チムとゆうかんなせんちょうさん チムシリーズ 1 作・絵:エドワード・アーディゾーニ / 訳:せた ていじ出版社:福音館書店 |
「チムとゆうかんなせんちょうさん」作・絵:エドワード・アーディゾーニ / 訳:せた ていじ / 出版社:福音館書店
5年生に読み聞かせでした。読みながら自分でどんどん感動してきちゃいました。あらかじめ読んでいたときはあまり感じませんでしたけど、ちゃんと声に出して気持ちをこめて人に話すとまた全然違いますね。
<あらすじ>
船がだいすきで、船乗りになりたい男の子チムが、大型船にこっそり乗り込んで海に出るお話。
船で働いたりコックさんと仲良くなったり、嵐にあって死を覚悟したりと「男の子の冒険もの」というイメージが強いです。
<感想>
けれど私が一番感動したのは、無茶な密航をしたチムが無事に帰ってきたときに、誰も叱らないってこと。人々が諸手をあげてただただ喜んで、暖かい暖炉とココアと寝床を用意して疲れを癒してあげるのです。
両親も、船長さんと一緒に帰ってきたチムを叱らないし、船長さんや他の大人を批判することはありません。
だから船長さんは「チムがいかに勇敢だったか」という話を両親に聞かせられるし、また航海に出ても「よろしい」ということになる。チムが船を好きで、船乗りになりたいという気持ちや海上での勇気が認められたということです。
これ、いまだったらチムを大型船に連れていったボートのおじさんや、嵐の時チムを船に置き忘れた船乗りたちがものすごい批判をあびるんだろうなあと。無事に帰ってこなかったらそうなっていたかもしれませんが。
とにかく、誰かの過ちを批判するより命が助かったことをひたすら喜ぶっていうのがいいな、と思いました。良心に満ちた世界です。子どもの時にこういう善意に満ちた世界を感じるのはいい事じゃないかな。
甘すぎと思われるかもしれませんけど、チムは密航が見つかった直後は船長さんにひどく叱られて、罰も受けます。船の中で使い走りとして責任を果たしていくことで、船員たちに受け入れられるのです。楽しいことばかりじゃなく頑張った姿を見ているから、助かるべき命が助かった歓び、ふるさとに帰れる喜びが胸にぱあっと広がります。
こういうのに感動するって、普段いかに批判だらけで本質や良心を見失っている世界に生きてるかだよな、とも思いました。
余談ですが、作者エドワード・アーディゾーニの絵がすごくいいです。とくに両親に「船乗りになるのはもっとおおきくなってから」と取り合ってもらえなかった時の、チムぼうやの哀愁漂う小さな後姿ときたら、たまりません!
<「5年生に読み聞かせ」として>
先生がいたせいもあるでしょうが、特につぶやきなどもなく、これといった反応はありません。でもみんなちゃんと聞いてくれて、退屈そうにしている子は一人もいませんでした。
絵が細かくて、遠目ではすこし見づらいかもしれません。でも文章が丁寧なのでふつうに聞いていれば理解できると思います。
「対象年齢5歳から」とあるので、小さい子向けの話のようでもありますが、嵐の時に船長さんと一緒に死を覚悟する場面はなかなかハードな感じです。全学年いけるんじゃないかと思いました。(約15分)