そこで、電池の内圧が過剰に上がるのを防ぐため、5月末をメドに充電を8割に抑え、電池の劣化状況を診断するプログラムを提供する。ただその分PCの駆動時間が短くなるというデメリットもある。並行して電池の改良も進める。安価なモバイルバッテリーの普及も要因
頭を抱えるのはパナソニックだけではない。製品事故の情報を集める製品評価技術基盤機構(NITE)によれば、モバイル機器(ノートPC、モバイルバッテリー、スマートフォン)に搭載されたリチウムイオン電池を原因とする発火事故は年々増えており、2012〜2016年の5年間でも累計274件発生。うち5割近くが製品に原因があるという。
NITEの佐藤秀幸調査官は「ネット通販などで海外製の安価なモバイルバッテリーが出回っていることも増加の一因」と指摘する。経済産業省も、2019年2月からPSE(電気用品安全法適合を示す)表示のない機器の流通を禁止する施策を打ち出した。
ただ、「リチウムイオン電池自体の安全性にも問題がある」(佐藤氏)。実際、2016年に韓国サムスン電子のスマートフォンで発火が相次いだように、米アップル、シャープ、ソニーなど、パナソニック以外の大手メーカーのモバイル機器でも、事故が報告されている。リチウムイオン電池は、ほかの電池と比べて高電圧で重量あたりのエネルギー量(エネルギー密度)が多い。小型でも高性能な反面、電池の正極と負極に使われる電解液は可燃性の物質を大量に含んでおり、消防法は、灯油や軽油と同じグループ(40度以下で引火)に分類している。電気を通す物質の混入などで正極と負極が触れ合い、ショートが起きて発熱すれば、たちまち爆発的に燃え上がってしまう。
近年では、エネルギー密度を上げ、小型でもより高出力なリチウムイオン電池の搭載が増えている。一方で「エネルギー密度と安全性はトレードオフの関係にある。性能を追求するため、無理のある作りになっている場合もあるのではないか」(リチウムイオン電池に詳しい東京大学大学院工学系研究科の山田淳夫教授)との見方もある。