白銀の残影ー宇宙戦艦ヤマト2202外伝ー
第七話
地球軌道上の防御衛星群を突破された連邦防御軍は、直ぐに迎撃が可能な艦艇を模索した。
「エンジンに火が入っている艦(ふね)は無いのか?」
「落下するカラクルム級の落下予測地点は?」
拳でデスクを叩きながら芹沢は、オペレーターたちに問た。
ヤマトや銀河は改修やメンテナンスの為、ドック入り他、アンドロメダ級やドレッド・ノート級は早くてエンジン始動まで2時間は掛かる。
だが、全く希望が無かった訳では無かった。
太平洋洋上硫黄島沖で開発途中でテスト中の最新鋭強襲揚陸艦:開発コードLHAー111が開発テストを行っていた。
「軍務局長!一隻、一隻だけ有ります!」
「ただ、開発途中でテスト航海中ですが!」
「……テスト航海中か。」
「うぐぐっ。」
歯ぎしりを鳴らしながら芹沢は命じた。
「誰が指揮を取っている!」
「ハッ。真田技術大佐です。」
「構わん!その開発テスト航海中の強襲揚陸艦をカラクルム級迎撃に回せ!」
「で、落下予測しては、どうなった?」
「ハイ!」
「落下予測地点は、小笠原近海です!」
「小笠原近海!?」
「まさか!!」
「時間断層跡地か!?」
だが、あそこは直径1メートル程の円柱の空間。
海面から手を伸ばせば、その空間に手を入れる事も可能な空間なのだが、誰一人として、空間内に手を入れられた者は居ない。
手だけではない。
物でも同様だ。
自然に降る雨ですら、結界が張られているように弾かれてしまうのだ。
「とにかく落下予測地点にテスト艦を急行させろ!」
「迎撃させるんだ!」
最新鋭強襲揚陸艦=開発テスト艦。
それは正規空母程の艦載能力は無いものの、機動力は正規空母より勝る。
艦型は、例えるなら艦首は"いそかぜ型"に似ている。全通甲板が有り、艦尾寄りにブリッジが建つ。
そのブリッジの真下はトンネル状で飛行甲板が通る。
艦体後部両脇にエンジンが有る。
エンジンの大きさは、いそかぜクラスだ。
メインウエポンとして、単身の速射波動カートリッジ砲がブリッジを挟んで前部に二基、後部に一基の三基。
サブウエポンとして、現段階ではエンジン上に四連装パルスレーサー砲塔が二基づつ四基、装備(マウント)されている。
他はまだ、装備されていない。
全長は280mあとは不明だ。
大気熱摩擦で真っ赤に染まったカラクルム級だが、熱が冷めるにつれ、本来のグレー掛かったブルーの艦体カラーに戻って行った。
あと10分もしない内に海面に到達する。
都市部への落下が無いと解ると、芹沢は間髪入れずに、地上からコスモタイガー隊をスクランブルさせた。
イメージ曲宇宙戦艦ヤマトー新たなる旅立ちーより。
どうやらスクランブルして来たのは、宇宙戦艦ヤマトに配属される隊のようだ。
垂直尾翼に"Yamato"の文字が分かる。
ヤマト自体が動けなくとも、少しでも練度の高いパイロットを当たらせようと、軍部も必死なのだろう。
◆
一方、ガーランド大尉の研究室では、物質転送システムの準備を整えた薫たちが、ストレイガー都督や地球軍の動向をモニター越しに観ていた。
「大尉!アレを観て!」
「地球は航空隊をスクランブルさせたわ!」
「しかも、今の地球軍では精鋭と呼ぶに相応しい、ヤマトの配属機よ!」
「ヤマトが映っていない事から、やはりヤマトはまだ改修が終わってないと推測出来るわ!」
「でも、油断は禁物ね。」
「以前も、改修中に開発中の試作波動カートリッジ弾を一斉射撃したし。」
「薫。心配は要らない。」
「想定内だ。」
ガーランド大尉の新見に対する態度が、明らかに変わっていた。
苗字で呼ぶでもなく、階級で呼ぶでもない名前でしかも呼び捨てたのだ。
新見も嫌な顔を覗かせてはいなかった。
カラクルム級を離脱して24時間の間に、一気にお互いの距離が縮んだのだろう。
「ストレイガー都督なら必ず振り切るよ。」
「彼女には俺たち同様に信念が有る!」
◆
「目標を捉えた!アルファは自分に、ブラボーは山本につづけ!」
「ラジャー!!」
「五月蝿い奴らのお出ましか!?」
「うふふ。」
「纏めてあの世へのチケットをやるよ!!」
ストレイガーは感応波を集中させた。
カラクルムの艦首部に、蛍光グリーンの光弾の環が形成されてゆく。
だが、思ってもいない方向からカラクルムは直撃弾を喰らう。
大きく揺れるカラクルム。
「なっ!何?」
「直撃だと!」
ストレイガーは眼を上下左右、斜めと視線を飛ばした。
5時の方向40キロメートル沖合いに、小さく艦影を捉えた。
ストレイガーの記憶(データー)にはない艦影だ。
「あんなところに隠れていたか。」
二発、三発と立て続けに光弾が飛来する。
右に左にと避けるストレイガーだが、避ける方向からは、コスモタイガー隊の攻撃が間髪入れずに襲い掛かる。
「ガガガガガーーーッ!!」と連なる弾痕が巨大な艦体に幾つも現れた。
「チッ!」
「堕ちろっ!」
ストレイガーの操る雷撃旋回砲の環が右に左にと縦横無尽に飛び回る。
「四番機、七番機、八番機と追撃(やられた)!」
1番機のインカムに飛び込む追撃の報告。
下唇を噛み締めるコスモタイガー隊隊長。
「ストレイガー都督!聴こえるか?」
「雑魚に構うな!」
「ダイブに集中せよ!」
「君の願いを叶えられなくなるぞ!」
獲物を狩る事で忘れかけていた任務を思い出すストレイガーは、その言葉に冷静さを取り戻し、攻撃ではなく雷撃旋回砲を盾の代わりにし、防御しながら小笠原海峡へダイブした。
「撃ち方やめーーーッ!!」
「砲撃中止!」
「現時点をもって当作戦を一時、中断する。」
テスト航海に動向した真田大佐が指示を飛ばした。
「あのカラクルム級は直接、新見君が管理しているもの。」
「変な勘ぐりは、したくはないが……。」
心に思う真田であった。
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つづく。
この物語りは私設定が混ざった《宇宙戦艦ヤマト2202愛の戦士たち》の二次創作です。
使用している画像はイメージです。また一部、拾い画を使用しています。