きっと忘れない

岡本光(おかもとこう)のブログです。オリジナル短編小説等を掲載しています。

短編小説 フライト・プラン 2

2018年01月11日 | 小説 (プレビュー版含む)

平成某年、四月。大学に無事入学した私は、迷うことなく演劇部のドアを叩いた。

華やかな大学のサークルの部室に比べ、そこはあまりにもむさくるしく、狭く、そして熱気に溢れた場だった。

「入部希望?」

煙草の匂いをぷんぷんさせながら、老け顔の男性が部室のドアを開けた。

「あの・・・脚本をやりたいんですが」

その男性は苦虫をかみつぶしたような顔で

「脚本は三年」

そう私に言った。

「はい?」

愛想の欠片もないその男の態度に若干腹を立てながら、私は小声で返事をして顔を上げた。

「脚本やりたきゃ三年頑張って? うちは素人は使わない」

どんだけ偉そうなんだと思いながら、私は

「じゃあプロなんですか? 貴方?」 とケンカ腰に言った。

「うちはどの公演も金を取ってる。最大動員数は500人。箱台も自分ら持ちだ」

ドアを開き、その男は私を部室の中に入れた。

「三年やる覚悟があるなら、その椅子に座って入部届書いて?」

テーブルの上には灰皿に山盛りの煙草とお菓子の空き箱。

(とんでもない大学に入ってしまった・・・)

私はそう思いながら、炬燵に足を入れ、愛用のペンを胸ポケットから取り出して、入部届にサインをした。

「行? イクさん?」

「コウです!」

半ば怒鳴り気味にそう返し、私は彼に入部届を渡した。

彼はニヤリと笑い

「本岡樫太。1年だ」

そう私に告げた。私は、今度こそ開いた口が塞がらず、呆然として、そして笑いながら

「よろしく」

やっとの事でそう答えた。

(いつになるか分かりませんが続きを書きます)