チック・コリアの音に初めて接したのは自分が25歳の頃でした。
あれは初夏の土曜日の昼下がり。
土曜日は勤め先から寄り道をするでもなく独身寮へ帰り
1週間分の洗濯をして部屋の掃除をするのが決まりです。
その日は御堂筋裏にあったワルツ堂というレコード屋さんで
チック・コリアが前年にリリースしたLPを買いました。
ルーティーン・ワークが終わって
多分、部屋の机にもたれてタバコを吸ったんじゃないかと思います。
開け放った窓からはカーテン越しに生ぬるい風が吹き込んで
いたような記憶があります。
やおらLPレコードを取り出してターンテーブルに乗せて針を落としました。
イントロのピアノが16小節ほど何の曲かも分からないソロを奏でます。
と!
いきなり、鋭い小刻みなシンバルの音とともに
ベースがうなり始めました。
そうしたリズムを押しつぶすような速度と圧力でピアノが
疾走し始めました。
言葉で言うとそんな感じだったんです。
今までのJazzピアノとは全く違うスピード感と♪の連なりでした。
なんていうか…
腕の産毛が逆立ち
さぶイボが出まくるような興奮を覚えました。
それまでもJazzしか聴いていませんでしたが
これで、いよいよこのジャンルの音楽に
縛られて行く運命の一枚であったと言えます。
あれから51年・・・
突然に、まるで彼の音楽が瞬間的に消えていくように
チック・コリアはこの世を去りました。
死因はrare form of Canserと書かれていましたから
希少性癌とでも言うものなんでしょうか。
フロリダの自宅から旅だったようです。
先月もyoutubeで最新の彼の映像を見たばかり。
あのスピード感たっぷりのピアノが強烈なブレーキで
一瞬にストップしたかのようでした。
このレコード・ジャケットの写真を撮ることになろうとは
思いもよりませんでしたが
どうしても一枚撮りたくて今朝方写しました。
RIP チック
弟子の手前、師である西谷さんもみっともないことが出来なくなりましたね(笑)。お弟子さんともども、渓師としての道を追求して下さい。