朝日記200915 偶感 競合があるコロナウィルスのモデルと私の8月の絵
朝日記 8・12版の後日版ということで以下掲載します。このときは、論文執筆の最中で、片や、数式の入力、図形入力などの扱いで、ひさしぶりのてんやわんやでした。 こういうときは、精神が落ち着いていないので、ちょっとしたことで、行動のバランスを失いかち、それを予感します。日々の生活で忘れごとがふえていると家人から注意を甘受し、またつい歳のせいにして放念しがちです。8月論文仕上げはこの十年の生活慣習になっていますが、大体が言語中心できて、数式は自分ではタイプをしないできました。いまはそういうのも自分でタイプする時代です。図形もフリーハンドで許してもらうにしても、デジタルでどこまでいけるかやはり気になりました。その段取りと本題の方の思案が交錯して、タイムリミットアウトか、あわや戦列離脱の不安が胸を過ぎりました。 絵の弟があとで那須与一だったねと労ってくれます。そして、期日を指折りかぞえ、そのたびにこころを鎮めるべしと「南無八幡大菩薩」に集中力の保持祈願にかけるおもいでした。そして、ありがたや、原稿はひとまず提出となりました。解析からたいそうなことを言っているようだけれども、凡ミスはないか、思考の過程での論理破綻はないか、また、 そう、今回は全文英語の執筆でしたので、これもコワい心臓が必要になります。ネットで親しく交流しているデンバー・コロラドのアメリカ人老婦人から、あたらしいことを社会に発信するときは、賛否両論の争論になるのがあたりまえ、それは単に世間をさわがす(fret)ことではないとねぎらってもらいました。とはいえ、これははじめて経験したことですが、提出期日を1週間くらいのこして脱稿し、不安の裏がえしで、残された問題を思考することの充実感に生きることのありがたさを感じました。 またアメリカ人の先輩筋からさすがに英文のスペルチェックの申し出てくださったり、ありがたいことです。 そういうことで、いきおいあまって、該論文の日本語解説を別なところから声がかかりました。 それが以下の一文です。
偶感 競合があるコロナウィルスのモデルと私の8月の絵
荒井康全
この夏は、マスクの蒸れのなか猛烈な暑い日が続きました。 ときに、午後に雷雲がうねり閃光のもと驟雨がありました。すこし涼しかったですね。今絵は地獄見物です。
徒然こと 競合があるコロナウィルスのモデルについて[i]
所属学会投稿用の論文に取り組みました。なにかコロナウィルスに関連するものを書くと宣言したため必死の 奮闘になってしまいました。#これは感染モードを いったん化学反応速度論のまな板にのせて どうみえるか、公表データを集めて鉛筆をなめなめ研究でした。
#SARSや初期武漢ウィルスなど新型コロナの後輩と先輩たちとの間で彼らの世界内での生存競争もしくは競合生存という説がでています。これは京都のKokubo Masahiro教授等の学説です。かれらは西洋と東洋の感染モードの違いをこれで説明しています。 彼らはSpearmannの要因順位相関という統計を使って説明しその筋で評価を得ているようです。
#この夏の私に、この説が思わぬ発想刺激を与えてくれました。 彼らの説の「競合」する反応ということが正しければ、初歩的な化学反応速度論が教えるところから、なんらのその痕跡がデータに表れているであろうと想像しました。そして、軽い乗りでいくつかの国でのデータを眺めました。ネットではWorldometersという名のページで、Johns Hopkins大学からの各国データが見られます。
#ところで、化学反応理論では 反応は大別して二つがあり 一つは1次反応というもので、反応物が単体として時間経過に対して指数関数的に増大もしくは減少する反応です。これらについて 反応物を対数目盛の縦軸に、時間を横軸にとると直線関係に乗ります。半減期の大きさ固有の値に定まり、これによって反応の特性が論じられます。原子炉の放射線の減衰や、通常の細菌などの増殖や減少変化など多くはこの反応です。
#もうひとつは 2次反応というもので、ひとつの反応物が反応変化をするときに、関わる相手がいて、双方の衝突などの影響のもとで進行するものです。この反応が存在する場合には、データ上で特徴があらわれます。作用しあう相手は具体的にわからなくとも 観測反応物の量;Xの変化をみると、その 1/Xつまり反応物量の逆数が時間に対して直線に変化を表す領域が存在するというものです。そういうことを、最近のマッカーリ・サイモン「物理化学」など、この世界でのテキストをひさびさにながめて教えられました。
#“そこで ダメ元で、スウェーデン、英国、米国、イタリア、フランス、ドイツ、日本、韓国、シンガポールについて 1/Xグラフを当たりました。 すると上の国で日本まで7つは、みごとに1/X線が見られるではあいませんか! 韓国とシンガポールは1次と2次の混合中間的なモードでこれ自身興味はありますが今回は別とします。
うえのスウェーデン、英国、米国、イタリア、フランス、ドイツ、日本については、縦軸1/Xと横軸t の直線の勾配によって、反応速度定数k1がきまるので、感染反応の定量化を与えることになります。(スウェーデンについては自然抗体をねらった防疫戦略で今後の経済的立ち上げ時の参考になる国として重視しています) このk1のについて たとえば英国と日本で比べることから、競合している反応物(感染酵素)の違いが判明できることになる。
#もうひとつ、見ておく大事なデータは死亡数(率)です。上の各国について 当たってみますと、なんと ここの死亡数Pについても、1/P つまり競合反応的なデータが得られました。ここで得られる反応速度定数k2とk1の差異や類似から疫学上の数学モデルが構築されます。ここは腕のみせどころかもしれません。 あの有名な生化学反応であるMichaelis-Menten酵素モデルとなることを予見しますが、事実、あの麹と酵母から吟醸酒ができる酵素触媒反応へと到達しました。
#この段階でこの反応の微分方程式モデルシミュレーションで感染予測と有効制御となればしめたものです。この程度のことは、この世界のだれかが、すでに挑戦しているかもしれません。しかし、右顧左弁していていてもつまらないので自分としての方向で進めました。
上の吟醸酒のモデルをコロナウィルスの疫学的つまり社会現象反応モデルとして対応として考えることの可能性を探索することになります。
#一方、生化学の研究分野、病理学では遺伝子次元での生体高分子酵素反応モデルとの接点があります。これについては、学術界からの研究成果が期待されます。 これは上の疫学反応モデルの検証という意味もありますが、人類にとっては喫緊の科学課題でありましょう。
#今回の論文はそのような切り口でのほんの序論に過ぎないのですが、1)感染者数(基体、ここでは陽性者数)と ’酵素‘(酵素と基体の複合体)の2次反応仮説 2)それを 感染者数の逆数と時間の直線性から反応係数を定量化する。 3)酵素複合体がさらに反応して 回復(もしくは死亡数)の2次反応、4)ここでの反応定数の定量化をする。5)これを使って、上のMichaelis Mentenの式の係数を決める。 6)このテストを英、米、日、独などサンプル8か国のそれぞれのデータで式の追従性を行う。そのようなこと計算をしてグラフで確かめることをしました。
# これらのモデルとしての表現性はかなり良好で、国によって違いがありますが、5週間から10週間くらいの範囲での表現力をあらわしました。
原データの累積量変化で見るという化学反応器のモデルは、密閉シェルで孤立したかの「爆弾あられ」反応器(専門的には 回分反応、バッチ反応)のモデルです。
#逆数が直線であらわれる時機は反応が顕著に立ち上がる、寸前のそれこそ指で数えるほどの期間であり、その初期の1週間程度に起きる反応が移行の状況を決定づけるというものでした。 基体は、感染者であるにしても、酵素は病原体かという具体的にはなにかのモデル上の定義の問題は先送りされますが、この段階では病原体が酵素ということになります。
#ほんの初期での感染防止対応が以降の感染爆発を抑止できるヒントを与えているともいえましょう。さらに 回復(死亡)の連動する反応は酵素反応の一部を構成します。目下、感染数の爆発発生抑止もさることながら、結局は自然抗体を獲得するためにおだやかな感染の継続は必要必須という命題を背負い持ます。 10週以上のモデル適用には、さらなるモデルの数学的な精密化が必要になります。もう一つ、感染ピークの繰り返しの予測もこのモデルの射程内と考えています。異なる病原体間の2反応的競合は、インヒビター反応としてこのモデルのなかで表現されることになり年単位への反応表現も研究の対象になるとみます。 この研究論文は、今回 総合知学会(小松昭英会長)の2019年報に掲載予定されています。
こころざしの方は、現代非平衡非線形熱力学でのエントロピー発生と現象安定問題へと目次だけは出来上がっていますが、日暮れて道遠しです。
小さくてもよいから、努力が切断することのなきことを願って、この夏の人踏ん張りと扇風機をまわして それこそねじり鉢巻きで過ごしたのでした。
安倍さんの10万円で Windows10のPCを買いました。数式タイプの入力について 長らく思いとどまっていましたが、手書きを印字化してくれる道具を買い手習い中です。
食欲はあります。牛乳とオレンジジュースに安らぎを大いに賞しています。
また書きます。以上近況まで。
[i] 朝日記200812 競合があるコロナウィルスのモデルと私の8月の絵
~~~~読者とのコミュニケーション
- Unknown (敬愛する中村先生から)
- 2020-09-20 14:48:31
- 荒井 康正さまへ
いつも大変お世話になっております。
お元気そうで何よりです。
扇風機にねじり鉢巻きでの論文執筆中の荒井先生のご様子が目に浮かぶうようです。
興味深い内容で一気に拝読させて頂きました。
ありがとうございます。
☆~中村百里子~☆
2020年9月15日(火) 18:23 <araraiypol1a@ozzio.jp
- 敬愛する先輩森下さんからとの会話から (araiyasumasa)
- 2020-09-20 15:07:43
- morishita san
⇒
荒井 康全殿
おはようございます。
貴殿の論文に関しては、当方勿論
殆ど理解出来ませんでしたが、ほんの少しは
お役に立ったかもしれませんね。
この様な論文をお書きになる方に
出合うことが出来たのも、ハートの会に
入会したからです。有難い事です。人との
交わりは本当に大切なものですね。
何しろ92.3歳なので、
大変失礼致しました。コロナに負けない様に
家にとじこもってます。
森下 拝
-
Date: 2020/9/18, Fri 15:47
Subject: RE: 朝日記200812 競合があるコロナウィルスのモデルと私の8月の絵
arai ⇒
森下直路様
たいへんありがとうございました。
他の修正点もあったので、ご添削の件も
加えて、学会に修正原稿をさきほど送付しました。
ご参考までに添付もうしあげます。
社会系にenzymatic catalystの概念は
どこかエントロピーととなりあわせていて魅力を
感じています。
今回 わずかな酵素量Eが基体である感染者を短期間に爆発的に増大する
モデルになっていますが、いったいEとはなんであるか
に答えていません。
陽性感染者数をsubstrate Sとして、それにかかわる相手Eと
いうわけで、その存在だけがモデルとして語られる。
その存在を 観測量の逆数と時間のlinearityから定量としてとらえます。
Eは存在だけて、観測量としては直接的なものではありません。信号的な
ものです。その意味で エントロピーと近い。
社会系のエントロピー概念は、エネルギー系と情報系で分離してしまって
道具としてみるのには、今一歩の飛躍が必要です。友人のドイツのエコロジー経済学者Carsten Hermann-Pillathとこの分野で協力関係にあります。かれには、非平衡熱力学ともうひとつ化学反応力学が思考の宝庫であると助言してきました。 かれは生命系の自己触媒系をとらえるのに
自然界の酵素触媒系に着目しており、それが社会系へのヒントと感じて助けをもとめてきました。
Pandemicは、社会系と生命系をつなぐ格好のテーマであり、今回、鉛筆で考えてみる気になったのでした。
お酒の醸造から考えるというモデルで、ミカエリス―メンテンの反応速度式は意外に、よく合うというのが今回の結果です。かれのモデルはin-bitloで あらかじめEの量を所与一定として実験にはいりますが、パンデミックではそのEがgivenではない。したがって 麹のほうSの反応式とEの反応式を、さらにP(回復者もしくは死亡者)の三つの微分方程式を解くことに
なります。 Lotka and Volterraが 狼と鹿の捕食者と餌のモデルで生存がサイクリックに振動する現象で有名です。Turing machineの発明でしられる現代計算機の祖のひとりAlan Turingは、乳牛の黒斑点がなぜできるかを、競合とその結果の競合の終息と進化(もとに戻らない)過程としてその発現を予測モデルを作りました。これが、Iriya Prigoginneの非平衡熱力学の端緒になったようです。ものごとは力学的な平衡をはずれてあたらしい状態へとうごいていく
そういうメカニズムを考えたのでした。これらは数学的にも魅力がある分野です。日暮れて道遠しですね。次を展開する段取りくらいは形にしておけばいいなと思っています。
すこし長くなりました。
きょうはありがとうございました。森下さんは、最近は晩酌されていますか。
時刻がそんな時間ですね。
どうもありがとうございました。 上はお礼まで。
荒井康全拝
いつも大変お世話になっております。
お元気そうで何よりです。
扇風機にねじり鉢巻きでの論文執筆中の荒井先生のご様子が目に浮かぶうようです。
興味深い内容で一気に拝読させて頂きました。
ありがとうございます。
☆~中村百里子~☆
2020年9月15日(火) 18:23 <araraiypol1a@ozzio.jp
⇒
荒井 康全殿
おはようございます。
貴殿の論文に関しては、当方勿論
殆ど理解出来ませんでしたが、ほんの少しは
お役に立ったかもしれませんね。
この様な論文をお書きになる方に
出合うことが出来たのも、ハートの会に
入会したからです。有難い事です。人との
交わりは本当に大切なものですね。
何しろ92.3歳なので、
大変失礼致しました。コロナに負けない様に
家にとじこもってます。
森下 拝
-
Date: 2020/9/18, Fri 15:47
Subject: RE: 朝日記200812 競合があるコロナウィルスのモデルと私の8月の絵
arai ⇒
森下直路様
たいへんありがとうございました。
他の修正点もあったので、ご添削の件も
加えて、学会に修正原稿をさきほど送付しました。
ご参考までに添付もうしあげます。
社会系にenzymatic catalystの概念は
どこかエントロピーととなりあわせていて魅力を
感じています。
今回 わずかな酵素量Eが基体である感染者を短期間に爆発的に増大する
モデルになっていますが、いったいEとはなんであるか
に答えていません。
陽性感染者数をsubstrate Sとして、それにかかわる相手Eと
いうわけで、その存在だけがモデルとして語られる。
その存在を 観測量の逆数と時間のlinearityから定量としてとらえます。
Eは存在だけて、観測量としては直接的なものではありません。信号的な
ものです。その意味で エントロピーと近い。
社会系のエントロピー概念は、エネルギー系と情報系で分離してしまって
道具としてみるのには、今一歩の飛躍が必要です。友人のドイツのエコロジー経済学者Carsten Hermann-Pillathとこの分野で協力関係にあります。かれには、非平衡熱力学ともうひとつ化学反応力学が思考の宝庫であると助言してきました。 かれは生命系の自己触媒系をとらえるのに
自然界の酵素触媒系に着目しており、それが社会系へのヒントと感じて助けをもとめてきました。
Pandemicは、社会系と生命系をつなぐ格好のテーマであり、今回、鉛筆で考えてみる気になったのでした。
お酒の醸造から考えるというモデルで、ミカエリス―メンテンの反応速度式は意外に、よく合うというのが今回の結果です。かれのモデルはin-bitloで あらかじめEの量を所与一定として実験にはいりますが、パンデミックではそのEがgivenではない。したがって 麹のほうSの反応式とEの反応式を、さらにP(回復者もしくは死亡者)の三つの微分方程式を解くことに
なります。 Lotka and Volterraが 狼と鹿の捕食者と餌のモデルで生存がサイクリックに振動する現象で有名です。Turing machineの発明でしられる現代計算機の祖のひとりAlan Turingは、乳牛の黒斑点がなぜできるかを、競合とその結果の競合の終息と進化(もとに戻らない)過程としてその発現を予測モデルを作りました。これが、Iriya Prigoginneの非平衡熱力学の端緒になったようです。ものごとは力学的な平衡をはずれてあたらしい状態へとうごいていく
そういうメカニズムを考えたのでした。これらは数学的にも魅力がある分野です。日暮れて道遠しですね。次を展開する段取りくらいは形にしておけばいいなと思っています。
すこし長くなりました。
きょうはありがとうございました。森下さんは、最近は晩酌されていますか。
時刻がそんな時間ですね。
どうもありがとうございました。 上はお礼まで。
荒井康全拝