いらっしゃいませ
代表のC子でございます
「4人で」
ハミルENのメンバーがH BARの開店を聞きつけて訪れた
「いらっしゃいませ」
C子が4人掛けのテーブル席に案内する
「メニューでございます」
「まだ開店したばかりでお酒が少ないのですが」
「そうですか、わかりました」
「まず当店のルールを説明させて頂きます」
「ルール?」
代表してバコタが応じる
「当店ではお酒はお一人様につき2杯までとなっております」
「ほう」
「それから可能な範囲でカクテルのアルコール度数を軽めにお作りします」
「そうなんですか」
ミサキが尋ねる
「何か理由があるんですか」
「ええ、適当に酔い寄っていただくことをテーマにしています。適よく寄って酔って」
「適よく」
「ええ、てきよい、です」
「適当に」
「ええ、良い意味の。適酔い、でございます」
「ほう」
「それから」
「ええ」
「当店は女性のみで運営しておりますので、宜しくお願い致します」
「煙草吸えますか」
「ごめんなさい、禁煙なんです」
「ほう」
「お子様にも来ていただきたいので」
C子は禁煙可能店の申請を保健所に提出していない
それを提出すると子供が入店できなくなるからだ
いずれはアルコールの入っていないジュースカクテルを豊富に拵えて、子供たちに来てもらうことが夢だった
「料理は?」
「てきとうに作ります」
「テキトー?」
「ええ、適当」
「ほう」
「料理とおつまみとか、ナッツとかドライフルーツとか言ってください」
「俺、テキーラサンライズだ」
「私は、モーツァルトミルクにするっちゃ」
「俺はそうだな、オペレーターにしようか」
「私は、カンパリソーダ!」
「かしこまりました」
「料理適当で!」
T子がアロヤへサーブした
「テキーラサンライズでございます」
「おお」
バブルへ
M子のモーツァルトミルク
「ミントっちゃ」
新入りのO子
オペレーターをバコタのもとへ
「鱈のほぐし身とグリーンリーフのパスタです」
「ほう!」
そして和装のママ
C子
ミサキの元へ
「カンパリソーダと天使のパスタ」
「あゝ、適良く酔ったな」
「うん、適酔いっちゃ」
「行くか」
「ちょっと待って、2杯まででしょ」
ミサキがメニューに目をやった
「飲むか?」
「うん、これ、アルコール0」
ミサキがシャーリー・テンプルをオーダーした「あら、ごめんなさい」
「えっ」
「まだS子が存在してないの」
「Shirley Temple?」
「ご自身で作ってくださる」
「えっ!」
・
ミサキはC子の手解きを受けて
グレナデンシロップ 20
レモネード 60
ジンジャーエール 60
オレンジとチェリーを飾った
ママもシャーリー・テンプルを作ってアロヤに提供した
「アルコール入ってないんだな、ミサキ」
「うん、冷ましにいいね、おいし」
アロヤとミサキが2杯目を飲って
「あれ、俺たちは?なあ、バブル」
「うん」
先日、訳あって採用されたA子がバブルの前に差し出した
「ICEです」
「やったっちゃ」
ご馳走様でした
ありがとうございます
会計を終えて、
「俺だけ2杯目飲みそびれた!」
レジカウンター横の円テーブルに置かれた鉢植えの花が小さく微笑んでいた