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花日和 Hana-biyori

『まとまらない言葉を生きる』

荒井裕樹著(柏書房)

文学者による、「言葉」にこだわった誠実なエッセイ。前々回の読書会(未出席)の課題本だったけれど、先日やっと読み終わった!

でも読めて良かった。たいそういい本だった。


近年「言葉が壊れている」と著者が危惧するのには深く同意。

SNSに溢れる心無い中傷や煽り、政治家たちが放つ「自己責任」「生産性がない」といった言葉や、説明責任も果たさずご飯論法で逃げる等など。

それと、人の尊厳を軽んずるような言葉を「生きた心地のしない言葉」と表現していることにも共感した。

「言葉」とはそんなふうに扱われていいものじゃないぞと。

そうした嫌な感じの言葉に抗うために表現された、少数者の言葉を地道に賢明に紹介してくれている。

著者は“「被抑圧者の自己表現」を専門にしている文学研究者”だそうで、その多くはフィールドワークの対象としている障がい者たち、そしてその人権運動に関わった人たちの声で重みがあった。

一つ一つの言葉にぐっと来たのはもちろんだけど、全体としては、どんなに役立たずのように言われてしまう境遇でも、“そういう嫌な言葉に、堂々と抗っていいのだ”と訴えてくれているような気がした。

折につけ読み返したい本だけど、一つだけ自分を励ましたいときのため控えて置こうと思ったのはこちら。

――いくらこの世が惨めであっても、だからといってこのあたしが惨めであっていいハズないと思うの。

これは日本のウーマン・リブ運動で大きな存在感を放ったという田中美津さんの言葉。著者が尊敬する運動家の一人とのことだった。

女性が男性を通してしか価値を評価されない時代(いまもそういうところはある)に、そうしたことに抗う気持ち。

「このあたし」という言葉には、誰のためでもなく、自分という「個」を自分自身が真っ先に大切にするべきという主張と励ましがこもっている気がした。


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