏する方が似るよなあ。
なかなか賑やかな鳥なようだ。

そのあと井上氏が退場して、桒形氏による第3オルドル全曲演奏だ。
演奏した桒形氏による解説がnoteにあるので、そのリンクを貼る。
F.クープラン「クラヴサン曲集」プログラムノート第3オルドル その1
F.クープラン「クラヴサン曲集」プログラムノート 第3オルドル その2
暗い曲と明るい曲のコントラストが激しいオルドルだった。


その後、井上氏が再登場。
桒形氏と一緒に フランソワ・クープラン『王宮のコンセール第4番』を演奏した。

桒形氏によると、『王宮のコンセール』は晩年のルイ14世をなぐさめるために書かれたらしい。
楽器の指定がなく、色々な楽器で演奏できるらしい。
わたしは古楽を聴き始めて浅く、主にチェンバロ独奏やオルガン独奏ばかり聴いていたので、コンセールは新鮮で面白かった。
晩年の王の慰めなだけあって、聴いていて疲れる感じがない。いい感じ。発注者の希望に応えたプロの仕事だなあ、と思いました。
気に入った。第1~3番も聴いてみよう。

小中学校の音楽でおなじみのリコーダーだけど、上手な演奏はこんなに違うんだなあ。
井上氏は1998年大阪府生まれの若手だ。 井上氏のHP
尺八のように?首を振る動作があるのが面白かった。


もう終わったけれど、このリサイタルの約2ヶ月後にも桒形氏と井上氏とヴィオラ・ダ・ガンバの森川麻子氏を加えて神戸と東京でコンサートがあったそうだ。
そちらはちょっと行けなかった。日程とか予算とか理由はあるけど、一番の負け惜しみは、会場が広い、ってことにしておこう。


ちらし





 
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トン・コープマン チェンバロリサイタル に行った。

2024-12-14 17:44:58 | 音楽

高崎芸術劇場にトン・コープマンが来る、というので聴きに行った。
高崎芸術劇場にはパイプオルガンはなかったはずだから、チェンバロです。音楽ホールが会場です。
高崎芸術劇場には大きい方から大ホール、音楽ホール、スタジオシアターと3つの劇場があるのだが、今まで行ったことがあるのはスタジオシアターだけだったので、初めて入る音楽ホールに興味津々だ。
ちなみにスタジオシアターで観たライブは、この5月のイリアーヌ・イリアス去年4月のリチャード・ボナ です。

せっかくリサイタルを観に来たのに、またしてもデジカメを忘れてしまった。わたしのスマホのレンズはダメだし。
そうしたら夫が自分のスマホを貸してくれたので、それで写真を撮りました。
うーん、広角はやっぱり歪む。すみません、脳内で補正してください。


入口脇のポスターが液晶ディスプレイなのはスタジオシアターといっしょ。スタジオシアターにはディスプレイが3つ並んでいるけど。



高崎芸術劇場をざっくり説明してみよう。直方体の建物を縦に2つに分けると片方が大劇場、もう片方を今度は水平に2つに分けると下がスタジオシアター、上が音楽ホールという位置関係になる。
スタジオシアターの入口は1階、音楽ホールの入り口は4階で、大劇場の入り口が2階なのは高崎駅の改札から出てそのままペデストリアンデッキを歩いて来れるから。
先ほどの直方体を切り分けた説明だと、スタジオシアターや音楽ホールのある側には吹き抜けがあって、エスカレーターが各階をつないでいる。
これは3階からの眺め👇
大通りに面した壁とその両側の壁の途中までは全面ガラスで、見通しがよい。吹き抜けの向こうの ガラス張りで中が見通せる部屋はスタジオで、向かって右のスタジオではチューバを構えた人たちが座っていた。セクション練習かな?グループレッスン?

高崎芸術劇場フロアマップ  見取り図って楽しいな。


ガラス張りなのはそこだけではない。2階より上は大劇場側と広いガラスで仕切られていて、3階から大劇場を見るとこんな感じ👇
これはアレだ、そう、国立新美術館 っぽい! 立体的な大きい構造物は迫力があって非日常感がすごいね。高崎芸術劇場は垂直が守られている分 安心感があるけど。
いつかこの大劇場で何か観てみたいものだ。



3階、壁がガラス張りではなくちゃんとした壁になる奥の方には 劇場のオフィスと群馬交響楽団のオフィスがあるのだが、その手前のスペースにはこんなオブジェが鎮座している。 深井隆「逃れゆく思念ー遥けし時ー」樟・金箔
逃れゆく思念シリーズの作品はいくつも存在するようだ。

オブジェの向こうに見えるのは群響のオフィス。左の壁に光っているのは液晶ディスプレイ。チケット販売中の公演のお知らせとかが光っている。


液晶ディスプレイポスターを右に行って角を曲がり込むと、壁に写真がいくつも掛けてある。
群響の公演の写真かな? 壁の反対側は群響オフィスだしな。

ん? ステージ向かって右手前に置いてある明るい色の木の物体がヒジョーに気になる!

アップ。 知っているぞ!
オンド・マルトノ用のスピーカーだ。左がメタリックスピーカー、右がパルムスピーカー。右に見切れているのがプリンシパルスピーカーだろう。

オンド・マルトノは 浜松市楽器博物館国立音楽大学楽器学資料館 で見たからね。


写真の左下をアップ。 一見すると背の低いアップライトピアノっぽいが、透けてるし。これはチェレスタ? 左の鍵盤楽器?はもっと背が低いな。何だろう?



キャプション。 メシアンのトゥーランガリラ交響曲なんですって。
軽く検索したら、群馬交響楽団の第588回定期演奏会が2023年5月27日に大劇場で行われたらしい。
やはり、オンド・マルトノだ。 この公演の検索結果には出なかったが、トゥーランガリラ交響曲で検索したらチェレスタも使われる曲のようだ。しかし、左の楽器が何か分からない。どなたかご存知な方はぜひ教えて下さいませ。



やっと会場の音楽ホールに入る。
本格的な音楽専用、コンサートやリサイタルに適した天井の高いシューボックス型というのはこれか。以前 御喜美江氏のアコーディオン・リサイタルを観た 浜離宮朝日ホールもそうだな。
しかしブレた写真で、ホントにすみません。
ステージには黒が基調で開いた大屋根の内側が金屏風みたいに印象的なチェンバロがある。



何人もステージまえに押しかけ写真を撮る中に加わってチェンバロの写真を撮る。
脚がねじねじだ。
ん? なんか歪んでいるような . ... 。



アップ。譜面台の上に楽譜がわんさと積まれている。
普通、きれいな厚紙を二つ折りにしてその内側に楽譜を貼りつけたりファイルに綴じたりしているのに、こんなコピーをペラペラのまま何枚も、というのは、まるで練習時みたいだ。ちょっと愉快な気分。
それで、鍵盤の下のラインと脚が支えている水平のラインをよく見てほしい。右下の黒い部分が左下より厚い。



横から。前から2本目の脚のあたりは底板が側面の板にすぐ付いているが、一番前の鍵盤の脚や 前から4本目の一番後ろの脚のあたりは 底板と側面の板の間の黒いスペースが広くなっている。



ちょいと下から覗き込む👇 あー、やっぱり盛っているね。
ギターでいうところの順反りみたいな感じ? 正面から見ても歪んでいるから捩じれた歪み方だな。

古い楽器なので歪んじゃったのかな?
と思ったのだが、プログラムに書いてありました。 ヴィレム・クルスベルヘン作フレミッシュ(ユトレヒト、1982年)
そんなに古くないね。トン・コープマン氏の弟子の鈴木雅明氏のものだそうだ。気候の違うオランダから日本持ってきて歪んじゃったのだろうか。
検索をかけたら、2021年の動画ではまだすき間をうめていなかったな。黒い板を挟んでいる。それもどうよ!? 黒くしただけマシなのか?
An excerpt from Masaaki Suzuki and Masato Suzuki Duo Recital 4:50前後
どこの工房が盛ったんだろう?



やっとリサイタルについて。
ヤン・ピーテルスゾーン・スヴェーリンク『大公の舞踏会』で華々しく始まる。
その次はしっとりとJ.P.スヴェーリンク『涙のパヴァーヌ』。
そしてW.バード『ファンタジア イ短調』。(この時代にイ短調という概念はハテナ?だが、こうプログラムにあった。)
この選曲は好みだぞ。イギリスものならわたしはなんでもいいんじゃないか⁉
次は A.ヴァレンテ『ナポリ風ガリアルダ』はじゃかじゃかと陽気だ。
P.ブルーナ『聖母のための連祷によるティエント ト短調』。
ここら辺までの古さがわたしは好みだ。
J.S.バッハや H.パーセル、G.F.ヘンデルが続いて前半は終わり。

休憩を挟んで後半だ。
L.クープラン『シャコンヌ ハ短調』。なんというか、フランス物の情緒はどこへ行った? と思いました。
それから J.S.バッハ、J.デュフリ、A.フォルクレ、そしてG.F.ヘンデル『組曲第5番(クラヴサン組曲第1巻)ホ長調 HWV430』で終わり。

時間が短かったせいか、アンコールが3曲もあった。
J.S.バッハ『フランス組曲第5番よりサラバンド BWV816』、D.ブクステフーデ『フーガハ長調 BuxWV174』、フレスコバルディ『ベルガマスカ』でした。

コープマン氏は御年80歳だそうだが、演奏はやたらと元気がよかった。エネルギッシュでした。
なんというか、プレクトラム折れない!? と思う箇所もあった。弟子の楽器だからいいのか?
音楽ホールは素敵な空間だったけれど、チェンバロにはちょっと広すぎかもなあ、と思った。
カプラーを入れて8ft.を2つは鳴らして、4ft.もよく入れていた。最前列左だったので見えたのだ。
客がいっぱい入って音が吸収されやすい状態で 8ft.1本を聴かすというのは無理なんだろうな。
そういう意味では、元気いっぱいな演奏のコープマン氏は合っているかもな。

ホールから出たら、ロビーに人だかり。
コープマン氏がCDにサインをしていた。
海外に出て人前で演奏してさらにサインもして、なんと元気な80歳であることよ。

考えたら、わたしは桒形亜樹子氏以外のチェンバロの生演奏を聴くのはこのコープマン氏が初めてだった。
なかなかのカルチャーショックでした。


チラシとプログラム





 
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品川聖 ヴィオラ・ダ・ガンバ演奏会 に行った。

2024-11-22 21:23:10 | 音楽

大法寺に行った あとは松本だ。
演奏会の会場は 日本キリスト教団 松本教会 だ。建物の見た目からして歴史のある教会なのが分かるが、HPを見ると集合離散や移転があって、逆にいつ設立されたのか一読では分からない。一番古い日付は1876年7月ですって。


手書きの看板。手作り感があふれている。



開いた扉から入り、靴を脱いで上がる。アントレ編集部の品川夫人からお礼を言われる。アントレ編集部全面バックアップなようだ。
右へ行き階段を上がって、礼拝室に入る。
そういえば、明治村の聖ヨハネ教会堂 も礼拝をおこなう広い部屋は2階だったな。
奥にパイプオルガンがある。白くてかわいい。
そして、いつでも始められるように、という感じにヴィオラ・ダ・ガンバが椅子に立てかけてある。弓は譜面台の上だ。



アップ。
こうしてしげしげ眺めると、チェロとはずいぶん違うことに気づく。
弦が多くて指板は幅広だし、指板にフレットがあるし、撫で肩だし、表板の孔の形が違うし、指板はチェロほど高く傾斜していない。チェロよりほっそりしている。ヘッドも渦巻きじゃなくて顔が彫ってある。
ヴィオラ・ダ・ガンバのフレットはギターのような金属線が嵌め込まれているタイプではなく、ガットを巻いて縛ってある。リュートなんかもそうだ。
それで、この写真だと分かりにくいが、上から2本目のフレットがなんだか右肩上がりに傾いているんである。チューニングと関係があるのかなあ?
巻いただけのフレットなので下手に触ると動いてしまうらしいく、楽器を持つときにネックを持たない、というのを読んだことがあるのだが、品川氏もフレットのないネックの下の方を掴んでいた。

2年ほどまえに 浜松市楽器博物館に行ってそのあと色々と調べた ので、バイオリン属とヴィオール属の違いは一応知っているつもりではある。
市民階級が力を持ってきて、いっぺんに大勢に聴かせるように音楽を聴く環境が変化した。そのため大きい音が出る楽器が使われるようになった。
そうやって追いやられたのがヴィオール属のヴィオラ・ダ・ガンバであり、チェンバロもそうだ。バイオリン自体もネックのつく角度が変わった。ストラディバリウスのバイオリンもみなモダンバイオリンに改造されている。


チラシ。アントレ のバックナンバーを送ってもらった中に入っていた。これがきっかけで聴きに行ったんです。
3年ほどまえに ポルタティーフオルガンを作ろう として 作り方の載っている号を送ってもらったのが最初なのだが、その後チェンバロを手に入れレッスンを受けるようになって知りたいことが出てきた。ソルミゼーションについてとか読みたい記事があるのに気づいて 送ってもらったのだ。



やっと演奏会のはなしをば。
品川聖氏が礼拝室に入ってきて椅子に座り、楽譜を広げて演奏を始めた。
チェロほどビブラートをかけないのが素直な感じで、わたしは気に入った。
指板のフレットは7本しかなくて、それより高い音はフレットのないところをチェロのように押さえていた。
ギターのようにコードを押さえたり下の旋律を同時に演奏しているのが面白かった。

曲が終わってシャイな様子で話しはじめた。
最近聴きに行ったライブ等の出演者はもっと積極的に聴衆に話しかける人たちばかりだったので、新鮮だ。
ヴィオラ・ダ・ガンバはスペインのギターに似た ビウエラ という楽器が祖先と考えられているそうだ。

えっ? 弓で弾く レベック とかから直接進化してきたわけではないのか !?
ネックのある弦楽器で胴がくびれているのは弓で弾くときに当たらないように、だと思っていたのだが、それを指で撥く用に転用して もう弓は胴に当たらないからくびれていなくてもいい筈なのにくびれたままなのがビウエラとかギターとか思っていたのだが、もう一回反転してヴィオラ・ダ・ガンバになるって、ふしぎだー。まあ、形が音色に出るから、弓を使わなくなったからといってくびれをなくすわけにはいかないかな。
とか思ったが、ビウエラという言葉は範囲がひろくて、指で撥くものも プレクトラムで撥くものも 弓で擦るものもあるそうなので、一旦弓から離れたわけではなさそうだ。
ちょっと調べてみたら、レベックは丸ごとの木を削り出して作ってあり表板を貼り付けている構造をしているのに対し、フィドルは表板・側板・裏板が別々の部品として作ってあるそうだ。 私家版楽器事典 フィドル と レベック むかしむかしのヨーロッパの擦弦楽器
それならヴィオラ・ダ・ガンバはレベックの系統ではないな。

フレットがあったりコードを押さえたりするところは本当にギターっぽい。

話を戻す。
この演奏会のテーマはチラシにあるように「時空を超えて」で、おおよそ200年にわたってヨーロッパの様々な地域でヴィオラ・ダ・ガンバために書かれたソロ曲が古い順から演奏された。
品川氏のHP にチラシが表裏とも掲載されていて、裏面には曲目が載っているのでリンクを貼る。

ディエゴ・オルティスから始まる。ヴィオラ・ダ・ガンバのソロ曲の最初期のものだそうだ。
ヴィオラ・ダ・ガンバの生演奏、というより生ではないヴィオラ・ダ・ガンバの演奏もほとんど聴いたことがなかったので、ほええ、と聴いてしまう。
これはチェロとはぜんぜん違う!
その次はトバイアス・ヒューム。1579-1645、イギリスの職業軍人でガンバ奏者だ。
ヒュームの「ガンバの魂」と「兵士のガリアルド」を品川氏は演奏した。
わたしはここのところずっとチェンバロでフィッツウィリアム・ヴァージナル・ブックというイギリスのルネサンス末期~バロック初期の曲集を練習していて、ガリアルドなんかも弾いているので、親近感がわく。
カルロス・ハッカルト、ゲオルク・フィリップ・テレマンと続いて前半終了。
前後半を通して聞いたことのある作曲家はテレマンだけでした . ... 。 古楽の世界も奥深いよ、勉強不足だよ。


休憩のときに弓の写真も撮った。チェロの弓とはなんだか違う。
スクリューとフロッグ、ヘッドも形や素材が違う。


後半はフランスのドゥマシ、マラン・マレと続く。
品川氏いわく、ガンバの良さが最も出るのはこのあたりのフランスのバロックだそうだ。このあたりが一番好きなんだろうなあ。
そのあとはカール・フリードリヒ・アーベルで、最後に20世紀のパブロ・カザルスがカタロニア民謡をチェロ用に編曲した「鳥の歌」で終わった。

スペインで始まりスペインで終わるプログラムだね。ルネサンスからバロック、と移り変わる曲想も楽しめた。
ヴィオラ・ダ・ガンバはチェロとはずいぶん違う、ということがよく分かった。つやつやとビブラートをかけまくるチェロは、わたしはちょっと疲れるんです。古楽のほうが古典派よりもわたしは好きだ。
もっというと、バロックよりもルネサンス、それもバロックの香りがほんのりするルネサンスも終わりの方が大好き。同好の方、どうぞお声がけくださいませ。

アンコールはドゥマシでした。


パイプオルガン。
鍵盤は1段、ストップも7つ。シンプルだ。どんな音色なのだろうか。



パイプオルガンの反対側にはリードオルガンがあった。
ストップもいくつもある立派なものだ。浜松市楽器博物館とか明治村とかにあるものに似ている。こちらも聴いてみたいな。




演奏会が終わって教会を出る。
松本市立開智小学校の向こうに旧開智学校が見える。
さっさと車に乗ってしまったが、旧開智学校も国宝なんだよなあ。寄ればよかったよなあ、とあとで思ったが、演奏会の日はまだ修理中だったようだ。
次は見学したいな





 
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