「美しく、遠くへ飛ぶ」
飛距離と姿勢の美しさを競うのがスキージャンプです。もしかすると、地球上で一番競技時間の短いスポーツかも知れません。たった数秒間のドラマです(ただ、残念なことに、オリンピックの競技全体の時間は長いのですが)。
スキージャンプはメダル獲得を期待されている選手が多いのですが、その中でも、史上単独最多の計8回も冬季オリンピックに出場している「レジェンド」こと葛西紀明選手は日本だけでなく、世界中からも注目されています。
1972年の札幌オリンピック70m級(現在のノーマルヒル)ジャンプで、笠谷幸生さん、金野昭次さん、青地清二さんの日本人3選手が表彰台を独占した事から、冬季オリンピックやワールドカップなどで日本のスキージャンプ陣を「日の丸飛行隊」と呼ぶように、なったことから日本人にはなじみのある競技の一つになっています。
私は札幌オリンピックのスキージャンプ競技会場になった大倉山ジャンプ競技場と長野オリンピックのスキージャンプ競技会場になった白馬ジャンプ競技場に行ったことがありますが、斜度約35度の絶壁を時速90km/h下り降りるというジャンプ台は下から見上げただけでも、足がすくんでしまうような、異圧感がありました。もし、「1万円上げるから跳んで」と言われても、私は断ると思います。ただ、1万5千円だったら、ちょっと考えるかもしれませんが。
ここで、ジャンプ競技のおさらいをしておきましょう。
まず、オリンピックでのスキージャンプには「ノーマルヒル」「ラージヒル」「団体」の3競技があります。今回のピョンチャン・オリンピックでは、ノーマルヒルのヒルサイズは108m、ラージヒルのヒルサイズは140mとなっています。これはジャンプ台の大きさや形状、助走距離の長さ、K点までの距離などによって、ノーマルヒル(一般にK点90m。かつての70m級)やラージヒル(一般にK点120m。かつての90m級)となっています。
男子は、「ノーマルヒル」「ラージヒル」の両方を飛びますが、女子は身体的な負担の大きさを考慮し「ノーマルヒル」のみです。なお、ワールドカップは、男子はラージヒルとフライングヒル(K点は180m超え。日本に台は存在しない)が開催されており、ノーマルヒルは開催されていません。女子は年1~3試合程度行われるラージヒルを除いてすべてノーマルヒルで行われています。
ちなみに、高梨沙羅選手が銅メダルを獲得した女子スキージャンプがオリンピック種目に正式採用されたのは、実は前回2014年のソチ・オリンピックからです。
さて、最初に書いたようにスキージャンプは単純に「飛距離」だけでなく、飛行や着地の姿勢の美しさなどの「飛型」も採点されます。5人の審判員が、20点満点の持ち点から減点方式で点数を出し、最高得点と最低得点を除いた、3人の得点を合計した「飛型点」と「飛距離点」を合算して順位に反映します。選手は2回ずつ試技を行い、その合計点で最終的な順位が決まります。
そして、その飛距離や飛形でよく聞かれる「K点」や「テレマーク」ですが、昔はK点の意味は「これ以上飛ぶと危険」という目印とともに、大ジャンプ時の「目安」ともされていました。ところが、近年は選手たちの飛行技術やウエア、スキー板などの性能の向上で飛距離が出るようになったため、K点は「これ以上飛ぶと危険」の目印から「通過点」へと変化し、K点は「飛距離点の基準距離」と意味が変わりました。K点とはドイツ語で建築基準点を意味するKonstruktionspunkt(英: construction point)に由来しています。これは、この間、林修先生がTVで言っていました。そして、K点を基準に1mごとにポイントが加算されていきます。
次に着地の際の「テレマーク」ですが、名前の由来は、ノルウェーのテレマーク地方のジャンパーたちが、「手を左右に地面と平行に広げ、足を前後に開いて着地をする」ポーズをとったことからだと言われています。理想的なテレマークは、「前後にスキー靴1足分、左右に1足分(肩幅くらい)足を開いた形」だと言われているそうで、トップ選手になると、飛び出した直後に自分がどの地点まで飛んでいけるかが感覚的にわかるそうです。そのため、審判員がいる場所を考えて、テレマークの際にどれくらい足を広げて着地すると審判員から美しく見えるかを計算しながら滑空することもあるそうです。
スキージャンプは、斜度約35度のアプローチ(助走路)から時速90km/h以上のスピードで踏み切り、大空へと飛び出していきます。飛び出すというよりも飛び降りるという感じです。
着地まで約5秒。
トップ選手の場合、最高時速は約120km/hにも達するそうです。四方八方から吹き付ける風圧に耐えながら姿勢を保ち、1mでも先を目指していきます。
数秒間で日々の努力の結果が問われるスキージャンプ。
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