ハナウマ・ブログ

'00年代「ハワイ、ガイドブックに載らない情報」で一世を風靡した?花馬米(はなうま・べい)のブログです。

スズキ歴史館

2009年06月28日 | 日記

先週末、知人と静岡県・浜松市にある「スズキ歴史館」というところに行ってきました。軽自動車で有名なスズキですが、じつは会社創業当時はトヨタと同じく織機(loom)メーカーだったことを初めて知り、なんだか納得させられたような気になりました。

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ここは体験型の施設を除いては基本的に展示物には触れてはいけないことになっていますが、それにしてもわざわざ出かけて行く価値はありそうです。土日はやはり子供連れが多いので、じっくりと楽しみたい方は平日がよいかもしれません。もっとも平日は平日で、社会科見学の小中学生の軍団に巻き込まれるリスクもありますが。
なお、入場は無料で、電話かウェブで事前予約が必要です。
http://www.suzuki-rekishikan.jp/

建物はスズキ自動車の工場の向かい側に立っており、こぢんまりとした3階建てです。
1階は一般ディーラーと同じように自動車などが展示してあり、団体も受け入れられる規模の説明会コーナーがあります。個人で訪れてもこの説明(3分ほどのビデオ)は見なければならないことになっています。
この説明ビデオは要するに、館内での禁止事項を説明しているもので、ハッキリいって小中学生団体向けの内容です。しかしそれだけに面白い表現が施されており、まずここで笑わせられつつ、この歴史館建設の「気合い」が感じられました。といいますのは、ピクトグラムで表現された大人と子供が出てきて、いろんなハプニングを引き起こしてしまうというコミカルな演出だったからです。この歴史館のプロデュースが、そこそこの気合いだけで行われたものではないのかも、と感じ始めます。
(ピクトグラム → Wikipedia

さて1階は、コレといったものはありませんので、階段で2階へ上がってみましょう。もちろんエレベータもありますが、この3階までまっすぐ続く階段にもこだわりがあります。階段の天井付近には幅2メートルほどの布がかけてあり、これが3階までずっと続いています。そして布の糸が少しずつ解(ほど)かれていくように、だんだんと縦糸だけになっていき、ついには3階に展示されている鈴木式織機へと吸い込まれていくように演出されています。つまり階段全体で、スズキ(鈴木)の歴史を表現しているわけです。壁はそのままスズキの歴史と時々の世相を描いた年表となっています。

2階に上がるといよいよスズキ自動車の世界です。このフロアは、現代のスズキ自動車、そして最先端の自動車工場、自動車生産のようすを知ることができるフロアです。順路のいちばん最初では、会議用の机をはさんで椅子に座り、向こう側にいる設計者やデザイナーなどとヴァーチャルな設計会議が体験できます。また、Photoshop などを使用して車のデザインをするところも、実際の設計事務所を模してつくられたコーナで見ることができます。その次は試作した自動車が、実用に耐えるかどうかの様々な実験・テストの様子が展示されています。
(→ Photoshop

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ここをぬけると、いったん「浜松の様子とくらし」とでもいう、地元情報のコーナーで一息つきます。そばには 3D シアターがあり、60 人ほどが入れそうなミニ映画館になっています。あの 3D 用メガネをかけて楽しみます。架空のキャラが工場体験する演出などは小学生向けですが、内容は大人でも「なるほど~」と思える立派なものです。私は以前、テレビ番組制作の仕事をしていたことがあるので、このV(ぶい=ビデオのこと)を制作するのにかかったであろう期間と制作費を想像し、これぁかなり気合い入れて歴史館をつくったんだな、という印象が深くなってくるほどでした。

3D シアターの横には、組立工場で使用されている産業ロボットのアームが置かれており、これを自分で操作することができます。ロボットの動きはスピーディで力強く、かつ部品をやさしく取り扱うので、なんだか頼もしくなってきます。

そして2階フロアの最後のほうは、エンジン部品や駆動系部品の鍛造・鋳造の説明、それからニュース番組などでもよく目にする最終組み立てラインを学ぶことができます。とくに組み立てラインは本物に近くつくられており、説明ビデオと連動して取り付け機器類やラインが動くのでたいへんおもしろいです。こうやってつくるのかぁ~、といった感動があります。説明ビデオも無駄に長くなくてよろし。

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2階の最後には社是など、スズキ自動車の哲学がわかるコーナーが設けてあります。

それでは3階へ上がってみましょう。まず目に飛び込んでくるのは、時代を感じさせる商店の入り口。「鈴木式」とかかれた丸い玄関灯が、瓦屋根の軒先に下がっています。ここが初代社長の少年時代からを描いた、スズキの歴史のはじまりです。

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冒頭にも書いたように私個人としては、同じ自動車メーカーのトヨタも、このスズキも、もとは「はた織り機」メーカー(といっても個人商店規模ですが)であったということが興味深く感じられました。創業者の伝説というのはしばしば、感動的に演出されがちですが、それでもやはりそうであったという事実、同時代の人々の共感を呼び社会に影響を及ぼしたということでは、やはりスゴイ人であるといえると思います。ごく普通に暮らしている人々の幸福を考えるという思想は、このあと歴代の社長にも連綿と引き継がれていきます。いろんなものを組み合わせ、組み合わせる部分を改良し、造り上げていくというところは、鉄と木でつくっていた機織り機も、現代の自動車も共通しているような気がしてきます。
この「商店」を抜けると、「スズライト」などが展示されたコーナーとなり、一気にあの時代が広がります。それではしばし、写真をお楽しみいただきましょう。

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これまでのスズキの自動車、2輪車がズラリと並ぶ後半の方には、昔のテレビコマーシャルも見ることができるようになっており、若かりし頃の俳優や歌手などが、いかにもカッコよく颯爽とスズキの自動車やバイクを紹介しています。

自動車展示の最後を締めくくるのは、「アルト」です。
アルトは一言でいって、価格の安さを追求した軽自動車で、デビュー当時「この装備でたったの47万円」とか、「47万円で(軽)自動車が買える」ということで、一世を風靡したモデルです。また同時に展示資料によれば、女性が社会進出を始める日本社会において、価格的に買い求めやすく、気楽に乗れるクルマということで大きな支持を受けたようです。

いまでもアルトは改良を重ねつつ製造・販売されていますが、低価格の追求は続いているようです。3階の最後、つまりこの歴史館の最後は、世界の子供たちが、自分の国を紹介する形式の展示コーナーとなっています。スズキ自動車は東南アジアを中心に日本以外にも工場や拠点があることから、世界とのつながり、ひいては世界平和というようなところまでを思想として掲げているのかもしれません。

今回は、ひさびさによい博物館(スズキ歴史館)を体験しました。
自動車にそれほど興味がない方でも、一つの自動車メーカの歴史と出会うとき、なにかしら感動があるのではないかと思います。年齢によっては、その時の自分や家族のことを思い出すかもしれません。工業製品でありながらも、黙々と私たちの日常を支えている道具というのは、ほとんどパートナーのような存在として、人の心に残っているのかもしれません。

2009年6月28日13:12

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