奥武蔵の風

78 もはや戦後ではない、戦前だ。

 8月15日は、お盆(旧盆)、そして終戦記念日。

 私個人の思いは、昨年と変わりませんが(「私にとっての8月15日」)、この一年、国の政策は、ずいぶんと「好戦的な」方向へ急展開しているようで、深い憂慮を覚えます。

 かつてアメリカで暮らしていた時、アメリカ人にとっては「戦後」の意味が世代によって異なる、ということを教えられました。

 第二次世界大戦を体験した世代にとっては、それ以後が「戦後」。ベトナム戦争を実体験した世代にとっては、それ以後が「戦後」、湾岸戦争を実体験した世代には、それ以後が「戦後」。

 それに引き換え、日本の戦後は唯一「第二次世界大戦後」であり、今日まで「平和憲法」に守られて、78年になりました。

 1956年には『経済白書』が「もはや戦後ではない」と宣言し、日本は復興から成長へと舵を切りました。

 日本が平和でありえたのは、日米安全保障条約のおかげだという人がいます。前アメリカ大統領のトランプは、日本は日米安保条約に「ただ乗り」していると、あからさまに批判し相応の軍事費負担を要求しました。日本政府の中にも、日米は対等でなければ、などと安易に同調する人がいます。

 しかし、アメリカが同条約で日本を守ろうとするのは、必ずしも日本人のためではなく、対中国・対ロシアの最前線である日本で敵の攻撃を食い止め、アメリカ本土を守る意図からであることは、明白です。日米安保条約はアメリカにとっては、あくまでも自国を守るための軍事条約なのであって、日本が「ただ乗り」しているなどと言われる筋合いは全くないのです。

 万一(あくまでも万一ですが)、台湾有事で米中が交戦状態になった場合、米中双方が互いに相手国の本土を攻撃する事態は、戦略上、考えにくいことです。アメリカは台湾に侵攻した中国軍に対して、最前線である日韓の基地(および自国のグアム基地)から台湾へ出撃し、中国は自軍を守るためにアメリカの最前線基地がある日韓(およびグアム)を攻撃対象とすることでしょう。

 つまり、米中交戦の舞台(戦場)は、米中本土ではなく、台湾、そして日韓およびグアムということになります。

 ウクライナ戦争によって核兵器の使用が仮定の話ではなくなり、台湾有事もまた仮定の話ではなくなってきた今、日本は、米中の狭間にあって、大国の紛争・戦争に巻き込まれないように、毅然と「平和路線」を貫く姿勢が強く求められます。

 それにもかかわらず、現在の日本政府は、アメリカの核抑止力を信じて疑わず、軍事化の道を進もうとしているようです。「もはや戦後ではない。戦前だ」と、深く憂慮せざるを得ません。

 終戦記念日にあたり、あらためて平和を守ることの大切さを、嚙みしめたいと思います。

 

(写真上)© 戦時中の写真(筆者 蔵)

(写真上)© 戦時中の新聞記事その他写真(筆者 蔵)

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