鈴鹿医療科学大学薬学部の西田圭吾氏や徳島文理大学薬学部教授の深田俊幸氏のマウスや培養細胞の研究により、亜鉛トランスポーターが皮膚での炎症性サイトカインの制御や、皮膚の上皮性組織の形成に必須であることが明らかになっている。
(PNAS 2017;114:12243-8.)
2016年に日本臨床栄養学会が発表した「亜鉛欠乏症の診療指針」においても、「亜鉛はDNAおよびRNAポリメラーゼ、転写因子やリボソームなどの機能に不可欠であり、核酸や蛋白合成に必須であり、さらに抗酸化作用を有することから、創傷治癒において、亜鉛欠乏状態では炎症の遷延化や線維芽細胞の機能低下により創傷治癒の遅延が見られる」と記載されている。
亜鉛投与による褥瘡改善効果は、海外で行われたランダム化比較試験(RCT)で認められている。
褥瘡患者16人を対象に、通常食に亜鉛・アルギニン・ビタミンCの栄養補助食品を加えた群と、通常食に高蛋白質・高熱量の栄養補助食品を加えた群、通常食のみの群に分け、3週間経過を観察した。
その結果、通常食に亜鉛・アルギニン・ビタミンCの栄養補助食品を加えた群では、他の2群に比べて褥瘡の状態が有意に改善した。
(Clin Nutr. 2005;24:979-97.)
亜鉛は食品を加工する過程で失われやすく、インスタント食品や加工食品に偏った食事で不足しがちになる。亜鉛とキレ―トを形成する薬剤や亜鉛の吸収障害、排泄促進作用のある薬剤の服用も亜鉛欠乏の原因になる。
寝たきり高齢者は栄養の偏りや服用中の薬剤により亜鉛欠乏症を来し、褥瘡を起こしやすいと考えられるわけだ。
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