第十五首
君がため 春の野に出でて 若菜つむ
わが衣手に 雪はふりつつ
光孝天皇
(830-887) 仁明天皇の皇子。陽成天皇廃位の後、五十五歳で即位した。温厚な性格で学問を好んだ。
部位 四季(春) 出典 古今集
主題
雪に降られながら若菜を摘む、相手へのまごころ
歌意
あなたに差し上げるために、春の野原に出て若菜を摘んでいる。その私の着物の袖に雪がしきりに降りかかっている。
天皇が、まだ時康親王と申しあげていたころ、ある人に若菜を贈られるにつけて、添えられた歌であるが、雪に降られながらつんだのだというところに、まごころがこもっているのである。春の若菜を食することは、邪気を払うものとされていて、この歌の、いかにもすがすがしい春のしらべがふさわしいものとなっている。
仁明天皇第三皇子。元慶八年、藤原基経に迎えられて即位。そのため天皇は基経を経て政治を奏上させ、それが関白のはじめとなった。