昭和建築学会


昭和の建築物や路上にあるオブジェなどを中心にご紹介します。

昭和建築学会 第17回 小ネタ集

2013年12月10日 | 建築

1.郵便住宅

 

普通の住宅のコンクリート塀に、

「郵便切手類・印紙」

と書かれたおなじみの看板がかかっていた。

 

ヤクルトジョアの広告すら載っている。

 

 

看板自体がそんなに新しいものではない。

しかし、針金で頑丈にくくりつけられているのだ。

 

この看板のある家は、私には覚えがある。

もう何十年もの昔には、ここはたばこ屋さんだったのである。

子ども向けの駄菓子も売っていた。

私も駄菓子を買った覚えがある。

 

 

2.いきなり木造塀

 


住宅街を歩いていたら、ふと目につくものがあった。

 

住宅の塀なのであるが、

コンクリート塀が続いていて、

部分的に木の板が塀に使われているのである。

 

 

木の板塀は、すごく几帳面に丁寧に作られているし、

コンクリート塀から続く瓦まで頂いている。

 

普通は木の板塀には瓦はつけませんよ。

 

これは変だ。

しかも木の板塀の下の方には、

波形ビニールトタンも顔を覗かせている。

 

 

謎解きは簡単であった。

昔は、木の板塀のあった方から、

車の出し入れをしていたもようである。

 

今は車に乗る人もなく、

ただ、縄とシースルーのビニールシート(?)で囲まれた、

一種のトマソンとなっているのである。

 

 

3.純粋階段

 

ひょんなことから、純粋階段を見つけた。

路上をうろうろと歩いていて、

ありそうでなかなか見つからないトマソンが、

純粋階段である。

 

見た目は汚いのであるが、

これは刈った草が放置されているからである。

 

純粋階段として、人の手厚い保護が入っていると見てよかろう。

 

 

 

こちら側からも、向こう側からも、

川に降りられるようになっているのである。

だとして、なんか役に立つ階段なのだろうか。

 

きれいじゃない小川が流れているばかりである。

 

一望できる写真をお見せしたい。

 

 

この川は昔はきれいな川だったのだろう。

階段を下りきったところに、

コンクリートの洗い場らしきものがあり、川の水に接することができる。

 

おそらく、収穫した野菜等を洗っていたに違いない。

 

洗い場であるコンクリートの洗い場が、変に新しそうなのが気になるが……。

 

約40年ほど前には、汚い泥の川だった覚えがある。

そのころはとてもじゃないが野菜を洗ったりはできなかったはず。

 

この新しそうな洗い場のコンクリートは、

いったい何なのだろうかと考えこんでしまった。

 

とにかく、放置はされているが、草が刈られて乾いている。

今もなお、手入れされているのが関心をそそる。

 

 

4.建築中建造物

 

もうすっかりおなじみとなってしまったが、

フジテレビのお台場社屋を見ていまだに独特の印象を受ける。

 

 

これを見て、近代的な……、とは、言いがたい。

遊び心に溢れているという方がしっくり来るからである。

 

中央の丸い部分の中はどうなっているのか、誰か知りませんか?

こんなところに会議室があったら楽しいな。

 

素朴に思うことは、

「このビルはいつ完成するのだろう」

ということ。

 

いまだに工事中の印象を持ってしまうのである。

そういう遊びに満ちた建築なのである。

 

ところでです。

わたしも「目下建築中」と見えてしまう建物を発見したのです。

 

 

建物の外部を走る鉄骨が生々しい。

 

なぜこの鉄骨の作る直方体通りに、内部を作らなかったのであろうか?

見当がつかない。

 

やはり、

「現在なお建築中」

に見えてしまう建物である。

 

 

上の階の方には、原爆タイプがあるのにも注意しなければいけない。

 

フジテレビの社屋は、

金がかかってるんだろうなとか、

ぜいたくな建て方だなと思ってしまう。

 

この建造物は、あり合わせの建材で作ったのかなとか、

とりあえず間に合えばというふうに作ったのかなとか、

かなり貧乏な背景が見えてきてしまうのであった。

 


昭和建築学会 第16回 路地のとも子さん

2013年12月10日 | 建築

市道沿いに、

こんなぶっきらぼうな看板が立っていた。

 

写っている自転車は私の愛車である。

 

 

 

矢印の指す方を見てみた。こんな感じ。

 

  

いちおう、センターラインもある道をまたいで、

矢印はとも子美容室を指しているのである。

 

なんか危ない矢印ですね。

矢印の方へ行ってみましょう。

 

 

 

店入口の矢印の先じゃないようです。

 

 

 

 

姿があらわになってくるとも子さん。

 

 

  

 

「美」の文字が欠けているんですけど……。

 

 

 

こういうアールのある窓、

円形の窓を見ると、

遊郭を想像してしまいます。

 

 

 

 

 

 

今日はお休みのようでした。

 

美容院にこのようなくるくる回るのがついたのは、

いつからなのでしょう?

 

 

庇がわりのブルーのシートの曲線が美しい。

このシートも、波形トタンと同じく、貧乏から生まれた大発明だったのではないでしょうか?

左の方、シートの端が「v」となっているのがお茶目ですね。

 

かといって、

ハンガーをかけているのはよくありません。

 

この路地を突っ切って、先ほどの店入口の店を見に行きました。

店全体の写真は撮りましたがちょっとアップするのは控えます。

  

 

ここは駅からわりと近いのですが、

「御休憩」というのはありませんでした。

マッサージの人は来てくれる旅館なのでしょうか?

 

再び裏手に回ります。

 

 

おっと、原爆タイプ風の建築を見落とすところでした。

 

 

突き当たったところに、

無用庇のきれいな物件が……。

庇は郵便受けやメーターを雨から守っているとも考えられます。

 

この波形トタンの建物の横には、きれいな木造建築がありました。

 

 

昔の、くみ取り式の和式便所のくみ取り口、

及び便器のある部分を隠したところです。

くみ取り口の部分、

凸型のブロックをうまく木がかんでいるようで、美しいです。

そのほかのところの木目も美しいな……。

 

同じ建物なのですが、このくみ取り口の右の方がこんなふうになってました。

 

 

雨樋の水が一箇所に集められるのはいいのですが、

地上から50㎝ほどの高さで外へと放出される仕組みになってるんです。

 

大雨のときはたいへんだろうなと心配してしまいました。

 

 

 


昭和建築学会 第15回 小ネタ集

2013年12月10日 | 建築

1.無用庇ではなく極端に大きすぎる庇

 

また、存在だけを主張するオブジェを見つけた。

しかし、日常の役には立っているから、

トマソンではない。

 

 

 

 

大庇の正体は、

元看板。

 

この家は、桜井のババアの家で、

その昔、食料品や雑貨をかつて売っていた。

 

大庇は、

バルコニーの一部ですらなく、

庇にすれば大きすぎる。

 

電灯も備わっていて、

パラボラアンテナがちょこんと顔を見せているのがかわいい。

 

桜井のババアよ、

昔のことだ、水に流してやる。

 

 

2.無用門+1

 

 

この無用門には、住人の几帳面さをうかがえる。

 

木板で3カ所を固定してあり、

さらに伸び縮みする扉(というのか?)を閉ざし、

針金で補強してある。

 

 

 

一見すると、

戸に棒が立てかけてあるように見えるのだが、

これが無用門。

 

棒の右端が宙に浮いている(?)のがおわかりだろうか? 

棒の両端を釘で扉に打ちつけてあるのである。

 

硝子も柄が統一されていなく、

この貧乏さ、なかなかの美しさを放っている。

 

 

 

 

これは無用門ではない。

わたしがしばしば取り上げる「無用看板」である。

ここは酒屋さんなのだが、

広告主が見つからないのだろうか、

ずっと白塗りのままである。

無用庇や夜間用のライトまでぴかぴかになってついているというのに、

泣かせる物件である。

 

関係ないのであるが、

わたしは若いころ教員をしていた。(教科は数学)。

チョークの粉を浴びるのが嫌いで、白衣を着て授業をしていた。

白衣の背中部分30㎝×30㎝をどこか大手塾・予備校が買ってくれないかなと、まじめに職員室で言っていたら、周囲の同僚にすっごくバカにされた。

 

3.柵

先ずは写真4枚をご覧いただきたい。

 

        

 

空き地を立派なフェンスで囲っているのであるが、

ここまでする必要があるのだろうか?

 

無断駐車防止なら、

ブロック何個かですむ話である。

 

子どもが入ってきて騒ぐということもない。

彼方に児童公園があり、子どもがキャッチボールをしていた。

 

整地をし、月極駐車場とすれば、

土地の税金代を捻出できる。

 

うちはビンボーじゃないもんね、

とでもいいたいのだろうか?

 

とにかく、ただの空き地にしてみれば、

かなり過保護に保護されているのだ。

 

草は刈った方がいいと思うよ。

 

4.バカフリー

 

 

 

 

新しくできた道路と歩道なのだが、

交差点でこんなに広く歩道のスペースをとる必要があるのだろうか?

それに、世界では日本と台湾にしかないと言われている点字ブロックが、煩雑すぎる。

 

点字ブロックに関しては一言、

言いたいことがある。

ドットじゃなく〓の形になっているほうのブロックで、

わたしは自転車でスリップしてしまい、

その日、買ったばかり¥3990のユニクロのジーンズを一瞬にして引き裂かれてしまったのである。

 

あわや、わたし自身が障がい者になるところだった。

この道を自転車で走るときは、

車道を走ることにしている。

 

 

 


昭和建築学会 第14回 アートってなんだ!?

2013年12月10日 | 建築

わたしの住んでいるのは、

田舎の新興住宅街です。

 

以前から、気になっていた物件があります。

なんというか、田舎町の新興住宅街で、

トンがってるデザイン

の住宅があるのです。

 

しかも、1軒だけでなく、似たようなのが何軒か……。

 

そういうデザインが、

少し昔の流行だったのかはどうかはしりません。

建ったのは少なくともバブル以降のことだと思います。

 

いくつか写真をご覧いただきましょう。

 

 

 

光線の具合でこの建物はグレイかネイビーに見えるけど、

実際は真っ黒です。

書道で使う墨の色です。

 

材質もわたしの大好きな波形トタンではありません(笑)。

木でできています。

 

 

 

 

これは、かなり気を遣って水平にとった写真。

屋根の部分が左へと傾いていて、出入口のあたりの部分は垂直ではありません。

 

この建築物は波形トタンでできているわけではありませんが、

そのエスプリを十分吸収しているようなところがあるのでしょうか。

波形トタンマニアのわたしにはたまりませんなあ。

 

見た目、印象悪かったけど、つきあってみたらいい奴だった、

みたいな、中高生の体験記風の体験をわたしはしました(笑)。

 

ところで、屋根と出入口部分の傾斜の具合は微妙なものなので、

図で示したいと思います。

図のような傾斜がついてます。

 

 

 

 

 

 

出入口部分の写真です。

やっぱりここが玄関なのでしょうねえ。

 

ちょっと言いづらいですけど、

本来なら垂直と水平で構成されているべき部分が傾いてます。

 

 

 

 

全体の色は、こんな色です。本当に真っ黒。

 

 

どうしてトンがって見えたのかというと、

真っ黒で、窓らしきものがないということでしょうか。

 

それと玄関も日本家屋に比べれば、

本当に目立たないところについています。

 

建物の裏側に回ってみる前に、周囲を見ておきましょう。

 

 

 

 

右隣に建っている住宅です。

この黒い建物よりあとからできたものですが、

お隣さんのデザインを意識しているようです。

 

が、デザインとしてはスマートさに欠けます。

 

 

 

 

黒い建物の左隣は、

工務店風のぼろいコンクリート建築。

 

しゃれーた住宅の横がこんなぼろい建物……。

 

 

 

 

向かいは、

かつてはたばこもお酒も扱っていた小さな食料品店の跡。

 

階段が普通じゃないですね。

左半分が一段欠けています。

この左側のところには、

昔お酒の自販機があったのです。

 

こういう貧乏を見るとき、

しゃれた真っ黒のこの住宅は、

ずいぶんまわりを気にしていないように見えます。

悪くいえば、空気の読めない場違いなやつというか……。

 

さて、今回の物件の裏側へとまいりましょう。

 

 

 

 

わりとおとなしいデザインです。

 

ここで気がつきました。

表の方は西にあたり、

西日がきついんです。

 

だから、最初から意図して窓のない建物にしたのでしょう。

その分窓が東向きのこちらへ移住してきている……。

 

奇抜な窓を想像してましたが、やはり無駄のない四角い窓で、

普通のアルミサッシですね。

結露しているあたり、ちょっと貧乏くさささえ感じます。

 

ところでもう一つ気をつけて欲しいところが……、

 

手前が耕されたばかりの畑なのです。

 

このあたりは、新興住宅地でもともと田畑が多く、

今もなお田畑も残っています。

 

たとえば、田んぼの畦のある道を、

パンクスが歩いていたとしたら……、

誰でもどんびくし、

笑いをこらえられないでしょう。

 

そういう喩えが言えます。

 

 

 

 

右隣の家の裏側。ベランダあたりにがらくたが……。

しかも、干魚を干すネットまでぶら下がっています。

住人が釣り好きなんでしょうか?

 

ヨドコウの物置もありますね。

 

このあたり、 

しゃれた表とは裏腹に、

壊滅的なダメージを与えています。

 

結論を言うと、

一見、独特なデザインの住宅に見えても、

まわりの貧乏くささを変えねば、

その住宅は逆にすごく貧乏に見られてしまうのです。

TPOを考えないのは日本人の悪いところです。

 

鹿威のついた庭に、洗濯物を干して平気な顔でいる、

 

というような(うちのことです)、

致命的な貧乏から逃れられないのです。


昭和建築学会 第13回 K寺院の真相

2013年12月10日 | 建築

田舎のお寺に行ってきた。

山門を入るときれいな本堂がすぐ目に入る。

こんな感じ……

 

          

 

堂々たる鬼瓦。ちなみに、先代、先々代の鬼瓦が境内に展示してあった。

 

  

 

本堂横の、なんといったらいいのかな(?)、雨樋の水がたまるようにしたところ、

なんて繊細なデザインなんでしょう。

 

 

鐘もお見事なものです。

 

 

 しかし、こういうのでは、あまのじゃくなわたしは満足できないのでした。

(関係ないけど、この下り、体験記風のSM小説っぽくないですか?(笑))

 

門の前の階段のところをまず批評しましょう。

  

 

このように、中央に階段がありますね。

ごり押しでもう2枚お見せします。

 

   

 

わたしが注目したいのは、

階段ではなく両端のスロープなのです。

 

もし、パラリンピックに出られるほどのアスリートならば、

車いすでこのスロープを駆け上がることができるでしょう。

そうでなくとも、電動の車いすで慎重に登ろうとすれば登れるかもしれません。

 

しかし、中央に障害物として四角い出っ張りのブロックがはり付けてあったり、

スロープの最後にわずかな段差があったり、

いや、もともとスロープの角度が急になっていたりと、

「障がい者に厳しいスロープ」

なのです。

 

お寺は、障がい者を差別はしません。

ただ、元々は修業の場所なのです。

 

たとえ、車いすを使う障がい者であっても例外ではありません。

山門をくぐるときからもう、

修業が始まっているのです。

 

さて、次は、K寺院の外塀を見てみましょう。

 

この2枚は、

街路から山門へ至る、数メートルのところの外塀です。

 

   

 

こういうのもアールって呼んでもいいのでしょうか。

素朴にきれいだな……。

 

外塀に屋根瓦はついていますが、

白壁でなくコンクリートセメントなのが、

残念です。

 

そこまで、資金繰りがよくはなかったのでしょう。

 

さて、もう2枚お見せします。

  

  

 

もはや、沿道に面したところには、

瓦屋根さえないのです。

 

多分、廃物利用なんでしょうけど、

外壁の角っこには鬼瓦風の瓦が乗っかってます。

 

これらの写真ではちょっと確認しづらいので、

もう1枚。

 

 

どうでしょう。コンクリートの屋根が単に斜になっているだけではありません。

お寺さんの本堂等の屋根のごとく、すこーし反っているのです。

 

貧しき中にも美を求めるお寺さんならではの、

矜恃の美学とでもいったらいいのでしょうか?

 

あと少し、気になったところを2つ。

 

 

外塀の排水口がかなり痛んでます。

 

 

 

外塀に、こんなにも致命的なひび割れと剥落が……。

 

 

檀家の皆さん、お布施を張り込んでくださいね。わたしからもお願いします。