【侍従長・入江相政の随筆「古典逍遥」より の巻】
■阿蘇中岳は噴く
今年の植樹祭は、熊本県。
行幸のお供で、
ひさしぶりに熊本へいくことになった。
熊本にいくのは、今度が四度目。
二十八年に北九州に大きな水害があった。
当時ご差遺の侍従として行くことになったが、
関門トンネルは水びたしで通れず、
飛行機で行くほかなかった。
これが私の飛行機の乗りはじめ。
ところが木星号が墜落したばかりの時だったので、
どうしてそんな無茶なことをするかと、
いわれたものだった。
今から三十年ほどしか経っていないのに、
あの頃はまだそんなものだった。
今度は、東亜国内航空。
羽田を離陸してしばらくは下が見えたが、
間もなく全く雲の中、なんにも見えない。
今日は陛下も乗っていらっしゃるのだから、
まあ「雲の上人」ということにしておこう。
もく星号墜落事故 1952(昭和27)年4月、羽田発―大阪―福岡行きの日本航空マーチン2-0-2型機が伊豆大島に墜落。乗員乗客全員37人が死亡。原因不明。
◇
わたしは飛行機に、この数年ほど乗っていない。
歳を取るごと、怖くなる一方である。
離着陸の時、胸がざわざわする。
乗り物が特に好きというワケではなかったが、
47都道府県のうち、これまで46まで足を踏み入れた。
あとひとつ、なぜか群馬だけは列車通過しただけ。
東京勤務の際、行かなかったのが不思議である。
でも、しばらく残しておこうとも思う。
行くとしたら、もちろん陸路ではあるが。
青春18きっぷの旅にしたい。
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昭和24年の有名な話 長崎・雲仙岳に登頂された際、三谷隆信侍従長が「あれが阿蘇山でございます」 → 昭和天皇「あ、そう」。 「恐れながら、それはダジャレでございますか」と尋ねたとの記録はない。