God save our gracious Queen
Long live our noble Queen
God save the Queen
Send her victorious,
Happy and glorious,
Long to reign over us,
God save the Queen.
実に平明な英文で,これなら私でも訳せそうだ,と思わせるものがある。
現代の英国国歌"God save the Queen"の一番の歌詞である。
尤も,かの国には我が国のような国歌・国旗法などというものは存在せず,歌い継がれてきた曲がこうして英連邦を代表する曲となったということのようだ。
初めて歌われたのは,1745年9月28日。
ロンドンのドルリー・レーン王立劇場においてオペラの閉演後に初めて公式の場で演奏され,それ以降爆発的に広まったという。
私は,トーマス・アーンの作曲と思っていたが,アーンは編曲者であり,曲の起源はイングランドではなくジャコバイトやフランスから来たものでは,という説もあり,よく分かっていないようだ。
はっきり言って,17世紀に活躍したヘンリー・パーセル(1659?-95)以降,英国には著名な作曲家が現れず,19世紀後半から20世紀前半に活躍したサー・エドワード・エルガー(1857-1934)までは空白の時代とも言えるのであるが,エルガーと同時代人であるサー・ヘンリー・ウッド(1869-1944)の活躍によって,ロンドン名物とも言うべき「ヘンリー・ウッド・プロムナード・コンサート(プロムス)」が毎年開催され,廉価なコンサートとしてロンドン市民に定着するに至った。
この「プロムス」は今尚続いているのだが,聴衆が熱狂的なことでもとりわけ有名である。
個人的にはBBC音源の60年代プロムスのCDを何枚か手に入れたが,いずれも燃焼度の高い演奏ばかりであった。
そして,そのプロムスが最高潮に達するのが9月の「ラストナイト」である。
この"Last Night of Proms"は,最後の曲目が決まっている。
エルガー:威風堂々第1番
ウッド作曲/ウィルソン編曲:イギリスの海の歌による幻想曲
アーン作曲/ルール・ブリタニカ
パリー作曲/エルガー編曲:エルサレム
エルガー編曲/イギリス国歌
多少順番が違うこともあるかもしれないが,この5曲が必ず演奏される。
第2国歌ともいうべき威風堂々は"Land of Hope and Glory"の歌詞が付き,大合唱となるし,ネルソン提督を失いながらもフランス・スペイン連合艦隊を破ったトラファルガー沖海戦100周年記念で作曲された「海の歌による幻想曲」も多くの愛国歌(ヘンデルの「見よ勇者は帰りぬ」-得賞歌も入っている)から構成され,ソプラノ独唱+大合唱の「ルール・ブリタニカ」へ続く。
そしてラスト2曲が,「エルサレム」と「英国国歌」なのである。
管弦楽はBBC交響楽団,合唱はBBCシンフォニックコーラスとBBCシンガース。
それに,数千の聴衆の熱狂的な合唱とパフォーマンスが加わる。
因みに,国王が男の際は当然のことながら,QueenがKingと歌われる。
そして,英国のロックバンド,クィーンのライブでは,やはりこの曲が最後に演奏されるらしい。
残念ながら2003年のラストナイトのCDは視聴できないので,DVDを入手するか近いうちにNHK-BSで深夜に放送されるライブを見るしかないのだが,とにかくナショナリズム極まれりという感じで圧倒される(こちらのmp3のオーケストレーションは秀逸だが,エルガーの編曲とは異なっていた。それにしても米英の国歌って何故ドラムロールで始まるのだろう・・・)。
あまりに国粋的なので辟易する面もなきにしもあらずだが,正直言って何の臆面もなく国歌や愛国歌の数々をいい年こいて熱唱している英国人が羨ましくもある。
我が国には大勢で唱和して,精神を鼓舞するような曲は見当たらない。
これも民族性,ということか。
我が国の国旗と国歌に関してどうこう言うつもりは全く無いが,やはり大勢で熱狂して唱和する歌は羨ましいと思う。
アメリカの「星条旗」にしても,フランスの「ラ・マルセイエーズ」にしても,大勢で歌うと様になるし,前者には「星条旗を永遠なれ」,「America the Beautiful」,「ヤンキー・ドゥートル」,「リパブリック賛歌」,後者には「マールボロ行進曲」といった数々の第2国歌や愛国歌があるのも羨ましい。
今更,我が国でも後世に歌い継がれる曲を作りましょう,といってもなぁ・・・。
「夕焼け小焼け」,「春の小川」,「富士山」,「もみじ」,「とんび」,「冬げしき」,「かりがわたる」,「おぼろ月夜」等々ですが,元々が西洋音楽の手法で,我が国独特の音楽を,という意図で作られたものばかりですから,これだけで1エントリ書けそうです。
歌い継がれてきた曲,というのは実に大事なものと思いますが,だから即国歌に,というわけにも行かないでしょう・・・。