第五十九首
やすらはで 寝なましものを さ夜更けて
かたぶくまでの 月を見しかな
赤染衛門
(生没年不詳) 藤原道長の妻・倫子に仕え、その娘・一条天皇中宮彰子にも仕えた。大江匡衡の妻となり、良妻賢母の誉れ高い。
部位 恋 出典 後拾遺集
主題
来ると約束して来なかった男への恨み言
歌意
(あなたがおいでになる気配がなければ)ためらわずに寝てしまいましたものを。あなたをお待ちしていたばかりに西の空に沈んでいく月までも見てしまいました。
「やすらはで」は、躊躇しないで。良経の「やすらはでねなん物かは山のはにいさよふ月を花にまちつつ」など、好んで本歌取の歌がよまれた。
長和元年(1012)夫没後は尼となる。
歌は和泉式部と併称される。家集に『赤染衛門集』。『拾遺集』以下に93首入集。中古三十六歌仙の一。『栄華物語』本篇の作者として有力。